家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜

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1章

森の邂逅

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馬車はガタガタと揺れながら、
アルセリア領の外れに広がる深い森へ進んでいった。
アイラは膝を抱えたまま、
涙で濡れた頬を袖で拭う。
(どうして……どうして捨てられたの……
わたし、家族が大好きだったのに……)
馬車の外から聞こえる風の音は、
まるで泣き声をかき消すように荒れていた。
やがて、御者が馬を止める。
「ここだ。……降りろ」
アイラは震える足で馬車を降りた。
視界いっぱいに広がる巨大な森。
森の入口の石碑には、古い文字でこう刻まれていた。
──星降りの森──
“魔獣の住む危険地帯”
アイラの全身がすくむ。
「や……いや……こんなところに、一人で……?」
御者は目を逸らしたまま袋を地面に置いた。
「食料と水だ。三日分……それ以上は無理だ。
……あとは、好きにしろ」
それだけ言うと、馬車はすぐに去っていった。
土煙が消えたとき、
アイラは完全に一人だった。
(パパ……ママ……戻ってきて……)
呼んでも誰も来ない。
足が震えて前に進めない。
そんな時だった。
──ざわ……ん。
森の奥から、空気が揺れる。
大地そのものが脈動したような圧が、ゆっくりと近づいてくる。
アイラは思わず後ずさる。
(な、なに……なにか来る……!)
木々の間に、白銀の光が走った。
次の瞬間──
巨大な影がゆっくりと姿を現した。
『……ようやく会えたな、愛し子よ』
星の光をまとい、
銀色の毛並みを 風 のように揺らす。
フェンリル。
大地を踏みしめる度に震えが走るほどの偉大さ。
鋭くも優しい蒼の瞳が、まっすぐアイラを見る。
その後ろから、
翼を広げた小さな ウィングキャット がふわりと飛び出し、
影の中からは、掌ほどのサイズに縮んだ シャドーベア がころんと転がってきた。
「ぇ……?」
恐怖が、不思議と消えていく。
代わりに胸を温かく包み込む感覚が広がった。
ウィングキャットが頬をすり寄せる。
『みゃ~……やっと会えたね、アイラ』
シャドーベアは影の中からちょこんと顔を出し、
『……泣かないで……ずっと守るから』
フェンリルはゆっくりと顔を寄せ、
その巨大な鼻先でアイラの頭を優しく撫でる。
『泣き虫の愛し子よ。
今日からは我らが家族だ。
二度と一人にはさせぬ』
ぽたり……と涙が落ちた。
怖い涙ではなく、
はじめて感じる“救われる涙”。
アイラは震える声で呟いた。
「……家族……?」
フェンリルは力強くうなずいた。
『ああ。
お前を捨てた者など、もう関係ない。
──我らが、お前の本当の家族となる』
その言葉は嘘ではなかった。
優しさを繕った偽りの言葉ではなく──
魂で誓う“真実”だった。
星降りの森に、
アイラの新しい人生が静かに始まった。
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