46 / 159
第3章 敬虔なる暴食
13話 父様は愛妻家
しおりを挟む治癒魔法の魔導具についてある程度話をまとめた後、父様に許可を貰うために屋敷へと戻った。
勿論、母様にお土産を用意して。
しかしその話に入る前に、只今絶賛お説教中である。
父様達に無断で出てきたので、仕方がないことではある。
「……レイアス、いくらお前が付いているとはいえ、いささか不用心だったのではないか? 護衛も連れず街に行くとは、何かあったらどうするつもりだ?」
「……申し訳ありません。確かに不用意な行動でした」
「ごめんなさい父様。どうしても街を見てみたかったんです……」
兄様に続き、俺も謝罪する。
今回の件は非は俺達にある。
不用心だとは分かっていたが、どうしても外を見てみたかったのだ。
後悔はしていない。
屋敷の狭い世界だけでは、触れる事の出来ない経験が出来た。
「ヴィンセント様、あまり怒らないであげて下さい。リュー君にはずっと家の中で過ごすよう、不自由を強いたのは私です。外に出てみたいと思うのは当然のことです。レイ君もそうです。そんなリュー君に王都の街を見せてあげたかったんだと思います」
そんな俺の心情に気付いたのか、母様が父様に取り成そうとしてくれた。
普段は天然だが、こうした瞬間に母親としての強さを感じる。
「……そうだな、私も配慮が足りなかった。この屋敷で過ごして二ヶ月近く経つのに、王宮以外の場所に連れ出さなかった。まだ6歳児の子供にそれを強要するのは、確かに酷だ」
母様の取り成しに、父様は溜め息をつくとしょうがないとばかりに苦笑いを浮かべた。
「母様……父様……本当に心配かけてしまってごめんなさい」
母様と父様にもう一度頭を下げた。
沢山心配をかけてしまっただろう。
本当に申し訳ない。
「……もうよい。カミラも心配していた、勿論私やセルバもな。次回からは事前に知らせてくれ。私達はお前を閉じ込めたいわけではない」
「そうだよ、リュー君。すっごく心配したんだからね!」
そこはちゃんと反省してねと、母様が俺の額をピンと指ではねた。
「はいっ!」
「僕も今後は気を付けます」
どうやら許して頂けたようだ。
次からは気を付けよう。
「でもどうせ行くなら、私も一緒に行きたかったなぁー。リュー君の王都デビュー、レイ君に取られちゃった」
「……カミラ、君まで一緒になって屋敷を出るようでは困る。せめて勝手に行くのは本当にやめてくれ」
ぷくっと頬を少し膨らませる母様に、父様は困ったように眉尻を下げた。
母様……その発言は母様らしいです。父様が本気で心配してしまってますよ。
「今度護衛も連れて一緒に、行きましょう母様」
「ふふっ、今度はヴィンセント様も一緒に4人で行きたいわねっ!」
「はいっ!」
はいと返事はしたものの、それは厳しいだろうと思った。
父様は宰相職を賜っている。
「……近い内に休みを取ろう。何処に行きたい?」
「まぁっ! 本当ですか!?」
父様が予想外な事を言い出した。
しかも、目が本気である。
母様の望みを叶える為か、薄々気付いていたが父様はとても愛妻家だ。
……本当に仕事休めるのかな?
王様に皺寄せがいきそうだ。
ドンマイ、王様。
母様も喜んでいるようだし、父様の分も仕事頑張って!
俺はこの場に居ない王様に、心の中で激励をいれた。
「義父上は本当にカミラさんの事を溺愛なさっているね」
そして、そんな父様に兄様も苦笑いである。
「何言ってるの?! レイ君も一緒に行くんだからね!!」
「……僕も、ですか?」
「当然だよっ! レイ君はリュー君のお兄ちゃんで、私の息子も同然なんだから!!」
「は、はい……」
兄様は自分が行くことを予想していなかったのか、母様の言葉に少し照れて返事をしていた。
おぉー、何時ものダークな面が鳴りを潜めて年相応だ。
兄様の中で母様や父様と血の繋がりが無いことを、気にしていたのかも知れない。
故に、自分の事を家族という枠から除外していた。
だから余計に兄様は、母様の言葉が嬉しいのだろう。
やぱり……兄様は前世の……俺に少し似ている。
本当の家族に恵まれないとことか特に。
だから兄様が母様の言葉にどれだけ喜んでいるのかが、俺には分かる。
「僕、また兄様に王都を案内して欲しいです!」
「リュー……うん、まだまだ見せたいところが沢山あるんだ!」
兄様は嬉しそうに笑った。
俺も本当の家族になれたようで嬉しい。
「あらそれは楽しそうね? 今日はレイ君と何処に行ってきたの、リュー君?」
「はい、今日は――」
俺は嬉々として今日の出来事を話し始めた。
11
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
農民レベル99 天候と大地を操り世界最強
九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。
仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて――
「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」
「片手で抜けますけど? こんな感じで」
「200キロはありそうな大根を片手で……?」
「小麦の方も収穫しますね。えい」
「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですけど?」
その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。
日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。
「これは投擲用大根だ」
「「「投擲用大根???」」」
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる