乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?

皐月乃 彩月

文字の大きさ
51 / 159
第3章 敬虔なる暴食

18話 いざ教会へ!

しおりを挟む
 
兄様はプレゼントをかなり気に入ってくれたようだ。
攻略対象者らしいキラキラエフェクトが輝いていた。
そして翌日、約束通り俺は朝早くから馬車に乗って兄様と一緒に教会へ向かっていた。

「兄様は教会へは行ったことあるんですか?」

俺は馬車に揺られながら、目の前に座る兄様を見て言った。

「あるよ。この国では7歳の誕生日に、教会で祝福を受けるのが慣例だからね。リューももう少しで7歳になるから、その時教会で受けることになると思うよ。」

「へぇ、そうなんですか。どんな事をするんですか?」

「大したことはしないよ。高位貴族だと教皇が直接祝福を授けるくらいかな? エドワード君もこないだ受けた筈だ」

ほんの興味から聞いただけだが、思っていたより大々的で面倒臭そうなイベントだ。

教皇、ね……堅苦しそうだな。
そういえば教皇ってどんな人物なんだ?

ゲーム設定だとトーリ・クレイシスが教皇の筈だったから、前任者については殆ど知らない。

「教皇様ってどんな方なんですか? 話を聞いたことがないですけど」

「……あまりいい噂を聞かないな。利益主義と言うか、トーリ・クレイシス殿とよく衝突してるね。特にユーリ君魔眼持ちのことで。現教皇は彼の叔父にあたるんだよ。彼の一族は教会の中でも代々、教皇を輩出している家系なんだ」

俺は兄様から教えられる教皇の性格にげんなりとした。

教皇は……クズなのか。
兄様の言い方だとユーリを利用しようとして、父親トーリともめてる感じみたいだ。
やっぱりユーリの回りもドロドロしてるな。
……そういえば母親はどうしてるんだ?

ふと、そんな事が気になった。

「ユーリの母親はどうしてるんですか?」

俺は気になったので兄様に聞いてみた。
そう言えば、ユーリから母親の話を聞いた事がない。

「あぁ……亡くなっているよ。元々病弱だったみたいだけど、出産で大きく身体を壊したらしいよ。出産後もそのまま回復しないで、確か4年前に亡くなったはずだ」

兄様は淡々と俺に自らが知っている事を教えてくれた。

「そう、……なんですか」

ユーリの母親が亡くなっているとは、初めて知った。
俺は今まで母様の事を話してしまっていたが、配慮が足りなかったさも知れない。

「ユーリ君はお二人にとても似ているね。髪や目の色は父親似だけど、顔付きは母親似だ」

「お会いしたことがあるんですか?」

4年前だと兄様は5歳の筈だが、よく覚えているものだ。

「1度だけね。優しげで綺麗な方だったよ」

そう言った兄様は少し儚げに見えた。
まるで遠い昔を懐かしむような。

……………………。

「…………兄様は、兄様のお父様にお会いしたいですか?」

俺は無神経とも言える質問を兄様にした。
兄様の実の父親は母親クリスティーナに殺害されたというのに。
今後絶対に必要な情報になるという事を言い訳に、俺は兄様の心を傷付けかねない事をしている。

「……いや? 顔も覚えてないしね。だって僕がまだ2歳の頃の話だよ? 流石に覚えてないしそれに……僕は義父上の事を実の父親だと思って慕っているからね。だから寂しいとか感じないな。だからリューも気にしないで」

「……」

兄様はそう笑顔で言った。
その時の兄様の笑顔をまるで人形の様に美しくて、俺はこれ以上何も言うことが出来なかった。
何となく、実の父親の事をはっきりと覚えているのではないかと思った。

2人の中に沈黙が流れる中、揺れが収まり馬車が止まった。

「……あぁ、着いたみたいだね。降りようか?」

この話はお仕舞いとでも言うように、兄様は俺に手を差し伸べた。
俺は兄様に手を借りながら、馬車から降りた。

教会は壮大で圧巻の一言だった。
壁一面を白く塗り潰して、ステンドグラスの色彩を際立たせている。
とても神秘的だ。
様式は前世のヨーロッパで見られる教会と似ている。
王宮も美しかったが、此方も芸術的な建物だ。

「……大きいですね」

「そうだね。この中で信者や神官が2000人以上暮らしているからね」

「ユーリはどの辺りで、生活しているんでしょうか?」

これだけ大きいとユーリの待つ場所まで、長い距離を歩く事になりそうだ。

「奥の奥だろうね。建物は幾つか別れていて中心が聖堂、その周囲に高位の神官一族達の屋敷があった筈だよ」

兄様からの予想通りの答えに、俺は内心足が持つのか不安になりはじめた。
ユーリも歩いているのだから、俺も何とかなると思いたい。



こうして俺達は教会へと足を踏み入れたのであった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

処理中です...