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1章
家族の心に生まれる影
魔力測定の日から、家の中の空気はゆっくりと変わっていった。
測定士たちが告げた
「魔力量・測定不能」
──その異常な結果は、王城にもすぐに伝わり、噂は瞬く間に国中へ広がっていった。
「アストリア家の娘は異常な魔力を持つ危険な子だ」
「神の子か、あるいは災厄か」
「放置しておけば、国がどうなるか……」
そんな噂話が村でもこっそり囁かれるようになった。
アイラ自身はまだその変化に気づいてはいなかった。
気づくには、あまりにも幼すぎた。
ただ──家族の表情が少しずつ曇っていくのを見て、
胸に小さな不安を抱くようになっていた。
「……お父さん、今日も狩り、行っちゃうの?」
「……ああ。仕事が、増えてな」
父ガルドは以前より家にいる時間が減った。
それは本当に仕事が忙しいのか、それとも──
アイラはまだ知らない。
母ライラも、優しくはあるが、どこか距離を置くようになった。
「アイラ、ごめんね。今日はちょっと……体調が良くなくて」
そう言いながら、近づいたアイラの手を
わずかに避けたのを、アイラは気づいていた。
兄ルーグと姉ミリアはまだ優しかった。
しかし、それでも変化はあった。
「アイラ……この前みたいに勝手に光っちゃダメだよ?
周りの人がびっくりするから……」
「ねえ、本当に大丈夫? 苦しくない? 痛くない?
……なんか、怖くなってきちゃって……」
二人の言葉は優しさに満ちている。
でも、その裏にある恐れを、
アイラは子どもなりに敏感に感じ取っていた。
村の子どもたちは、もっと露骨だった。
「アイラと遊ぶと、変な光つくんだって」
「魔物みたいで怖いよな」
「この前、花が勝手に咲いたの見た奴いるぞ」
目を合わせるだけで、逃げられることもあった。
「……わたし、なにか……悪いこと、したの?」
アイラは泣きそうになりながら家に帰る。
だが家の扉を開けても、
以前のような安心感が胸いっぱいに広がることはなかった。
家族はまだ優しい。まだ笑ってくれる。
けれど──決して“前と同じ”ではなかった。
母ライラは台所で手を止め、
少し震えた声で父に言うのをアイラは聞いてしまった。
「あの子……どうなってしまうのかしら。
あれだけの魔力……人じゃない何かになってしまうんじゃないかって……」
「ライラ。やめろ。聞かれたらどうする」
「だって……怖いのよ……あの光を見るたびに……」
アイラは、泣くのを堪えながら部屋に戻った。
(わたし……家族まで怖がらせてる……?
どうしよう……どうしたらいいの……?)
その夜、アイラが眠った後、
父と母は重い沈黙の中にいた。
「ガルド……このままじゃ、アイラが……」
母の声は震えていた。
「俺だってどうすればいいかわからん。
だが……測定士が言った王家に引き渡せという提案だけは絶対に飲めん」
「でも……国は黙っていないわ。
災厄を生むかもしれないって……
家族が責任を取れって……」
父ガルドは拳を握りしめた。
「なら俺が、命をかけてでも守る。
……あの子は、俺たちの娘だ」
そう言い切る声は強かった。
だが、心の底にある恐怖は、
その拳の震えが物語っていた。
*
アイラは知らない。
家族がまだ必死に愛そうとしていることも。
しかし同時に、
「恐れ」という名の影がゆっくりと家族の心に根を広げていることも。
その影は、日を追うごとに濃くなる。
そしてやがて──
彼らの愛と絆を、静かに蝕んでいくことになる。
測定士たちが告げた
「魔力量・測定不能」
──その異常な結果は、王城にもすぐに伝わり、噂は瞬く間に国中へ広がっていった。
「アストリア家の娘は異常な魔力を持つ危険な子だ」
「神の子か、あるいは災厄か」
「放置しておけば、国がどうなるか……」
そんな噂話が村でもこっそり囁かれるようになった。
アイラ自身はまだその変化に気づいてはいなかった。
気づくには、あまりにも幼すぎた。
ただ──家族の表情が少しずつ曇っていくのを見て、
胸に小さな不安を抱くようになっていた。
「……お父さん、今日も狩り、行っちゃうの?」
「……ああ。仕事が、増えてな」
父ガルドは以前より家にいる時間が減った。
それは本当に仕事が忙しいのか、それとも──
アイラはまだ知らない。
母ライラも、優しくはあるが、どこか距離を置くようになった。
「アイラ、ごめんね。今日はちょっと……体調が良くなくて」
そう言いながら、近づいたアイラの手を
わずかに避けたのを、アイラは気づいていた。
兄ルーグと姉ミリアはまだ優しかった。
しかし、それでも変化はあった。
「アイラ……この前みたいに勝手に光っちゃダメだよ?
周りの人がびっくりするから……」
「ねえ、本当に大丈夫? 苦しくない? 痛くない?
……なんか、怖くなってきちゃって……」
二人の言葉は優しさに満ちている。
でも、その裏にある恐れを、
アイラは子どもなりに敏感に感じ取っていた。
村の子どもたちは、もっと露骨だった。
「アイラと遊ぶと、変な光つくんだって」
「魔物みたいで怖いよな」
「この前、花が勝手に咲いたの見た奴いるぞ」
目を合わせるだけで、逃げられることもあった。
「……わたし、なにか……悪いこと、したの?」
アイラは泣きそうになりながら家に帰る。
だが家の扉を開けても、
以前のような安心感が胸いっぱいに広がることはなかった。
家族はまだ優しい。まだ笑ってくれる。
けれど──決して“前と同じ”ではなかった。
母ライラは台所で手を止め、
少し震えた声で父に言うのをアイラは聞いてしまった。
「あの子……どうなってしまうのかしら。
あれだけの魔力……人じゃない何かになってしまうんじゃないかって……」
「ライラ。やめろ。聞かれたらどうする」
「だって……怖いのよ……あの光を見るたびに……」
アイラは、泣くのを堪えながら部屋に戻った。
(わたし……家族まで怖がらせてる……?
どうしよう……どうしたらいいの……?)
その夜、アイラが眠った後、
父と母は重い沈黙の中にいた。
「ガルド……このままじゃ、アイラが……」
母の声は震えていた。
「俺だってどうすればいいかわからん。
だが……測定士が言った王家に引き渡せという提案だけは絶対に飲めん」
「でも……国は黙っていないわ。
災厄を生むかもしれないって……
家族が責任を取れって……」
父ガルドは拳を握りしめた。
「なら俺が、命をかけてでも守る。
……あの子は、俺たちの娘だ」
そう言い切る声は強かった。
だが、心の底にある恐怖は、
その拳の震えが物語っていた。
*
アイラは知らない。
家族がまだ必死に愛そうとしていることも。
しかし同時に、
「恐れ」という名の影がゆっくりと家族の心に根を広げていることも。
その影は、日を追うごとに濃くなる。
そしてやがて──
彼らの愛と絆を、静かに蝕んでいくことになる。
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