18 / 159
第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢
08話 家族関係はドロドロ?
しおりを挟む突然現れた少女は、焦げ茶の髪に同色の目をした平凡な容姿に派手な格好というチグハグな印象だった。
“お兄様”って呼ぶってことは……
「何のようだい? リリス」
やっぱり、ゲームに出てくる悪役令嬢のリリス・ウェルザックで、間違いなかったようだ。
確か攻略キャラの第3王子の婚約者であり悪役キャラでありながら、他のルートでもヒロインの邪魔をしてくる忙しい強者のキャラだ。
「それはこちらの台詞です! 何故このような場所にお兄様がいらっしゃるのですか!?」
リリスは顔を赤くし、ひどくお怒りのようだ。
顔が怖い。
大抵の子供は怒っていても愛嬌があるものだが、それが皆無だ。
流石は悪役令嬢、7歳児にして既に迫力があるな。
服も真っ赤なドレスだし、化粧も子供の癖にすごく濃くて不釣り合いだ。
「リリスちゃんもお久しぶりね。元気にしていたかしら? リリスちゃんはまだ赤ちゃんだったから覚えてないかも知れないけど」
「無礼者っ! 卑しい平民風情がこの私に気安く話しかけないでっ!」
母様が空気を変えるためリリスに話しかけるも、リリスは切って捨てた。
あ゛ぁ?
卑しい平民風情だと?
……よし、半殺しにしよう。
今後のための再教育だ。
子供だからって母様にそんな口聞いて許されると思うなよ?
というかその台詞、お前にブーメランだってこと分かってんの?
俺の怒りゲージはマックスに達した。
レイアスとリリスの母、クリスティーナ・ウェルザックは、固有魔法を持った伯爵家の嫡男と無理矢理結婚した。
レイアスは父親に瓜二つであるが、リリスはどちらにも似ておらず髪の色や瞳も平民に多いことから浮気相手の平民との子であると噂されている。
事実、ゲームでも伯爵との子ではないと明言されているらしいし、伯爵が死んでから出来た子供だ。
つまり、母様を平民扱いし蔑むことは、自分の血筋を貶めることに等しい。
俺が教育的指導をしようと口を開こうとしたが、その前に兄様の口が開いた。
「無礼なのはお前だ、リリス。突然押し掛けて、その言い種。そもそも、お前がこの離れに来ること事態、義父上に許可されていない」
無表情で淡々と兄様はリリスに言った。
一瞬誰だか分からなかった。
ほんの短い時間だが、俺の中の兄様は腹黒で少し変態だが面倒見が良くてニコニコ笑っていた。
こんな冷たい表情は知らない。
まるで、ゲームの設定と同じだ。
俺は驚愕した。
「なっ……だって、お兄様がっ!」
「僕は義父上からこの離れに入る許可を受けているし、家庭教師もセルバに頼んで今日は休みにしてもらった。そもそもお前が僕の行動に口出しする権利は無い。さっさと本邸へ帰れ」
兄様は冷たく命じた。
実の妹への情は感じられない。
「何故お兄様が、こんな妾の、下賎なやつらのことを庇うのですかっ!?」
リリスは叫んだ。
俺の前でまたも母様を侮辱した。
母様はここで話を割り込んでも拗れる事が分かっているのか、そんな暴言にも苦笑いを浮かべたままだ。
……こいつまだ言うか、本当に性格悪いな。
「下賎? ……それをお前が言うのかい?」
レイアスは蔑んだ目で見て言う。
リリスの血筋の事を暗に示唆した。
「っつ、失礼しますわ!」
1番触れられたくない事だったのだろう。
リリスは顔を強張らせた後、俺と母様を睨み付け庭を出ていった。
「……レイ君ちょっと言い過ぎなんじゃないかな? 妹でしょ?」
今まで沈黙を守っていた母様が、兄様を嗜める。
確かに妹に面と向かって言う事じゃない。
「事実ですよ。それにアレに遠慮は無用です。下の者に好き勝手にやっているようですし……本当にあれが妹だなんて思いたくない」
俺に見せた微笑みはなく、その目には軽蔑と蔑みしかない。
心底嫌そうだった。
母様もさっき迄とのギャップに驚いているようだ。
「リューもあれに近付いてはダメだよ? ……まぁか義父上がさせないだろうけどね」
兄様が俺に笑顔で言った。
アレって、兄様どんだけ妹のこと嫌いなんだよ……まぁ、俺も嫌いだけど。
確かに、ゲームではそういう設定とか聞いたけど。
……さっき迄、残念な感じだったからすっかり設定忘れてたよ。
「……僕もそろそろ本邸の方に戻るとするよ。また明日来てもいいかい?」
兄様が席を立ち上がり言った。
先程とはうってかわって、自然な微笑みだ。
「えっ? はい」
思わず言われるがままに頷いてしまった。
「それじゃあ、また明日リュー。カミラさんも今日はありがとうございます」
兄様はそれだけ言うと、俺達を残し庭を出ていった。
家族関係は何だかドロドロしているようだ。
11
あなたにおすすめの小説
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー
みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。
魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。
人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。
そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。
物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる