乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?

皐月乃 彩月

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第6章 憤怒の憧憬

32話 別√② sideオズワルド

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轟音と共にゴーレムに亀裂が走る。
しかし、ゴーレムの持つ修復能力を上回れず一瞬で元に戻った。

「くっ、コレも駄目か……チッ」

中々、倒す事が出来ない敵に、思わず舌打ちが出る。

ユリアやリュートと分断された後、出口を探して通路を突き進んだ所、この部屋に行き当たった。
通路と同様に、この部屋も全てが黒かった。
そして現れたのが、部屋と同じ漆黒のゴーレム。
当初すぐに片がつくと思われたが、圧倒的な修復能力を持つゴーレムに苦戦を強いられていた。

「次は俺が行きます」

そう言い残すと、アシュレイが自身の剣に魔力を纏わせてゴーレムへと斬りかかる。

「っっ、斬、れ、ろっ!!」

才はあれど子供の腕力、弾かれそうだったのを強化魔法で無理矢理押し込んだ。
ズドンっと、ゴーレムの腕が斬り落とされた。

「流石だな……」

武の名門スタッガルド侯爵家を、名乗るだけはある。
アシュレイの剣の腕は、年齢とはかけ離れたレベルのものだ。

「いえ……駄目みたいです。復活します」

アシュレイが斬り落としたゴーレムの腕は、みるみる内に修復され、当初と何1つ変わらない姿のままだ。

「何か突破口はないのか……?」 

生半可な攻撃では、直ぐに復活してしまう。
このメンバーでは、圧倒的に攻撃力が足りていない。

やはり、リュートやユーリアと分断されてしまったのが痛かったな……せめて、どちらかがこの場に居れば何とかなったものを。

「殿下っ、来ますっ!!!」

「全員回避っ!!」

俺の指示で、全員で回避行動を取った。
瞬間、先程まで自分達がいた場所が黒い光に焼かれる。
攻撃が単調とはいえ、当たれば致命傷は確実だ。
気を引き締めて、挑まなければならない。

これ以上、無い物ねだりしてもしょうがない。
リュート達が居なくとも、今は目の前の敵をどうにかして倒さなければ。

「おい、レイ何か案はないのか?」

俺は敵の攻撃を回避しつつ、斜め後ろにいるレイアスへと解決策を求めた。
レイアスは嫌味ったらしいところもあるが、頭は切れる。

「うーん、魔眼持ちが2人ともあっちに行っちゃのは痛手だったよね……まぁ、何とかするしかないよね。王太子殿下ともあろう方が、まさか年下におんぶにだっこして貰うつもりじゃないだろう?」

困ったように笑いながらも、レイアスの瞳の奥は冷静に解決策を模索していた。

……やはり、こいつは侮れない。
リュートもだが、決して敵に回したくない相手だ。

「……ふんっ、冗談を言う元気はあるようだな」

そして、こいつが煽るような事を言う時は、余裕がある時だ。

「まぁ、ね? 僕としても、早くリュー達と合流したいからね」

「……相変わらずのブラコンだな」

これだけ余裕があれば、たかだかゴーレム如き瞬殺出来そうだ。
それに此処にはこの厄介なレイアスだけでなく、剣の才に秀でたアシュレイ達もいる。
こんな時でも平常運転のレイアスのお陰で、張り詰めていた気が少し緩んだ。

「当然! 何せ、あの子は天使だからね」

だが、最後に続けられた天使発言には正直引いた。
父上は将来ユーリアをリュートへと嫁がせたいと考えているようだが、もしそうなったら小姑並みに虐められるだろう。
仮にそんな未来が訪れたら────

……………………。
ユーリアの胃に穴が開きそうだな……。

そうなった場合、俺が兄として、何としてでもユーリアを守らなければならない。

……やはり、父上にはユーリアがもっと伸び伸びした環境に嫁げるように意見をしよう。
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