天地のレストガーデン

keiTO

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チャプター2

土壇場の賭け part1

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午後14時

食堂で昼食を済ませた後、エリーゼの誘いを受けて、談話室で相席をする事が決まった。



談話室は一つのテーブルに、最低5人の希望者達が相席をする。

他のメンバーが、和気あいあいとやる中、異様なメンバーが相席をする。



メンバー “マルセル・キング”=元アメリカンギャング 2メートル近い大柄な黒人



“ジョルジュ・ル・タイタン・デュラン”=元白人プロレスラー 重度の認知症



“ジュリアン・ルブラン“=作家になるのを夢見る、白人女性 32歳



“エリーゼ・ドゥプレ”=年齢20歳の白人女性



“彼”=年齢20歳の白人青年



メンバーで唯一黒人の“キング”は、“彼”と同じ日にレストガーデンに降り立った、つまり“同期”同士。
キングは不機嫌なオーラをさらけ出している。
彼はレストガーデンの希望者になった日から、他人の行動に小言を挟む、いわば問題児な希望者で、スタッフからは頻繁に注意を受けている。

スタッフからよく言われるセリフは、「あまり感傷的にならず、周りに迷惑を掛ける大きな声を出さない様に」

希望日は5月10日



高齢で重度の認知症患者“タイタン”は、他者とのコミュニケーションは完全に取れない状態までになっており、もはや会話も成り立たない程、認知症は進行している。
レストガーデン内の施設も車椅子で移動するしかなく、常にスタッフが付き添いとなって介護をする形となっている。
ゾンビ状態の彼だが、ある一定の“セリフ”で舌を動かす事が出来る。

そのセリフは、「マルセル」。

希望日は5月1日



“ジュリアン・ルブラン” 大きな丸眼鏡が特徴的な女性。
エリーゼとは以前から何度も相席した仲で、顔見知り及び親しい関係。
どこにいる時も、どこに行く時も常に肌身離さずノートパソコンを持ち歩いており、足を止めれば、パソコンを開いてキーボードを“カタ・カタ”と打つ。
相席している今でも打っており、人によっては神経をイラつかせるが、仲のいいエリーゼは慣れたらしい。
短気が顔に出ているキングは、彼女の方から出る小音にイラつきが隠せない。
大きな丸眼鏡が特徴。

希望日は4月15日。



“エリーゼ・ドゥプレ”
太陽みたいに明るい笑顔が印象的な彼女は、決して他人を区別せず、誰とでも平等に接する。
小説を執筆しながら相席をするジュリアン、他人と意思疎通が出来ないタイタンとは、飽きずに何度も相席している。
レストガーデンにいるのは場違いだと感じさせる彼女だが、エリーゼもまた、レストガーデンにいる“理由”はあるはず。

希望日は5月9日。



“彼” 
キングとは同期、エリーゼ・ジュリアン・タイタンはレストガーデンの先輩にあたる。
コーヒーが嫌いで、一人だけミルクを飲む。

希望日は5月10日。



癖の強いメンバーの会話の開始を先陣切ったのは、エリーゼ。



エリーゼ
「ジュリさん、どう、今日も仕事の方ははかどってる?」

ジュリアン
「最終章はもうすぐ書き終わる、これが終われば次はミステリーを考えてる」

エリーゼ
「凄い! 終わったら読ませてよ?」

ジュリアン
「ダメだ、絶対に読ませない!」

エリーゼ
「ジュリさんって、小説家なのに書き終わった物語を人に読ませたがらないよね、何で?」

ジュリアン
「・・・子供は漫画でも読んでなさい!」


「・・・」

タイタン
「・・・マルセル・・・マルセル」

キング
「フン!」

ジュリアンの行為に鼻で笑うキング。

ジュリアン
「何よ?」

キング
「何で小説なんて書いてんだ、どうせもうすぐ処刑マシーンに殺されるんだろ?」

ジュリアン
「・・・スタッフに頼んで、私より先に“サラバ“に入りなさいよ、そうすれば耳障りな雑音が止んで助かるわ」



まだ数分しか経ってないのに、キングとジュリアンの相性は最悪だと分かる。

撤退の仕方を知らない負けず嫌いな二人は、大きな事態を招く事は当然、相席できる間柄ではない。

話題を逸らそうと、キングの取り柄を聞くが、返って仇となる。



エリーゼ
「ねぇキングさん、キングさんは何が得意なの?」

キング
「得意?」

エリーゼ
「そう、今日初めて会ったんだし、なにか特技とか教えて!」

キング
「特技ねー、そうだな・・・シャブを売る事と、人を脅す事、そして人を殺める事だ」

キングの秘密の暴露と言わんばかりの仰天セリフで、執筆の手が止まるジュリアン、笑みが消えるエリーゼ。


エリーゼ
「・・・人を殺めた事があるの?」

キング
「ああ、10人ぐらい殺した」



ジュリアン
「嘘おっしゃい、10人も殺した人間がここに入れる訳ないでしょ、今頃刑務所に収監されてなきゃおかしいじゃない」



キング
「バレなきゃ罪にはならない、それに殺人が罪だと決めたのは神じゃない、“人間“だ」

過去の罪状を隠す事なく、堂々と周りに打ち明かす。

エリーゼ
「・・・カッコいい」


エリーゼは、臆する事なく、それどころか感心してしまう。

ジュリアン
「バカ、危険な男に惹かれるな、ギャングなんて所詮、精神年齢が小学生で止まったクソガキよ!」



ジュリアンの棘のある発言に堪忍袋が切れたキングは、彼女の作家の武器とも言えるパ

ソコンを取り上げる。

キングの性格から、誰もがジュリアンのパソコンを床に叩きつけて、次に踏みつけて破

壊すると予想する。



ジュリアン 
「返しなさいよ!」

タイタン
「・・・マルセル・・・マルセル」

エリーゼ
「ちょっと、喧嘩はやめなよ! レストガーデンで争い言語道断なんだから、出入り禁止になるよ!」

キング
「“俺達”はどうせ死ぬんだぞ・・・いいや違う、もう死んでるんだ!」



情緒不安定になり、泣き面で子供みたく悲観的に騒ぎ出す。

他の相席メンバー達が、騒いでいるキング達の席に注目しだし、ざわつく。



キング
「どいつもコイツも生きてるみたく行動しやがって、小説なんて書いてなんの意味があるんだ・・・俺達は幽霊予備軍なんだよ!」



キングはノートパソコンを頭上に大きく振り上げる、先ほどまで強気だったジュリアンは、一転して必死に懇願するが、感情的になりすぎて、我を失ったキングの耳には届かない。



ジュリアン
「ゴメンなさい、ゴメンなさい! お願いだから、やめて‼」

ノートパソコンを床に叩きつけよとした
寸前、“彼“がキングに体当たりする形で飛び込み、抑え込む。

キングの両手からノートパソコンは離れるが、二人の衝突の影響でパソコンは宙を舞う。

床に落ちる前にキャッチをしようとする、エリーゼとジュリアンだが、距離からして間に合いそうにない。

でも何とか、床に落ちずに済んだ。

たまたま“オカザキ“が騒いでいる現場に駆け付け、仲裁しようとキングの背後から近づいたのが幸運だった。

ノートパソコンは数十センチで床に落ちる寸前だったが、オカザキがヘッドスライディングでキャッチしたおかげで、壊れずに済んだ。



オカザキ
「ナイスキャッチ!」



安堵する一同。


タイタン
「・・・マルセル」



談話室で、他人の所有物に乱暴をしたキングは、スタッフ達から退室を命じられ、どこかに連行される様に部屋を出る。

ジュリアンは、キングが部屋を出る前に彼の疑問になっている“答え”を教える。



ジュリアン
「無駄じゃない! 私はここに死にきたんじゃない、“生きたい“からここにきたんだ、だからもう二度と私の道具に触れないで!」



答えを教えて貰ったキングだが、結局理解できなかった。

それはエリーゼを除く、彼女の意思を聞いた、談話室にいる希望者達にも理解できなかった。

それもそう、レストガーデンは尊厳死を待つ人達の為の娯楽施設、なのに“生きる”為にレストガーデンにいる動機は、他の希望者達の中でも稀有な方。

他の希望者達は、彼女の言葉の意味を聞けないが、今日顔見知りとなった“彼”は迷わず“生きたい“意味を聞いた。



ジュリアンは教える事に戸惑ったが、先ほどの事がまた起きるのを防ぐために、念のためとして隠さず全てを話した。


part2に続く
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