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5 ヨウちゃんとフェアリー・ドクター
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しおりを挟む……どうしよう……。
あたし、ミシンの前でぼんやりしてる。
ヨウちゃんは「オレも考えてみる。綾も誠も、なにか策を練ってくれ」って言ってたけど。
あたしには、フェアリー・ドクターの知識ないしな~。
今の状態を例えるなら、うす氷の張られた池なんだって。いちおう穴はふさがっているけど、氷が割れたら池に落ちちゃうみたいに、なんの拍子でまた、穴が開いちゃうかわからない。
「綾ちゃん、ふぬけになってるね~」
後ろのミシンを操作していた手をとめて、有香ちゃんが、苦笑いした。
「まぁね。文化祭も終わったし、三年の先輩も文化祭を最後に引退しちゃったし。二年の先輩もつかれたからって、きょうは部活休んでるし。綾ちゃんの気持ちもわかるけどね」
「……それに、目標がなくなっちゃったんだもん」
文化祭前はクッションを縫うのと、コースターやしおりを縫うので、てんやわんやだったけど。
前の黒板に書かれてる、手芸部の今後の活動表の欄は空白。次の部会で、なにをやるかを話し合うってきいた。
ガラッと、校庭側の窓が開いた。見たら、校舎の一階にある部室の外側から、ジャージ姿の誠がのぞいてた。
「ねぇねぇ、和泉~。手芸部がヒマならさ~、ハロウィンの仮装の衣装つくってよ~」
「あれ? サッカー部って、休憩に入ったの?」
「そ~」
大きな口をにっこり横に開いた、いつもの誠のおひさま笑顔。
昼休みにした話を「悩みすぎないで」って、言ってくれてるみたい。
「って、ハロウィンの仮装?」
「うんうん。もうすぐ十月三十一日じゃん。うちのお母さんの務めてる児童館でさ、ハロウィンのイベントするんだって。で、前のお月見会のときとおんなじように、小学生がいっぱいあつまるんだけど。今回は参加資格があって『仮装してくること』なわけ。
でもさ~、『仮装してきてください!』って言われたって、かんたんに仮装できない子もいるでしょ。だから、そういう子のために、衣装を貸し出ししてあげたらいいな~って、思ってさ~」
「あのね、誠。ハロウィンまであと二週間もないんだよ? 衣装なんて、そんなやすやすつくれると思ってる? それに何人分つくれって言うの?」
有香ちゃん、手を腰に置いて、じろり。
だけど誠は、にぱっと笑った。
「かんたんなのでいいんだよ。服じゃなくっても。ヘアアクセサリーだけでも。あとは、そ~だな~、化け猫の耳とか~。オバケっぽい白い布のかぶり物とか~。人数分はムリだから、とりあえず二枚でも三枚でも……」
「へ~、なんか楽しそう! あたしも仮装大会に、参加したくなっちゃったっ!! 」
ミシンの前から立ちあがったら、誠の目もキラキラとかがやいた。
「ホントっ!? じゃあ、また和泉も手伝いに来てよ~」
「行く、行く~っ!! 」
「あのさ、綾ちゃん。毎度のこと言うのも、なんだけど。カレシの存在わすれてない?」
有香ちゃんの声に、はたと我に返った。
「あ~。妬かれますか?」
って、誠。
「妬かれますね」
有香ちゃん、腕を組んでこくこく。
「……えっと。じゃああたし、ヨウちゃんも誘う~っ!! でね、ヨウちゃんにも仮装してもらうの! ドラキュラのヨウちゃんとか、見てみたいっ!! 」
「いやいや、あの人、着ないでしょ」
「着てくれる方法あるよ。和泉がつくって、葉児に押しつけるのっ!」
誠が親指を立てて、ニカって笑った。
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