323 / 646
2 バレンタインデーは大好きなキミと
16
しおりを挟む「おお~っ!! 」
クラス中がどよめいた。
「これ、逆チョコかっ! 逆チョコなんだなっ!? 」
「すげぇっ!! 葉児のほうから、和泉にチョコわたした~っ!」
「イヤだぁ~、中条君~っ!! 」
う、ウソぉ~!?
あたしのほっぺた、カーッとなって、湯気出そう!
「ね、ねぇ、ヨウちゃん、これっ!? 」
「あ~、かあさんが、店に出すヤツつくりすぎたんだって。綾にやれって」
な、なんだ。そうなの?
「あ、ありがとう」
ヨウちゃんはまた腕の中に顔をうずめた。つくえの上につっぷして、眠っちゃったみたい。
びっくりした。深い意味は、ないんだ……。
だけど、よく見たら、琥珀色の前髪と腕に隠された、その下。ほんの少しのぞいている、ヨウちゃんのほっぺた、赤い。
ドキドキ、心臓が鳴り出した。
……深い意味……あるっ!?
「あ、あの、ヨウちゃんっ!」
さけんで、ぎゅっと自分の紙袋をにぎりしめたら、「授業はじめるぞ~、席につけ~」って、大河原先生が入ってきた。
顔をあげたヨウちゃんの目が、先生にうつる。
「ほら、和泉! 自分の席に行け! プリント配るぞっ!」
あ~あ、ざんねん。
チョコをわたすのは、また後で。
窓ぎわの自分の席に座ったら、黒板の前の席でふり返っている男子と目が合った。
クリクリした黒目がちの目。おサルみたいに横に広がった耳。
――誠。
「ウソっ? ヨウちゃんがまた、どっか行っちゃった~っ!! 」
みんなが、バイバイやさよならをして出ていく中。
あたしひとり、ランドセルを背負って、教室をうろうろしてる。
ヨウちゃん、休み時間ごとに、女子に呼び出されて、あっちにこっちに消えちゃうから。放課後こそ、チョコをわたそうと思ってたのに。
「あ、中条ならさっき、くつだなに入っていたチョコを、下級生に返しに行くって、出てったぞ。って言っても、大岩と話してるのがきこえてきただけだけど」
教えてくれたのは、真央ちゃん。
「え~っ!? まさか、そのまま帰るつもりなのかな~? ランドセルまで消えてる~」
「綾ちゃんなら、直接、家までわたしに行けばいいんじゃない?」
有香ちゃんは言うけど。
きょうは、あたし塾だし……。
なにより、ヨウちゃん、あたしをお父さんに会わせたくないだろな……。
「さがしてくるっ!」
紙袋の取っ手をにぎりしめて、あたしは廊下にとびだした。
「いてら~、がんばって~」
「綾ちゃん、わたしたちは先に帰るけど、健闘をいのってるよ」
「ありがとう、真央ちゃん! 有香ちゃん!」
廊下をまがって、五年生の教室をきょろきょろ。
階段を二階におりて、四年生の教室をきょろきょろ。
四年生たちは、自分と同じくらいの身長の六年生を、不思議そうに見ながら通りすぎていく。
どうしよ……。ヨウちゃんが見つかんない。
昇降口におりると、ヨウちゃんのくつだなにはまだ、スニーカーが入っていた。
うわばきがないってことは、校内にいるんだ……。
でも……これ以上、どこをさがしたら……?
校庭のはじに、葉の落ちた桜の木がならんでいる。その下を歩いていく男子が見えた。
あたしとあんまりかわらないくらいの身長。ダッフルコートに、黒いランドセルを背負って、手には、なんだろ? 黄緑色の葉っぱみたいなものを持っている。
「誠っ!」
あたしは、スニーカーにはきかえて、校庭にとびだした。
0
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
【運命】と言われて困っています
桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。
遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。
男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。
あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。
そんな彼が彩花にささやいた。
「やっと会えたね」
初めましてだと思うんだけど?
戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。
彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。
しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。
どういうこと⁉
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。
takemot
児童書・童話
薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。
「シチュー作れる?」
…………へ?
彼女の正体は、『森の魔女』。
誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。
そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。
どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。
「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」
「あ、さっきよりミルク多めで!」
「今日はダラダラするって決めてたから!」
はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。
子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。
でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。
師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。
表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる