魔力を持つ人間は30歳までに結婚しないといけないらしい

ここりす

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4 結婚

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嫌な時間はあっという間にやってくる。

呼び出されていることを思い出さないように、お昼休憩も取らず集中していたらユリアさんからそっと声をかけられた。


「マール・・・もうすぐ時間よ」

「はい、お疲れ様です」


私はユリアさんに心配をかけないよういつも通りの笑顔を心がけ、魔法支援室を出た。





出た廊下の先に王宮の近衛騎士が立っていた。


「お迎えに上がりました」

「・・・はい」

(やっぱり逃げられないよね)


私は諦めて前を歩く近衛騎士について行く。どんどんと歩いている廊下の装飾は豪華になり、王宮の城の方へ近づいて行くのがわかる。

そしてついに、大きな扉の前に差し掛かかり近衛騎士達が足を止めた。


「こちらが王家の間です」


仕事中に王家の間のシミュレーションをしていたが、想像の範疇を超えた威圧感がある景色に息が止まりそうになる。


しかし息のつく間もなく、目の前の扉が大きな音を立てて開く。


ギィイイ・・・・・・ガチャーーーー


扉の向こうには絵に描いた様な王家の間が広がっており、そこには国王陛下、そして朝に出会った伴侶システムの神官がズラリ、王宮の臣下も両脇に勢揃いしていた。

一斉に視線がこちらに向き、その重圧から逃げ出したくなるが、後ろからの近衛騎士の圧でそっと1歩ずつ前に進みだす。

王家の間に敷かれた高級な絨毯の上を歩くが、緊張に震え真っすぐ進んでいるのかもわからない。


先に謁見していたのは見え覚えのある、同じ魔力持ちのローブを織った幼なじみの彼がいた。


「こちらへ」


国王陛下に呼ばれたので、私は状況が掴めないながらも彼の隣で挨拶をすることにした。


「王宮で魔法支援室に務めさせていただいております。マール・ダレロワと申します。お初にお目にかかれて光栄です」


「うむ。早速本題に入ろう。本日そなた達を呼び出したのは、二人に結婚してもらうためだ」


(結婚?????)


隣で小さく舌打ちが聞こえた気がしたが、今は気にしてはいられない。


返事をしない私達に、伴侶システムの神官主が申出る。


「陛下、私から詳細を説明させて頂いてもよろしいでしょうか」

「よかろう」


神官主は発言の許しを得ると、淡々と説明をする。


「マール・ダレロワ様が昨日、伴侶システムに登録した後、今までに見た事のない光に神殿が包まれました。その光の正体は水晶だったのです。ただちに水晶を確認すると、マール・ダレロワ様のパートナーにミハイル・エンリー様の魔力相性が出ていました。『伴侶システム』が出来て以来、今までに確認されていない相性の良さです。


数値は100パーセント。


この事態を早速に王宮に報告しました。するとどちらも王宮勤めであり、非常に優れた魔力を持ち合わせていらっしゃる事が確認出来ました。そこで王宮としても、更なる国の発展のため、二人には是非結婚して頂き、魔力持ちの理想の夫婦となって欲しいと言うのが国王陛下の願いです」


一通り説明を終えると、間髪を入れずに隣から声が聞こえた。


「陛下、発言をお許しください」

「よかろう」


彼は神官主に向かって話している。

「魔力持ちが恋に落ちにくいのはご存知ですよね。この伴侶システムは魔力の相性を計測するだけであって、恋に落ちる相性まではどれくらいの確率に当てはまるのでしょうか?すぐに結婚に結びつけるのは性急過ぎるのではないかと考えます」


その質問に神官主が口を開く。

「伴侶システムでは、魔力以外でも測定される相性の高いパートナーが表示されます。出会って直ぐに恋に落ちる事はありませんが、表示されたパートナーと過ごす事により結婚する確率は9割を超えております。また、相性の確認のため複数のパートナーと出会う方もいますが、やはり一番相性の高いパートナーと結ばれる事例が多くあります。最初は皆様方、出会ったこともない人といきなり恋に落ちるなんて無理だとおっしゃいますが、最終的には結婚していかれます」

そのまま神官主は続ける。

「それに調べた所によると、同じ故郷で幼なじみでいらしゃったとか。もう二人は出会われていたのですね。後は一緒に過ごす時間が足りないのではないかと思い、婚約はされておりませんが、王宮から特別に家をご用意して頂きました」


「なっ・・・!?」

(これは用意がよすぎる・・・)


国王陛下が口を開く。

「都合のいい事を頼んでいることは、こちらも分かっておる。君たちには特別手当も支給しよう。こちらから“お願い”するのだ。他に欲しい物はあるか?」

その言葉に彼は食いつく。

「魔法研究室の今後の発展のため、王宮書庫の出入りを許可いただけないでしょうか?」


国王陛下はチラリと誰かに確認すると


「よかろう、それでは君たちの結婚を期待している」



そう言い残すと王の謁見はお開きとなった。
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