家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

2章

新しい朝

朝。森の葉がきらきらと光を弾いていた。
　鳥のさえずりと、優しい風の音。
　アイラはふわりと目を開けた。
　視界に最初に入ったのは――
　大きな白銀の毛並み。
　フェンリルが、まるで子を守るように翼のような尾で包み込んでいた。
『……起きたか、愛し子よ』
　低く優しい声が胸に響く。
　横を見ると、ウィングキャットがアイラの髪にもふもふと顔を埋めていた。
「おはようにゃ～……アイラの髪、いい匂いするにゃ……」
　そのさらに腕の中には、シャドーベアが丸まって寝息を立てている。
『ん……アイラ……おはよう……』
　小さな体でぎゅっとしがみついてくる。
（……夢じゃないんだ）
　あの孤独な夜。
　家族に捨てられた痛み。
　それでも今、感じるのは“守られている温かさ”だった。
　アイラが起き上がろうとすると、フェンリルがすぐに体を起こした。
『動くと寒いぞ。朝露で冷えているからな。ほら』
　その大きな尾が、まるで毛布のようにアイラを包む。
　ふわふわで、信じられないほど暖かい。
「フェンリル……ありがとう」
『礼はいらぬ。主が快適であることが我らの喜びだ』
　ウィングキャットはアイラの肩に登り、にゃあと鳴いた。
「アイラ、今日から森を歩くにゃ！
危ない魔獣は全部あたしたちが倒すにゃ！」
　シャドーベアも胸を張る。
『……アイラの生活、全部ボクたちで守る』
　三匹が胸を張る姿は可愛くて頼もしくて、
アイラの心がふっと軽くなる。
　フェンリルが空を見上げ、言った。
『まずは食事だな。
アイラの体は細い。しばらくは我が食を集める』
「え、フェンリルが……？」
『当然だ。我が主を飢えさせるなど屈辱だ』
　ウィングキャットも尻尾を立てる。
「にゃ！ アイラはただ笑ってればいいのにゃ！」
　シャドーベアはアイラの手を握ったまま呟く。
『……大丈夫。一人にしないよ』
（……みんな、本当に優しい）
　アイラは胸にじんと温かさを感じた。
　こうして――
アイラの“星降りの森での生活”がゆっくり始まった。