乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?

皐月乃 彩月

文字の大きさ
135 / 159
第6章 憤怒の憧憬

17話 お見合いのセッティング

しおりを挟む
  
「昼食?」

「えぇ、是非お願いします────婚約者殿も、是非ご一緒に」

腐王女と何やかんやで友達を確保する約束をした俺は、次の日早速行動に移した。
即ち、アシュレイ経由でロゼアンナ・ディールを昼食会へ招き、腐王女と自然に引き合わせる事にしたのだ。

食事を共にすると、距離が縮まるとも言うしね。
本当……何で俺がこんなお見合いを、セッティングするような真似を………。

「……ロゼアンナを? 何故だ?」

アシュレイは俺が婚約者も一緒にと言うと、当然訝しんで理由を聞いてきた。

「実はここだけの話……ユーリア王女殿下の話相手になって下さる方を探していまして。その点、ロゼアンナ・ディール嬢なら身分も人柄も安心かと思ったんです」

あの腐王女は俺を頼りにしていたが、本来俺が面識のほぼない令嬢を食事やお茶会に誘うのは無理がある。
直接コンタクトを取った訳ではないにしろ、アシュレイの疑問は当然だ。
というか、俺が直接そうしていたら十中八九悪い噂がたつし、ロゼアンナ・ディールもアシュレイの事がなければ以前のような真似はしなかっただろう。
向こうに断られるのは目に見えている。

腐王女がコンタクトをとるのが、本来1番確実で自然なんだけどな……。
本当に、面倒だ……手紙を書けって言っても嫌がるし……2人きりは無理とか言うし……。
前世でのオープンに腐を撒き散らす度胸があれば、そんなこと全然問題ないと思うんだけどね。
むしろ、一般的には腐な趣味を公言する方が、抵抗がある事だろう。

そんなわけで、腐王女は全く役に立たなかった。
故に俺はアシュレイにも、協力を仰ぐ事にしたのだ。

「そうか……王女殿下が……それは、断るわけにはいかないな」

「何分、人見知りなもので……お手数をおかけします」

アシュレイの了承に、俺は苦笑いを浮かべながらも感謝を述べる。
腐王女の名前を出すと強制になってしまうが、正直に理由を話すのがこの場合は1番だろう。

「分かった。俺からロゼアンナに伝えておこう。日程は明日でいいか?」

「えぇ、助かります」

俺は頷いた。

これで腐王女も満足するだろう。
先程から、背後に期待の眼差しをガンガン感じてるんだよな。
本当、自分で誘えよ……。

「そう言えば……あに  、……レイアス・ウェルザックも居るのか?」

それじゃあ、と席に戻ろうとした俺に、アシュレイがボソボソと問い掛けた。
そんなアシュレイの様子に、俺は思わず吹き出しそうになる。

「えぇ、兄様やオズワルド王子殿下も同席する予定です」

腐王女と同意見なのは不本意だけど、アシュレイって本当に――

「そう、か……別に興味はなかったけどな……明日、ロゼアンナと同席させて貰うと、王女殿下に伝えてくれ」

アシュレイは一瞬笑みを浮かべると、すぐに表情を消して自分の席へと戻っていった。

「うーん、本当に…………ツンデレだ」

最初の印象はアレだったけど、案外扱いやすいよなアシュレイ……。

隠せていないアシュレイの表情の変化に、思わずクスリと笑みが溢れる。

「リュート君リュート君っ! どうだった!? アシュレイ様、OK? OKって?」

アシュレイが去った途端、先程まで様子を窺っていた腐王女が鼻息荒く結果を聞いてきた。

「……一応、了承は得ましたけど」

「本当!? やったー! 念願の女友達!! えへ、えへへっ!」

「……まだ、昼食に誘っただけなんですけど?」

もう友人が出来た気でいる腐王女の満面の表情を見ると、イラっとした。

当日のフォロー……したくなくったな。
ここまで御膳立てはしてやったんだ、少しは自分で努力した方がいいだろう。

「そこはリュート君のお力で!!」

しかしそんな俺の気持ちとは裏腹に、グッと親指を立てていい顔で笑う腐王女。
最後まで他力本願で、いくつもりのようだ。

……コイツ、本当に殴りたい!

俺はロゼアンナ・ディールには、是非とも腐王女の面倒を見てもらいたいと思っている。
けれど、腐王女の他力本願っぷりを見ていると、失敗すればいいのにと密かに思ってしまったのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。 魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。 人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。 そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。 物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

処理中です...