魔力を持つ人間は30歳までに結婚しないといけないらしい

ここりす

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30 愛しのお姫様へ ②

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朝の王子様を思い出し、食堂で一人ぼんやりとお昼を食べていた。

(格好良過ぎたな・・・夢みたいだった)

ニヤケそうになるのを誤魔化すように食べ進める。

無意識にキラキラと魔力が纏う指を眺めていた。

(とても、綺麗・・・)


式典があるので、魔力塔にいる人は少なく、お昼時の食堂もガランとしていた。


食べ終わる頃、遠くから嫌な声が聞こえてきた。この前、渾身の一撃をお見舞いしたシーマとその取り巻きが近付いて来るのがわかる。食堂では姿を見かけたことが無かったので、わざわざ私が一人の時を狙ってきたのだろうと察した。

もちろん食べに来たわけではなく、私を取り囲むように座る。

「なあ、なんでお前みたいな奴があのミハイル・エンリー様と結婚出来るわけ?全然釣り合ってねーじゃん」

シーマの声に、周りの男達は合わせるように笑う。この男はいくつになっても、同じようなことしか出来ないのかと、呆れると無視して片付ける。

「お前の魔力も人の魔法が無いと全然強くねーんだろ?あの時は姑息な手を使いやがってよ」

人が少ない分、奴らの声がより目立ってしまっている。愛しのおばちゃんが遠くからこっちを見て慌てふためいているので、ため息をつくと話し出した。

「あのさ、私のこと言うのは構わないけど、やる場所考えなよ。まだまだ言い足りないんでしょ、あっちで話し合いましょう」

奴らの間を素早くすり抜けると、おばちゃんにいつも通りお礼を言って食器を返却する。心配の声をかけられるが、大丈夫と返事をすると早足で出口へ向かいながらアイツ等も来るように目配せする。後ろから文句が聞こえるがさっさと食堂を出ると、人目のつかない廊下へと誘導した。


振り返り立ち止まると、シーマを筆頭にゾロリとローブを羽織った男達が並ぶ。

この人数を相手にするのはさすがに分が悪いので、少しずつ距離を置きながら逃げる隙を作るために話をすることにした。

「あの試合であそこまでやられておいて、よく私に立ち向かってこれたね。一人ではまた勝てないから、こうしてゾロゾロ引き連れて来るなんて、男として恥ずかしくないの?いくつになってもやってることは変わらないなんて、本当にくだらない。もっと他にやることあるでしょ。アンタ今年で何歳なの?」

じりじりと下がっていく私の言葉を聞きながら、正面の男はあの時と同じくずっとニヤニヤとしている。


「やることはお前を消すことだよ!!!」


合図をしていたのか、奴ら全員の攻撃魔法が一斉に飛んで来る。


バリバリバリ、ズバァアンーーー


ガード魔法をかけるがこちらに飛んでくる攻撃魔法の多さに、思わず目を瞑ると突然誰かに強く抱きしめられる。

目をあけると、そこにはミハイルがいた。

私を守るように抱きしめている。


(どうして・・・)


パキィィインーー


飛んできていた魔法はこちらに届くことなく、飛び散るように消えていく。

シーマ達の方には目もくれず、背を向け安心させるように私を抱きしめ続けている。


「ミハイル・エンリー様!!?」


奴らは慌てふためき私が悪いのだの必死に説明をしているみたいだが、彼の耳には一切届いていない。

ミハイルの腕の中で確認される。

「大丈夫?どこも怪我はしてない?」

「う、うん」

私の頬を優しく撫でると、少し安堵していた。

今度は横から私に向かってもう一度放たれる攻撃を簡単に弾き返す。

パキィンーー

「じゃあ、殺そうか」

抱きしめていた腕を解くと、素早く振り返り奴らの方へ一直線に向かう。

国内一最強の魔力持ちハイル・エンリーが向かってくる恐怖に思わず全員で攻撃魔法を連発していた。

バチバチバチ、ズバァアアアンーーー

「僕の妻によくもこんなことをしてくれたな」

「うわぁぁああああ!!来るな!来るなってば!!!」

彼は指を鳴らすと、全ての激しい攻撃魔法を相殺するように散りばめる。

ミハイルが魔法を使う姿を初めて見た。
それはとても綺麗で、攻撃魔法が鮮やかにキラキラと舞い落ちる。

彼にとっては遊んでいるようにも見えた。

「こんな大したことの無い魔力でよく王宮に入れたもんだ、使い方も分からず魔力に任せて数の連打のみ。これではせっかくの魔力も無駄だ。僕は優しいから、お前たちの魔力を吸い取って上手に使ってやる。きっとその方が魔力も喜ぶだろう。良かったな。魔力持ちでなくなったお前たちは、これで二度と王宮に来なくていいぞ」

ミハイルの魔力の糸が手から伸びると、全員の腕に絡み、一瞬で奴らがドサリと倒れて動かなくなってしまった。

元のミハイルのような話し方をする彼を眺めていると、手を掴まれてその場から早足で去る。


「本当に・・・殺して無いよね」

「君は、アイツらの心配をするの?」


遠くから救援の声が聞こえたので、ホッと安堵した。
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