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第6章 憤怒の憧憬
35話 2日後……
しおりを挟む「⎯⎯おい、お前達これは一体何の騒ぎだ?」
騎士達の声が、オズ様達にも聞こえたのだろう。
皆、怪訝そうな顔をして姿を見せた。
「オズワルド殿下! ご無事で!! 本当によかった!」
騎士達はオズ様達の顔を確認すると、歓喜の声を上げて大勢で俺達を取り囲んだ。
「何だ、この騒ぎようは……たかたが、数時間ダンジョンに潜っていただけだろう」
オズ様は片眉を吊り上げて、呆れたように言い捨てた。
「数時間などではございませんっ!!! オズワルド殿下達がお姿を消してから、今日で2日目です!!」
「「「「「「「「……………は?」」」」」」」
思いも寄らぬ事実に、俺達は間抜けにも口を半開きでそう言う事しか出来なかった。
2日……2日って、凄い騒ぎになる筈だ。
マジかよ……は、母様にまた怒られる。
「…………あぁ、やっぱり。魔力の流れが、移動する時凄い歪んでたからね」
横で兄様が、そんな風に呟いているのが聞こえた。
兄様にとって、想定外の出来事ではなかったようだ。
いや、ソレ事前に言って!
目茶苦茶重要な事だから!!
そう思ったのは俺だけではないらしく、オズ様もまた兄様を恨みがましそうな眼で睨んでいた。
「さぁっ、早く地上へっ! 皆様、大変心配されておいでですよ!」
騎士達は俺達が無傷である事を確認すると、急かすように地上へと先導して行った。
「あ、あのオズワルド殿下……どうやって、説明致しますか? 2日も経っている以上、隠し部屋の事を秘密にするのは不可能かと……」
ロゼアンナが騎士達には聞こえないよう、小さな声でパーティーのリーダーであるオズ様に話し掛けた。
先程、ユリアの件は内密にする事にしていたが、これだけ騒ぎになった以上、隠し通すのは難しい。
「……あぁ、誤魔化すにも無理があるからな……下手な嘘をつくと、来年からの実習にも影響してくる……だが、」
オズ様もこの事態に、流石に歯切れが悪くなった。
ただ、迷子になったでは、これだけ騒ぎになってしまった後ではもう通用しない。
ならば、強制的に転移させられたと言うのがベターな答えではあるが、ここは毎年学園の実習に使われている場所だ。
回避不可の危険度の高いトラップがあると分かれば、来年からの実習にも影響する。
本来は、回避出来る筈のもんだったからな……ユリアが突っ走らなければ。
避けれた事態だっただけに、他の生徒にしわ寄せを行かせてしまうのは可哀想だ。
仕方ない、ここは本当の事を────
「素直に、トラップがあった、で良いんじゃないかな? 部屋の主を倒した以上、検証するのは不可能だろうし」
「でも、そんな危険なものがあるとわかったら……来年からは中止になるんじゃ」
俺はユリアをすぐに売ろうと思ったが、兄様が代わりの案を提案してくれた。
優しいね、兄様。
俺はもう日頃かけられる苦労からか、多少の不幸はざまぁとしか思えなくなってきてるよ。
「そこは、発動条件に魔力が一定以上あった、とでも言えば良いんじゃないかな? 正直、リューや僕達位の魔力を持ってる人はいないし。ユーリア殿下がそのトラップにかかって、僕達は助ける為に飛び込んだ……コレでどうかな?」
「そう、だな……それが1番良さそうだ。他の生徒達への影響も、あまり深く潜るのは禁止になる位で済むであろうしな」
兄様の提案に、オズ様が頷き他のメンバーもそれに従った。
確かにそれが無難であろう。
ゴーレムを倒してしまった以上、多少疑いを持たれても何とでも言える。
「まぁ、でもこれは対外向けだけどね。義父上や陛下なら、流石に気付きそうだし」
伊達に、魑魅魍魎の中を生きているわけではない。
父様や王様は、人の表情から心のうちを読もうとするので危険だ。
特に、ユリアは問い詰められたらすぐにボロを出すだろう。
「だから、リュー。今からでも、カミラさんの怒りをどう静めるのか考えていた方がいいよ」
「…………はい」
……本当に、それね。
母様は勘が良い。
きっと、父様に言われなくとも母様なら気付きそうだ。
また危険に片足突っ込んだって言ったら、怒られるのは間違いないだろう。
兄様のアドバイスに、俺は遠い目をして頷いた。
俺、悪くないのに…………。
全部、腐王女が悪いのに。
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