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7 あたしたちのファンタジー
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しおりを挟む「ごめん。いまだに目に見えているものが信じられない……」
浅山の砲弾倉庫跡で、真央ちゃんが目をこすってる。
古代ヨーロッパの遺跡みたいな赤レンガ造りの部屋の中で、有香ちゃんもさっきからずっと、まばたきをくり返してる。
その部屋の真ん中にクローバーの葉をあつめてつくったベッドがあって、中でヒメが横向きに丸まって眠っていた。
腰まで流れる金髪。白いロングドレス。人間の手のひらサイズしかないヒメの背には、銀色にかがやくトンボの羽がはえている。
あたしは、有香ちゃんと真央ちゃんといっしょに、ヒメの前にしゃがみ込んでいる。
「……妖精……だよね。本物の……」
「……だな」
倉庫の壁に背中でよりかかって、ヨウちゃんがしらっとつぶやいた。
自分だって、はじめて妖精を見たときは、あわてふためいて、ビビりまくっていたくせに。そんな過去は、まったくわすれたふりしてるんだから、いい気なもん。
「つ~か、こいつ、産後なんだから、静かにしとけよ」
クローバーの中で、ヒメは両手に大きな白い玉を抱いている。まるきりアメ玉サイズ。ヒメの口元はほころんでいて、幸せな夢を見ているみたい。
「えっと……妖精に、タマゴを産ませるには。好きな花に、別の花の花粉を何種類かあわせて受粉させ、受粉させた花を、一週間、妖精に抱いて寝かせる。運がよければ、一週間後の朝、花はタマゴにかわる。成功する確率は、十パーセント」
誠がふむふむと、ヨウちゃんのノートを読みあげた。
そうなんだ。
ハロウィンの日から、ヨウちゃんと話し合って、真央ちゃんと有香ちゃんには本当のことを話すって、決めたんだ。
「相手が信じるかどうかは別として。隠すような悪いこともしてねぇだろ。ふたりは綾の親友なんだし。言いふらしたり、浅山を荒らしたりするようなやつらじゃない」
ヨウちゃんてば、さらりと言った。なやんだのは、あたしのほう。
なんかさ。胸の奥にある、むやみやたらと人に見せたらいけない部分を、見せるような気がしてさ。
それでも、ハロウィンの一件から、どうしても納得できないって、ふたりに言われ続けていて。ともかく、現実を見てもらうことにしたんだ。
「ふ~ん。なるほどね~。妖精って、こうやってタマゴを産むんだ~。なんつ~か、タマゴを産むとこまで、ファンタジーなんだな。オレ、もうちょっと具体的なカンジを想像しちゃったよ~」
誠が、ぽりぽりとこめかみをかいたら、ヨウちゃんが真っ赤になって、横からノートを奪い取った。
「あたりまえだっ! つか、そ~じゃなかったら、わざわざこっちから、タマゴを産ませたりなんかしねぇよっ!! 」
「……ぐたいてき?」
あたし、ヒメの前にしゃがみこんだまま、きょとん。
「でもさ~。赤ちゃんって、なんでとつぜん、お母さんのお腹にぽっこり入るのかな~? やっぱり、コウノトリさんが運んでくるのかな~?」
そしたら、なぜだか、部屋の中が静まり返った。
アーチ状の入り口から、のどかなお昼の日がさしこんでくる。
「……う~ん」
って、腕を組んで、眉をひそめたのは真央ちゃん。
「ここは話すべき? ナイショにしとくべき?」
って、おでこにひとさし指をおいて、考え込んでる有香ちゃん。
「葉児。その、まぁ、ドンマイ!」
誠がポンッと、ヨウちゃんの肩に手を置いたら、ヨウちゃんはガクンと首をさげた。
「……いや、へ~き。なんとなく、そんな気がしてたから」
「ええ~? なんで~っ!? みんなして、なにこの空気っ!」
ヒメにタマゴを産ませようって決めたのは、あたしとヨウちゃん。
ヨウちゃんのお父さんの心のこりや、ハグができてしまった原因、ヒメの気持ちを考えて、もう一度、ヒメにタマゴを育てさせてあげたいなって、思ったんだ。
「あと、八年か……。その間ずっと、ヒメはここでタマゴを守り続けていくんだね……」
八年後の、あたしたちは二十一歳。
みんな、どこでなにをしてるんだろう……?
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