ナイショの妖精さん

くまの広珠

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2 カノジョとクラスメイトの境界線

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 朝の教室は生徒たちの声でざわついている。

 窓から差し込む白い日差し。

 あたしは真ん真ん中の自分の席に座って、自分の手のひらを見つめてた。


 虹色のバラのつぼみ。

 そんなもの、目を開けたらどこにもなかった。


 きのうの晩のアレは、やっぱりただの夢……?

 だけど……虹色なのは……フェアリー・ドクターの魔力が宿っているあかし……。


「和泉ぃ、おはよ!」


 となりから威勢のいい声がきこえて、顔をあげると誠だった。


「へへへ~。やっぱ、和泉のとなりの席って、うれし~や」


 誠のほおに朝日があたってる。キラキラ笑うくりくりの二重。


「おはよ、誠」


 あたしもにっこり笑い返したら、「綾……」って真央ちゃんがやってきた。

 真央ちゃんは今、登校してきたところ。スクールバッグをあたしの前の、自分の席におろしながら、でも視線はずっと廊下に向けたまま。


「アレ……気にしないほうがいいからな」


 真央ちゃんが、くいっと、親指で廊下を指し示す。


「……え?」


 開いてる教室の前のドアの外を見て、あたし、息を飲んだ。

 ヨウちゃんが、卯月先輩と話してる。

 廊下の窓に背中でもたれて、卯月先輩と向かい合って。

 卯月先輩はうつむいて、自分の口元に手を置いて、くすくす笑った。

 そしたら、ヨウちゃんの口元もゆるんだ。


 あ……笑ってる……。


 男子たちと話してるときの、カラッとした笑顔とはちがう。目を細めたふんわりやさしいほほえみ。


 ぎゅっと、胸をしめつけられた。


「綾?」


 真央ちゃんがあたしの顔をのぞきこんでくる。


 どうしよう……泣いちゃう……。


「ごめんね……あたし、お腹が痛いからトイレ行ってくる……」

「えっ!?  綾っ?」

「和泉?」


 身をかがめて、あたしは廊下にかけだした。

 前のドアから廊下に出たら、目の前にヨウちゃんと卯月先輩がいた。


「ね……あの子でしょ? 元カノって?」


 卯月先輩が、ヨウちゃんのブレザーのそでをくんと引く。

 ヨウちゃんの琥珀色の瞳が、チラッとあたしを見た。


 そんな会話、ききたくないっ!


 廊下をバタバタ走って逃げる。

 なのに耳はダンボになっちゃってて、ふたりの会話をきこうとしてる。


「カワイイ子だね。小さくって、お花の精みたい」


 卯月先輩のあからさまなお世辞に、ヨウちゃんはなんにも答えない。

「そうだな」とも「ちがうだろ」とも言わない。


 あたしはトイレにかけ込んだ。



 どうしよう……。

 もっと強くならなきゃいけないのに。

 ヨウちゃんが先輩とつきあってるところを見るくらい、慣れなきゃいけないのに。



 一時間目がはじまってから、遅れて教室にもどってきて。一時間目の休み時間も、二時間目の休み時間も、三時間目の休み時間も、あたし、つくえにつっぷしてる。

 だって、休み時間のたびに、卯月先輩がうちのクラスに来るんだもん。


 で、お昼休み。

 お弁当を食べ終わったと思ったら、また卯月先輩はやってきた。

 ヨウちゃんを呼び出して、また廊下でずっとしゃべってる。


「……ふつうにウザいよね」


 有香ちゃんがメガネの下の目をするどくして、廊下をにらんだ。
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