魔力を持つ人間は30歳までに結婚しないといけないらしい

ここりす

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3 最悪な呼び出し

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気がつくとあのまま眠っていたらしく、ぼんやりと目を開く。

部屋には明るい日差しが入り込んでいた。


(あれ・・・もう朝?)

「遅刻!!」


ガバッとベットから出て立ち上がると、時間を確認する。
するといつもより早い時間だった。


「昨日は帰って夕食も食べずに寝ちゃったから時間がズレたのね」


ほっと安堵するとお腹がすいてきたので、さっと身支度を整えると王宮にある食堂へ軽い足取りで向かう。



王宮の寮には男女別に魔力持ち以外にも、騎士や文官など職業別に分かれているが、共有スペースとしてキッチン付きの大きなダイニングと食堂が併設されていた。

私は料理はほとんどしないので、もちろん食堂へと向かう。


いつもより早い時間ということもあって、食堂はガランとしていた。


「おはようございます!」

「おはよう。いつもマールちゃんは元気だねえ、今日は早い時間なのにどうしたの?」

「お腹がすいて目が覚めたの。今日もオススメの朝食お願いします!」

「そうかい~マールちゃんはいっぱい食べてくれるからおばちゃんも作りがいあるよ」


おばちゃんはニコニコと私の注文を受けて朝食を手早く渡してくれた。


適当な席に着き早速食べ進める。


(はあ~~今日も最高!)


食堂のおばちゃんは私の癒しであり、第二の母だと勝手に思っている。




お腹も満たされ仕事の時間までゆっくりしようと部屋に戻ろうとすると、女子寮の前には見かけない人達が立っていた。

私は関わりたくないのでそっと横を通り抜けようとすると、昨日神殿にいた装いの人に呼び止められてしまった。


「マール・ダレロワ様でいらっしゃいますか」


私がギクリと足を止め、振り返ると神殿に仕えて居そうな人達が私の前にズラリと並び直す。

1番豪華な装飾品をつけた神官が、1歩前に出て挨拶をした。


「お忙しいところ足を止めていただきありがとうございます。私は神官主をやっております。私達は王宮の依頼により、伴侶システムからやって参りました」


(なんで伴侶システムがわざわざこんな・・・)


「昨日、伴侶システムのご登録後、水晶から特別な反応があったのでこちらに出向かせて頂きました。お勤め後、お迎えに上がらせて頂きますので、王宮の王家の間にお越しいただきますようお願い致します」


(王宮からの依頼?王家の間・・・?どういうこと?)


私の魔力がなにか障ったのかもと思い「はい」としか答えられない圧力を感じるが、気になったので勇気を振り絞って質問する。


「私の魔力は少し変わっているで、伴侶システムの水晶が特殊に反応してしまったのかもしれません」

「いえ、こちらでも検査をしましたが、水晶は常に正常でした。それでは後ほどお待ちしております」


それだけを伝えるとあっという間に立ち去っていく。

有無を言わさない雰囲気に圧倒され、私は女子寮の前に佇んでいた。


(ええ・・・王家の間に呼び出しって・・・多分昨日何かやらかしたんだろうけど、何がどう起こってるのか全然分からない)


ひとつ言えることは『私の人生終わった』ことだ。

絶望するや否やそのまま部屋にいても落ち着かないと思い、女子寮に入ることはやめて職場に向かい上司のユリアさんが来るまで待つことしにした。






私が自分の席で放心状態になっていると、いつの間にか出勤していたユリアさんが声をかけてくれた。


「おはよう、マール。顔色がものすごく悪いけど、今日は出勤して大丈夫なの?」

「ユリアさん・・・・どうしましょう・・・・・・」


今にも泣き崩れそうになる私を見て深刻な状態と察し、すぐに使っていない部屋にまで誘導してくれた。




部屋に入ると椅子に座るよう促してくれ、ユリアさんも隣に座ってくれる。

そして泣き崩れながら朝に起きたことを一通り話すと、ユリアさんの顔も深刻になった。


「今まで、あなたと同じように特殊魔法を使う職員が伴侶システムで問題を起こしたなんて聞いたことがないわ。みんな普通にシステムを使ってパートナーを見つけているし、王家の間なんて表彰される以外で使用するなんて聞いたこともない。この事は他の人に話したの?」

「ユリアさんしかこんな事相談できませんよ・・・っ」

私の背中をさすって落ち着けてくれている。

「それは正しい選択ね」

ユリアさんは続けて
「王家の間に私が上司だとしてもついて行く事は許されないと思うわ。でも、終わるまでアナタをここで待っておくことはできる。だから不安だろうけど、王宮命令は絶対なの。行ってきなさい」

「はい・・・ありがとうございます。でもユリアさんには小さいお子さんもいらっしゃいますし、旦那さんも遠征に派遣されいて、お子さんにはユリアさんしかいらっしゃらないじゃないですか。だから待ってもらうのは大丈夫です」

(無事にここへ戻って来られる保証もないしね)

「こうして話を聞いてもらえるだけで、落ち着きました。また明日、私がここに出勤出来ていたら話を聞いてくれると嬉しいです」

「そんな・・・」


私が明日出勤出来るかなんて完全に否定はできない。

ことの大きさを感じていると部屋の外からユリアさんが呼ばれ、そのまま扉の外で会話している。

戻ってくるなりユリアさんは静かに話す。


「マール、今日は定刻で必ず退勤しなさいと上部からの業務命令です」

「・・・はい」


逃げられない言葉に、私は現実を受け入れた。

これ以上ユリアさんに迷惑はかけてはいけないと、私は仕事に集中しようと頭を切り替え、一緒に部屋を出る。
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