101 / 159
第5章 腐った白百合
08話 腐王女殿下は語る
しおりを挟む「ご、ごめんなさい!!」
須藤 由奈はもとい腐王女は、俺の怒りに圧倒されるやいなや、速攻で土下座をして謝ってきた。
迷いなど微塵もないない、美しい土下座であった。
腰、低っ!
王女がそれでいいのだろうか?
そして俺はその予想外の光景に、少しだけ冷静さを取り戻していた。。
俺の方が年下とはいえ、客観的には幼い王女に土下座させているという図だ。
ここでもし王妃様が戻って来たら、とんでもない誤解を生む事は間違いない。
「……とりあえず、立ってください。王女に土下座させた何て、外聞が悪すぎる」
「う、うん」
俺は出来るだけ穏やかな声でそう呼び掛けたが、腐王女はまだ警戒しており恐る恐る立ち上がった。
まぁ、此方も水に流したわけではないのだから当然とも言えるけれど。
しかし、今はそれよりも────
「……まず、貴方は何でこのように引き篭もっているんです? ゲームの死亡フラグを回避するだけなら、婚約を拒否するだけでも良かった気がしますが」
言いたい文句は山程ある。
だが、生憎と時間がない。
王妃様が戻って来る前にするべき事をしなければ。
「あぁ……うん、婚約ね。でも、それだけじゃ私の死亡フラグって折れないんだよね。ヒロインの登場は要因の1つではあるけれど、それだけが理由じゃないから……」
「それだけじゃない?」
俺は首を傾げる。
……以前聞いた話だと、ヒロインと兄様の為に死んでしまうみたいな感じだったけど……他にも理由があるのか?
「瀬良君、いや、今はリュート君でいいのかな?」
「えぇ、呼び捨てでも構いませんよ。一応、貴方の方が身分が上ですので。一応」
非常に不本意だが、この腐王女はこの国の大事な王女だ。
敬う気持ちは全くと言っていいほどないが、身分は俺よりも上である。
「一応って……まぁ、いいか。それでリュート君は、私が病弱って言うのは知ってるよね?」
「えぇ」
前世や今世でも、王女は病弱であると聞かされている。
「ゲームで明かされてた真実なんだけど……ユーリアはね、固有魔法を使う度に命を削られていくの。だから、ゲームでユーリアが死んだのは、無理して力を使ったから。それまでに何回も使用して、只でさえ体がボロボロの状態だったのにね」
しかし、彼女から語られたのは、そんな予想外の真実だった。
「……じゃあ、貴方が引き篭もっているのは魔法を使わなくてもいいように?」
外に出れば周囲から力を使うように言われ続けるだろうし、悪い噂を立てさせて誰も自分に期待しないようにしたのか。
ここまで断固拒否の姿勢を見せれば、強引に事を運ぶのも難しそうだ。
……同人活動の為じゃなかったんだな。
それなのに頭ごなしにキレて、少し悪いことをしたかもしれない。
勿論、自分の身内を売った事や、父様と兄様達が汚された事を許すつもりは毛頭ないけれど。
「うん、そう。ゲームのユーリアは、王家の威信を保つ為に魔法を使い続けてたからね……まぁ、私も王族として生まれたからね、覚悟がない訳じゃないの。前世日本で育ったけど、此方の価値観が身に付かなかった訳じゃないから。もし、他国と大規模な戦争が起きて私の力が必要になるなら、魔法を使う覚悟はある。それが私の寿命を縮めることになっても。……でも、私じゃなくてもいいなら、出来れば使いたくない。まして、威信を保つ為だけなんて………それに、誰だって長生きしたいでしょう?」
王女はポツポツとそう語った。
その顔は先程までとは違い、実に真剣な表情をしている。
誰だって進んで命を削りたくはない。
まして、自分でなくともいいのならなおのことだ。
先程王妃様達が言っていたように、ユグドラシアには魔眼持ちが多くいる。
王女が態々出なくても、現状他の魔眼持ち達だけでも対応できる。
寧ろ、非常時には使う覚悟があるだけ、年齢を考えれば十分立派だろう。
「そうですね……しかし、それでは貴方は一生こうやって、閉じ籠っているつもりなんですか?」
ここにいれば、衣食住や安全は保証される。
王族の柵に縛られることもない。
けれどその代わり、一生この部屋からは出ることは出来ない。
「………………それは、どうしようもないよ。それに布教活動なら、ここでも出来るし……たまに外に出たくはなるけどね」
王女は諦めたように言った。
……本当は、外に出たいのかもしれない。
なら────
「では、僕と契約しませんか? ユーリア王女殿下」
「契約?」
俺の唐突な提案に王女はコテンと首を傾げる。
「はい。もし貴方が出陣を望まれても、僕が代わりに戦います。僕の固有魔法はまだ完全に覚醒はしていませんが……固有魔法が使えなくても村や町の1つや2つ殲滅するくらいわけないですから」
「え、えぇ!? 何そのスペック!? リュート君ってチートキャラなの!!?」
「まぁ、そんなとこですね」
俺は既に各属性の上級魔法を使える上、魔力が桁違いに多い。
相手側が魔眼持ちを引っ張り出して来ない限り、俺の負ける確率は限りなく低い。
だから王家の威信の為の力の行使なら、王女の代わりも十分に果たせる。
「その代わり──」
だが、勿論タダでそんな事をするつもりはない。
少なからず俺も危険をおかす事になるのだ。
母様達に余計な心配をかけてしまう分、きっちり対価は貰う。
「王女の知識を僕にお与えください」
僕は兄様直伝の笑顔で、そう言って笑いかけたのであった。
11
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー
みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。
魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。
人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。
そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。
物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
ゲーム内容知らないので、悪役令嬢役を放棄します!
田子タコ
ファンタジー
学園一と名高い美少女に呼び止められた。
「貴女、悪役令嬢ではないの?」
あー、やっぱりここってそれ系なんだ。
前世の記憶が蘇ったから、転生かと思ったら、学園に来てから違和感が。
ある男子達が異様にハイスペックイケメン。
王子、宰相の次男、大公長男、そして隣国王子が二人
ここまで同年に揃うものか?
しかも、一つ上に宰相長男、隣国王子
一つ下に、大公次男の双子など。
イケパラーっと楽しむ趣向だったら、楽しめただろうが、イケメンには興味ない。
「あー、やっぱりここってそれ系の世界だったんだ」
知らない乙女ゲーに転生してしまったが、乙女ゲー嫌いなんだよね。
もっぱら、RPG派なので、冒険するよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる