乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?

皐月乃 彩月

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第4章 リュート君誘拐事件!?

番外編 広がる世界 sideユーリ

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「はっ初めまして、リュート・ウェルザックです」

初めて会った少年は目を瞬かせて、僕を見て驚いていた。
綺麗な子供だった。
きっと、今まで見たどんな人よりも。
まるで、教会に飾られている天使のようだった。

「魔眼持ちは数少ないから、同年代の友人としてユーリとは仲良くして欲しい」

父様はそう少年に頼んでいた。
柔らかい笑顔をたたえて。

……僕と同じ位の魔眼持ちに会うのは、この子で2人目。

ずっと前、魔眼持ちである1つ年上の王女様には行事で会った事がある。
最強と称される固有魔法を持つ少女。
けど、仲良くはならなかった。
王女様は僕を怖がっていたから。

たぶん、僕だけじゃなくて……全部を。

王女様は何もかもを怖がって、拒絶していた。
今は部屋からも滅多に出ないと、噂で聞いたことがある程だ。

「勿論です! 僕も同年代の友人は少ないので、仲良くしてくれると嬉しいです」

だから、そう言って手を差し出されたのは予想外だったけれど嬉しかった。
同年代の子は周りにいないし、大人は僕を特別扱いする。
初めての経験だった。

「……ん…」

握った手は小さかったのに、何故かとても力強く感じた。

そうしてリュートはユニに続いて、僕の2番目の友達になったのであった。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「…おとう、さま………これ……」

リュートを見送った後、先程一緒に作った魔導具を取り出してお父様に差し出す。

心臓がどきどきする……喜んでくれたら、いいな。

「これは魔導具……確か似たものを以前リュート君から貰っていたね……もしかして、これはユーリから私へのプレゼントかな?」

「んっ! ぼく、が…つくっ…た!」

リュートに魔導具を貰った時、とても驚いた。
そして、とても嬉しかった。
僕より年下なのに、リュートは凄い。
色々な事を知っているし、何でも出来る。
僕には魔導具なんて作れないし、作ろうと思った事もなかった。

キラキラのお星様。
夜のあお。
瞬きの光。

夜空があんなに綺麗だなんて知らなかった。
リュートの見る夜空は、こんなに綺麗なんだって驚いた。

……僕も……僕も、いつか見てみたいな。

殆どの時間を教会の中だけで過ごす僕は、外の世界を見たことがなかった。

「ありがとう、ユーリ。それにしても、驚いたな。もうこんな魔導具が作れるようになるなんて」

嬉しそうに、感心したように僕の頭を撫でて父様が言った。
僕も父様が喜んでくれて嬉しい。
撫でる手が気持ちよくて、頭をすりすりと掌に擦り付ける。

「りゅー、との…おかげ…、りゅーと…おしえる、の…じょうず」

リュートから貰った物には劣ってしまうけど、何とか形にはなったと思う。
ちゃんとリュートからのお墨付きを貰えた。
本当に自分で作れるなんて思っていなかった。
リュートは教えるのも上手だった。

「……そうか、凄いな」

「ん! りゅーと、すごい…っ!」

お父様の言葉に僕は勢いよく頷いた。
けれど、お父様の意図とは違ったみたいで、少し困ったように微笑まれた。

「勿論、彼もだが……ユーリ、君もだよ。ユーリの成長には驚かされるばかりだよ……あんなに小さかったのに、いつの間にかこんなに強くなったんだね……忙しくてちゃんと言えていなかったけれど、あの時私を助けてくれてありがとう、ユーリ。親として危ない事はして欲しくはないけれど、私はあの時リュート君とユーリ、2人に救われたんだよ」

「……ぼ、く?」

僕の頭を撫でながら優しく微笑むお父様に、首を傾げる。
僕は大した事なんて何もしてない。
皆を助けたのはリュートだ。
僕じゃ皆を、お父様を助けられなかった。

「あぁ、もしあの時、ユーリが私を助けようと前に飛び出さなかったら、私は此処に今居なかったかも知れないし、悪魔を倒す事も出来なかったかもしれない。ルーベンスの民達もそうだよ。ユーリが居たからこそ、助かった者もいる。だから私はリュート君とユーリ、2人に助けられたんだよ」

「ん……でも」

あの時、お父様が死んでしまうと思って、自然と体が動いた。
お父様家族が居なくなってしまうのが恐ろしかった。
でも──

「でも、…ぼく、1人、だったら…とびこめ…なかった、…りゅー、とがいっしょだったから……」

弱虫の僕でも頑張れたんだ。

「そうか……良い友達を得たね、ユーリ」

「んっ!」

お父様の言葉に笑顔で頷いた。

リュートは僕の大切な友達だ。
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