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5 ヨウちゃんとフェアリー・ドクター
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しおりを挟む「うわ。見て、和泉。中、字がぎっしり……」
誠の横からノートをのぞきこんだら、行の上から下まで、字でうまってた。シャープペンで書いた縦長のヨウちゃんの字。漢字も多くて、ていねい。
「あ。でも、こっちはぜんぜんだよ」
あたしがめくったほうのノートは、字がまばらだった。マス目を無視して、ザカザカっと書きとめてあるだけ。
でも、次のページには、わりと字がつまってる。
めくっていくと、ページによっていろいろだった。ページ分しっかりとつかって、書かれたもの。ページの真ん中に、なぐり書きしたようなもの。
字もていねいだったり。雑だったり。漢字が多かったり。ひらがなばっかりだったり。
これ……ヨウちゃんの修行の足あと……。
ヨウちゃんは、もとからフェアリー・ドクターの知識があったわけじゃない。一年前の九月。あたしたちがはじめてふたりで妖精を見たころは、なんにも知らない、ただの小学生だった。
このノートの束は、そんなヨウちゃんがおぼつかない足取りで、立ちどまったり、かけ足したり、つまずいたりしながら、歩いてきた、一年間そのもの。
「……葉児って、すごいんだな……」
ノートを読みながら、誠がつぶやいた。
「……うん」
あたしはノートの一ページを開いて、めくる手をとめた。
「ヘアベル。煎剤は呪いを封じこめる。花を身につけると、どんなことにもウソがつけなくなる」
ヨウちゃんの字で書いてある。
「あ、ラクガキはっけ~ん」
横で誠が、ニカニカと笑った。
「え? どれどれ?」
「ほら、へたっくそな絵。なにこれ? バラ?」
のぞきこんだら、右上にシャープペンで描かれている。ヨウちゃんって、絵はそんなにうまくない。なら描かなければいいのに、ゆがみながらも一枚一枚、いっしょうけんめい葉っぱの形を追っている。
……綾桜。
「あ、ラクガキ、こっちも!」
「誠、今度はなに?」
誠のほおから笑みが消えた。パタンと両手でノートを閉じる。
「なんでもない」
「え~? 誠ぉ?」
「ちょっと待て! 誠、おまえ、なにを見たんだよっ!? 」
気づいたら、ヨウちゃんまで出てきて、誠の前で仁王立ちしてた。
「いいええ? べつに」
ノートのページをチラッと見たとたん、ヨウちゃんの肩、とびはねる。
「うわああっ!! 消す! 誠、貸せ!」
「あはは~。ねぇ、葉児、これっていつの? オレと和泉がつきあってたころ? 葉児、病んでたな~」
「うるさいっ!! 」
ヨウちゃんがノートを取りあげて、消しゴムでごしごししたから、あたしも見たかったのに、ぜんぜん見せてもらえなかった。
「あ~もう、消された~。せっかくの思い出がもったいな~い」
「人のラクガキはいいから、おまえら、内容を読めっ!」
ヨウちゃんには悪いけど、別のノートを開きながら、あたしはやっぱり、内容よりも、ページの右上の余白を気にしていた。
消しゴムで消したあとがある。
だけど、紙がボコボコになるぐらい力を込めて書いたらしくて、ちゃんと消えてない。
「綾」って書かれていたそのあとを、あたし指先でそっとなでた。
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