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4 手から手へ
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しおりを挟む卯月先輩がふり向く。つけまつ毛にかこまれた目が見開かれている。
ドキンドキンと、心臓が鳴る。
黄色いハチマキを巻いた三年の男子が、一番手で走ってくる。
次に、その先輩から、バトンを受け取るのはあたし。
だけど、胸が鳴るのは、緊張のせいでなのかどうか、もうよくわからない。
ヨウちゃん……そんなに、綾桜を大事にしてくれてたんだ……。
って、気持ちと。
卯月先輩にだけは、ぜったいに負けたくないっ!
って、気持ちと。
「黄色チームの子、スタートラインに立って」
実行委員の先輩に誘導されて、あたしはラインに立つ。
黄色チームの先輩が近づいてくるタイミングを見ながら、走り出す。
ヨウちゃんに言われた。
――バトンパスは、テイクオーバーゾーンの中で受け取る決まりがある。綾の場合は足が遅いから、テイクオーバーゾーンいっぱいをつかって、スピードをあげること。で、テイクオーバーゾーンギリギリでバトンをもらう。そのままスピードをあげて走る――
だいじょうぶ! ヨウちゃん、あたし、できるっ!
黄色チームの先輩の足があたしの背中にせまってくる。あたしは左手を大きく後ろにのばした。手のひらに、丸いバトンの感触が伝わる。
ぎゅっとにぎりしめて、あたしは走る。
バトンを右手に持ちかえて。コーナーは内側ギリギリ。視線は落とさない。前のめりで。あごを引いて。足の先でカモシカみたいに、地面を蹴ってくつもりで。
だいじょうぶ。だいじょうぶっ!
耳横で風を切る。左右の風景がぐんぐん後ろに遠ざかる。
一位! 今、あたし、一位っ!
コーナーの向こう。ヨウちゃんが南側のスタートラインについている。
後ろから足音がした。
耳横から人の息づかいがきこえてくる。
卯月先輩っ!
後ろでひとつにむすんだ長い髪を風になびかせて。卯月先輩があたしの横にならぶ。
速いっ!!
足の長さがちがう。
スタミナがちがう。
フォームがちがうっ!
「綾、がんばれっ!」
コーナーをまがり終わった直線の先で、ヨウちゃんがさけんだ。
ヨウちゃんっ!
姿勢を低くして、待っている。あたしが走り込んでくるのを。
とっと、右足がつんのめった。
……え?
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