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第6章 憤怒の憧憬
33話 別√③ side オズワルド
しおりを挟む「……うん。やっぱり、これが1番早い、かな………?」
「何か策が思い浮かんだのか?」
回避を続ける中、何かを思い付いたのかとレイアスへと問いかける。
「まぁ、ね。多分何とかなると思うよ」
「本当かっ!? それで策は?」
俺は逸る気持ちを抑えきれずに、レイアスへと詰め寄った。
「うん。どうやら、あのゴーレムはダンジョンの魔力で動いているみたいだよ。だから、再生はほぼ無尽蔵に行われる」
「無尽蔵……それでは、何回壊したところで全て無駄ということか」
最悪、持久戦覚悟で、何度も壊し続ければいつかは勝てると思っていた。
だが、無尽蔵の相手では此方が先にへばる事は目に見えている。
そして、俺達では火力が足りない以上、勝つことは不可能に等しい。
「うん、だからその魔力の供給を一時的に止めるしかないね」
「供給を止める? ……そんな事が出来るのか?」
先程からゴーレムに攻撃を加えているが、魔力の供給が途絶えたりはしていない。
弱点のような場所があるのかも知れないが、外側からは分からないし、数を撃つにしても魔力が足りるか心配だ。
「うん。僕のこの眼鏡、魔導具何だけどね? これ、魔力を可視出来るんだ」
レイアスは指で眼鏡を軽く持ち上げて、俺に見せた。
「は? 何だその魔導具は? 聞いたことないぞ。というか、そんな便利な物、何で俺に教えないんだ!?」
何らかの魔導具だろうとは思っていたが、効果を聞いたことはなかった。
魔力を可視する魔導具……どう考えても非常に有用な物であろう。
俺も欲しい。
「リューも持っているよ。モノクル型のをプレゼントしたんだ」
「俺にも戻ったら、寄越せ」
モノクル……リュートのオッドアイだと、よく映えそうだな。
装着しているようには見えなかったが、魔法で消していたのかも知れない。
「……俺も。戦闘に便利そうだし」
俺達の話を聞いていたアシュレイも、欲しいと声を小さく上げた。
「え? 嫌だよ。折角、リューとお揃いなんだし」
しかし、俺達の要望をレイアスはあっさり拒否した。
とてつもなく下らない理由で。
「お前な……俺は仮にも王太子だぞ? もう少し、敬いというものはないのか?」
別にへりくだるように望んでいる訳ではないが、普通は喜んで俺に差し出すのではないか?
「ははっ……まぁ、冗談はこれくらいにして、コレの有用性は理解出来るだろう? 今はまだ一般に広めたくはないんだよ。それにコレ特殊な鉱石や魔石とかも使ってるから、中々用意できるもんでもないしね」
「……今はそう言う事にしておこう。その代わり、次に作れる時には俺に必ず寄越せ」
今、レイアスは何かを隠そうとした。
だが、どうせこいつは口を割らないだろう。
気になる点はあるが、こいつの好きにさせよう。
これも長年の信頼というやつだ。
「はいはい……その時は、オズとアシュレイの2人分用意するよ」
「あぁ……それで、話の続きは?」
逸れてしまった話を、俺は元に戻した。
「うん、だから僕がその供給を一時的に止めるから、その間に他のメンバーで一斉に攻撃を仕掛けて」
「……出来るのか?」
レイアスの提案に不安だった訳ではないが、たった1人で止められるものかと聞き返してしまった。
「誰に聞いてるの? コレくらい出来ないと、リューの兄を名乗れないだろう?」
クスリと笑って応える姿は、自信満々で微塵も不安を感じさせなかった。
「そうか……任せたぞ」
此処にはもう1人の弟もいるのだから、恥ずかしい姿を見せるなよ。
俺達はレイアスの案に、賭けてみる事にした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「照射止まりましたっ!!」
「皆、作戦通りに行動を開始しろっ!!」
ゴーレムの黒い光の照射が止まった所で、俺達は自前の作戦通り行動を開始した。
各々で魔法の詠唱を始める。
「レイアスっ!!」
「分かってる、行くよ!」
そう言い残すとレイアスが剣を構えて、ゴーレムへと駆け寄った。
「⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯……“◆◇◆◇◆◇”」
レイアスが剣をゴーレムの中央に突き刺し、何かを口にした。
その瞬間、ゴーレムは時を止めたように一切の動きを止める。
「今だ! 全員攻撃!!」
レイアスがその場を離れた瞬間、準備していたそれぞれの最大威力の魔法を一斉に放った。
ゴーレムの3割程が、俺達の攻撃で崩れ落ちる。
「休むな! 撃ったら、次の魔法だ!」
「「「「はいっ!!」」」」
先程までなら既に再生していたであろうゴーレムが、沈黙し続ける今がチャンスだ。
俺も直ぐに次の詠唱を始める。
そうして、何度か繰り返した後、俺達は遂にゴーレムを撃破する事に成功したのであった。
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