上 下
152 / 159
第6章 憤怒の憧憬

34話 合流、外は大事になってた模様

しおりを挟む
 
俺達はゴーレムを倒した後、転移陣で元いた部屋へと戻ってきていた。
急いで兄様達と合流しようとしたが、再び魔法陣が発動する事はなかった。
飛ばされる前にユリアが壊した壁も修復されていた。

「お兄様やレイアス様達に何かあったらどうしようっ!?」

ユリアは先程から不安そうに、隠し部屋の中を行ったり来たりしている。
あまり時間は経っていない筈なのに、1分1秒が長く感じる。

「大丈夫だ……兄様達なら、きっと何とかして脱出する筈だ」

俺はユリアに大丈夫だと何度も言い聞かせながらも、何とか魔法陣をもう1度発動出来ないものかしゃがみ込んで調べた。

大丈夫……、兄様達は強いのだから。

戦力的には何とかなりそうだと分かってはいても、姿が見えない今不安は俺にも付きまとった。
魔法陣があった場所を、指でするりと撫でた。
その時────

「っ、光がっ!!?」

魔法陣が再び現れ、光輝き出した。
目映い光の中で、人影が数人分浮かんだ。

「兄様っ!!」  

現れたのは、兄様達であった。
オズ様も、アシュレイやロゼアンナも、スールとリオナも殆んど別れた時と変わらない無事な姿を見せていた。

よかった!
本当に無事でよかった!!

「無事だったんですねっ! よかったです!!」

「俺達を誰だと思ってるんだ、リュート? この位、当然だ!」

「と、言ってるわりに焦ってたよね?」

胸を張って言いのけるオズ様を、兄様がいつものようにいじる。

本当に……いつも通りみたいだ。

「お兄様達がご無事でよかったです!!」

ユリアも安心したように、微笑みを浮かべて皆の無事を喜んだ。

「ユーリア……」

「痛っ!?」
 
オズ様がユリアに近付き額に手を伸ばすと、額にデコピンをかました。

「当・然・だ! お前は、後で説教だからなっ!!」

オズ様はビキビキと額に青筋を立てて、お冠だ。
かなりお怒りでいらっしゃる。

「は、はいぃ……」

ユリアは額を押さえて、シュンとしながら頷いた。

はは、腐王女ざまぁっ!!

実の兄に怒られて、珍しく悄気ているユリアに溜飲が下がる。

「全員無事のようですし、早く外に出ませんか? 先生方に心配を、かけさせてしまう訳にはいきませんから」

隠し部屋に入ってからまだ2時間程しかたっていないが、ただでさえ深くまで潜っている。
そろそろ戻らないとまずいだろう。

「……そうだな。皆、悪いがユーリアの暴走については、内密に頼む。甘いのは分かっているが、日頃自由の少ない身だ。これ以上、自由を奪う事になるのは避けたい」

「お兄様っ!!」

オズ様の妹を思った言葉に、ユリアは胸の前で腕を組んで感激してた。

「はい」

俺を始め、オズ様の頼みに首を立てに振った。
何だかんだで妹には甘い。

まぁ、ユリアもこの後でこっぴどく怒られるだろうしね。  
俺も鬼じゃないから……










腐った創作物を、全部燃やすだけで今回は勘弁してあげるよ?









「じゃあ、壁を壊しますね! “レーザー・カノン”」

ユリアの詠唱と共に勢いよく壊れた壁を、皆で土埃を押さえながら通って外の通路に出た。

「色々ありましたが……中々、思い出に残る実習になりましたね」

元の場所に戻って来た事に安堵したのか、ロゼアンナがポツリと独り言のように溢した。

「……まず、忘れられないでしょうね」

「だな……ある意味良い経験ではあった」

俺とアシュレイは、苦笑いを浮かべて今回の実習を思い返した。

ユリアが暴走して………暴走して、暴走して、暴走して……あれ? ただ、ユリアがはっちゃけてただけじゃないか?

「……あれ? 人の気配?」

「本当だ」

そうやって帰路についている中、大勢の人が付近で動き回っている事に気付いた。

「何か、不足の事態でもあったのか?」

「まさか、他のパーティーで怪我人が出たんじゃ……」

確かに、初級向けとは言え、初めて挑戦する者も多い。
怪我人も出るだろう。

「なら、僕行ってきますよ。魔力、まだ残っているんで」

俺は、まだ回復魔法を使うだけの魔力なら充分に残っている。
俺は皆を置いて、走って人がいる方へと近寄った。

「大丈夫ですか? 」

俺は角を曲がった所で、声をかけた。
だが見付けたのは、生徒ではなくこの国を守る騎士達だった。

うん?
何でこんな所に国の騎士が……?

俺の声に、振り返った騎士と目が合う。
俺の顔を見て、目を見開いて驚いた瞬間────

「リュート・ウェルザック様発見致しましたーっ!!!」

その騎士は、大声で俺の名を叫んだ。

発見……?
あれ?
何か……凄い大事になってない?

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,212pt お気に入り:91

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:305

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,455pt お気に入り:3,013

「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,427pt お気に入り:9,931

そんなに悲劇のヒロインぶりたいなら手伝ってさしあげます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:239

希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:2,915

処理中です...