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5 ヨウちゃんとフェアリー・ドクター
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しおりを挟む「どうしたんだよ、葉児? 殺気立って」
ヨウちゃんを追いかけて、誠が浅山の登山道をのぼっていく。
そのあとを、あたしも追いかける。
三人とも制服のまま。いつもは部活をしている時間なんだけど、きょうはお休みした。
「ハロウィンに浅山って、イヤな予感しかしないんだよっ!」
休み時間に教室でハロウィンのイベントの話をしてから、ヨウちゃんのようすがおかしい。
浅山を中腹までのぼると、植物園が見えてきた。
花壇には、ピンクや赤のコスモスや黄色いキクの花が咲いている。奥には、梅や柿やみかんの木。さらに奥には、全面ガラス張りの温室の屋根。
けっこう大きな施設だけど、いつ来ても、お客さんが見当たらないところが、田舎町のかなしさだと思う。
「あれ? 葉児君じゃないか。綾ちゃんも誠君も。そろって、どうしたんだい?」
管理棟の窓口から、鵤さんが丸い顔をのぞかせた。
白雪姫に出てくる小人さんみたいに、灰色のあごひげで、お腹の大きなおじいさん。頭はつるつるで、耳の横にだけ灰色の髪がのこってる。
「お仕事中にすみません。ちょっと、お話しできますか?」
むずかしい顔のヨウちゃんに、鵤さんの青い目がまばたきした。
鵤さんの名前は「鵤ダグラス」さん。出身はアイルランド。ヨウちゃんのお父さんの古い友だちで、妖精のこともよく知ってる。
「――たしかに、ハロウィンの夜には、ティル・ナ・ノーグのふたが開くと言われているね」
ヨウちゃんが話し終えると、鵤さんは、灰色のあごひげをなでた。
暮れてきた植物園に、アンティークな街灯がオレンジ色にともりはじめる。明治時代のガス灯みたいなやつ。そこに照らされるピンクや赤のバラのアーチの色は、なんとなく物悲しい。
「古代ケルトではね、日本のお正月に当たる日を、サウィンと呼んだんだ。それが、十一月一日。ハロウィンはその前日だから、日本で言う大みそかだね。年の節目には、ティル・ナ・ノーグのふたが開いて、妖精やオバケや、いろいろなモンスターたちが、人間界に出てくると言われている。今の仮装パレードの成り立ちだね」
「つまり……今はかろうじて閉じてる穴が、ハロウィンになったら、開いちゃうってこと?」
あたしが見あげると、ヨウちゃんはくちびるをきつくむすんで、うなずいた。
「……誠。ハロウィンのイベントは中止にしろ。じゃないと、なんにも知らない子どもたちが、巻き込まれる」
「でも、イベントを決めたのは、おとなたちだから。後ろには、市だってからんでるし。それを中止するような力は、オレにはないよ」
「それに、たとえイベントをやめても、その日にティル・ナ・ノーグのふたが開く事実はかわらないね。このままではハロウィンの日は、浅山が西洋のモンスターたちであふれてしまうだろう。浅山ですめばいい。もしも、花田の町にまで、モンスターたちがおりていったら……」
鵤さんが灰色の眉をしかめる。
あたしは自分の肩を自分で抱いた。
「それって、『黄泉の国』から、オバケや怨霊がわきだしてくる……みたいな……?」
「バイオハザード? グレムリン? 妖怪大戦争?」
誠もほっぺた真っ青。
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