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64 嫉妬 ②
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目を覚ますと紫に戻った瞳に覗き込まれている。
「マール」
泣きボクロに優しく唇が触れた。
彼はもうミハイルなのだ。
「お腹減ってるよね、夕食たくさん作ったんだ。こっちで一緒に食べようね」
ミハイルを見て動けない私を抱き上げると、広い家を移動する。
「これからこの家で一緒に暮らそうね。僕がこうして運ぶから、マールはどこにも逃げられないよ」
運ばれながら、もう彼を見れないでいると、顔にたくさん唇が降って来る。私はもう諦めるしかなかった。
広々とした食卓に到着する。沢山の食事が並べられているのを眺める私に甘く微笑み、優しく椅子に降ろす。
いつものように隣に座ると、ただ茫然と食事を見つめている私の口に、温かい料理が触れた。
「マールこれ好きだったよね。ほら、僕が作ったよ。食べてくれない?」
もう現実と思えない状況に、言われた通りに食べる。
魔法にかかった時から解けた後まで変わらない同じ味を口の中で受け止めながら、ただ涙が流れる。
それなのに隣に座る彼の笑顔は幸せそうだ。
「ねえ、君の好きなミハイルだよ。こっちを見てくれない?」
隣に密着しているミハイルを見上げる。彼が満足するまでキラキラと輝くオーラを纏う紫の瞳と見つめ合っていた。
「やっと僕を見てくれたね。ふふっ幸せだよ」
「あなたは、誰なの・・・」
「君の愛しているミハイル・エンリーだよ。ほら、いつものように僕に愛してるって言ってくれないの?」
(私が、悪かったんだ・・・ここまで彼を追い込んだのは、私のせいだ。ずっとミハイルを想っていた私が、悪い)
「ミハイル」
「マール、愛してるよ」
彼の持っているスプーンを取り上げ、机に放り投げる。
カッシャーンッーーー
「あれ、怒ってるの?ふふっそんなマールもーーーー」
「ミハイル!!」
「どうしたの?僕の可愛いお姫様」
頬をするりと撫でる手を跳ね除ける。
「酷いね、君の好きなミハイルなのに」
ガタリと立ち上がると、部屋を出ようと走り出す。
だけど扉は固く閉ざされ開かない。
(どうしーーーー)
ーーーバァンッ
大きな音と共に両手に囲われ、扉とミハイルに挟まれて動けない。
「逃げないで、マール」
「今のあなたとは話したくない」
「こっちを向いてくれない?僕に可愛い顔を見せて」
囲われた腕の中で振り返る。彼との距離にはもう心が反応しなかった。
「やめようよ」
「ああ、もういいんだ。これで」
「ちゃんと話そう。私が全部悪かった、ごめんなさい。全部私のせいにして、もうやめようよ。何度でも謝る。本当にごめんなさい」
「最初からこうしてれば、素直にマールから愛されたんだ」
「ミハイ、ル」
目の前で顔が止まる。唇が触れそうだ。
「これから、ミハイルにどんな風に愛されたのか教えてくれないか?」
その言葉に目を伏せる。許されない私は逃げられない。
夕食を彼の手から食べさせて貰い、寝室に運ばれる。
家よりも広々としたソファーに座ると、腰を抱き寄せられたまま、彼の顔を見ることしか出来なかった。
「さあ、恋に落ちた時のことを教えてくれ。僕には君に愛された記憶がない」
一呼吸置くと、諦めたように話し出す。
「魔法にかかった貴方は、本当に別人みたいに変わったの。私を毎日優しく支えて守って愛してくれた。こんな毎日が続くのなら、本当に結婚したいと思えたほどに貴方を愛していた。それが魔法の愛だったとしても、貴方の心を信じていた」
無表情で私の瞳を覗き込んでいる彼の感情は読み取れない。
だけど腰を抱いている力は込められる。
「私も愛していたから、本当の夫婦のように過ごしていた。だから、そのーーー」
その先の言葉を言わせないように押し倒されると、ミハイルは上にのしかかる。逃してくれない重みを私は受け入れた。
「そこから先は、僕に実際にしてくれないか。初めてだから分からない」
熱と怒りの籠った瞳から逃げることなく捉える。
「分かった」
彼を傷付けた痛みを受け入れるように、ミハイルの顔に手を添えた。ビクリと一瞬驚いているが、彼の顔が私の唇の前で止まった。
瞳を閉じて愛おしい彼の唇にゆっくりと重ねる。ミハイルとの久しぶりの口付けに、心が悲しく満たされていた。
なかなか離れないので、そっと押しのける。
「んっ」
動けないように顔を包み込まれ、いつまでも唇が離れず、呼吸を必死にしながら口を塞がれている。
「んんんんん!!!」
限界になり、目を開けると暗い紫の瞳と目が合う。ずっと私を見ていたのか、視線が怖くなり、逃げるようにまた瞳を閉じた。
やっと離れたかと思うと、すぐに角度を変えて逃げられない口付けが続く。
「んむっ・・・んんっ!」
(初めてのはず、なんで・・・)
「はぁっ、まっ、っん、んぅ」
ちゅっと惜しむように唇が離れると、彼の熱い視線に捉えられる。どっと溢れる色気に顔を逸らしたいのに、彼の手の中から動けないので見つめていると、また唇が重なる。
「もぅ!っんん・・・」
「はあ・・・他にどんなキスをしたんだ?マールからじゃないと分からない」
「はあっ、はあ・・・まだ、するの」
「ああ、全然足りない。僕とこれ以上したんだろう」
もう逃げられないことは分かっているので、彼の気が済むまでキスを続けることにした。
目の前にある唇にまた重ねる。何度も角度を変えていると唇が少し開いた瞬間にそっと舌を忍び込ませた。
「ん・・・っ!」
ミハイルが驚いたので、舌を戻し口付けを続ける。
逃がさないと言わばかりに、さらに深く口を塞がれると、彼の舌が追いかけるように私の舌に絡ませてきた。溺れそうになりながら必死に唾液を飲み込むと、嬉しそうに唇が笑う。
艶めかしく唇が離れると糸が引いている。
この雰囲気の酔いそうになりながら、目を開けると、ギラギラと支配欲が籠った顔でじっと見下ろされていた。
「それで、・・・ここからも続きがあるんだろう」
「はあっ、まっ、て」
「ああ・・・マールの答えを待ってるよ」
頭が真っ白になり話出さないでいると、彼の甘い唇が頬から、瞼、そして耳元に移動していく。
「ほらっ、ん、どうするんだ・・・」
耳元で熱く囁く吐息にビクリとすると、耳が熱い口の中に咥えられる。
どんどん耳が濡れていき、体が反応していると甘く笑う吐息に声が漏れてしまう。
「あんんっ・・・!」
「ふっ、マールは耳が弱いんだったな」
舌の動きと、いやらしい音が混ざり、体が大きく反応したまま上手く頭が回らない。
どこまで彼としたことをもう一度するべきか、全てするべきなのか。
ごちゃごちゃになりながらも答えようとすると、さらに首元まで降りてきた彼の熱い舌が這う。
「あっ・・・んっ・・・だめ!!」
「魔法にかかった僕には許したのだろう」
「おね、がい・・・」
「じゃあ、最後にもう一度だけ」
抱き起こされると、座ったミハイルと向き合う状態になる。近さは変わらないのに、より彼を感じるような気分になる。
「今度は目を瞑らず、目を開けたまま僕を見てしてくれ」
逃げ出したくなるような言葉に、顔を逸らしたくなったが、腰と頭に手がまわり動けない。
「ほら、こっちを見ろ」
ミハイルの甘い顔立ちを見ると、紫の瞳と目を合わせる。
「今からマールとキスをするのは、幼なじみのミハイル・エンリーだ」
真っ直ぐに見つめられ、もう逃げられない。
紫の瞳と目を合わせながら、ゆっくりと唇を重ねた。
目には涙が溜まり、流れ落ちる。
それでも目を開けて幼なじみとキスをした。
(ごめんなさい)
心の中で何かが砕ける音がした。
「マール」
泣きボクロに優しく唇が触れた。
彼はもうミハイルなのだ。
「お腹減ってるよね、夕食たくさん作ったんだ。こっちで一緒に食べようね」
ミハイルを見て動けない私を抱き上げると、広い家を移動する。
「これからこの家で一緒に暮らそうね。僕がこうして運ぶから、マールはどこにも逃げられないよ」
運ばれながら、もう彼を見れないでいると、顔にたくさん唇が降って来る。私はもう諦めるしかなかった。
広々とした食卓に到着する。沢山の食事が並べられているのを眺める私に甘く微笑み、優しく椅子に降ろす。
いつものように隣に座ると、ただ茫然と食事を見つめている私の口に、温かい料理が触れた。
「マールこれ好きだったよね。ほら、僕が作ったよ。食べてくれない?」
もう現実と思えない状況に、言われた通りに食べる。
魔法にかかった時から解けた後まで変わらない同じ味を口の中で受け止めながら、ただ涙が流れる。
それなのに隣に座る彼の笑顔は幸せそうだ。
「ねえ、君の好きなミハイルだよ。こっちを見てくれない?」
隣に密着しているミハイルを見上げる。彼が満足するまでキラキラと輝くオーラを纏う紫の瞳と見つめ合っていた。
「やっと僕を見てくれたね。ふふっ幸せだよ」
「あなたは、誰なの・・・」
「君の愛しているミハイル・エンリーだよ。ほら、いつものように僕に愛してるって言ってくれないの?」
(私が、悪かったんだ・・・ここまで彼を追い込んだのは、私のせいだ。ずっとミハイルを想っていた私が、悪い)
「ミハイル」
「マール、愛してるよ」
彼の持っているスプーンを取り上げ、机に放り投げる。
カッシャーンッーーー
「あれ、怒ってるの?ふふっそんなマールもーーーー」
「ミハイル!!」
「どうしたの?僕の可愛いお姫様」
頬をするりと撫でる手を跳ね除ける。
「酷いね、君の好きなミハイルなのに」
ガタリと立ち上がると、部屋を出ようと走り出す。
だけど扉は固く閉ざされ開かない。
(どうしーーーー)
ーーーバァンッ
大きな音と共に両手に囲われ、扉とミハイルに挟まれて動けない。
「逃げないで、マール」
「今のあなたとは話したくない」
「こっちを向いてくれない?僕に可愛い顔を見せて」
囲われた腕の中で振り返る。彼との距離にはもう心が反応しなかった。
「やめようよ」
「ああ、もういいんだ。これで」
「ちゃんと話そう。私が全部悪かった、ごめんなさい。全部私のせいにして、もうやめようよ。何度でも謝る。本当にごめんなさい」
「最初からこうしてれば、素直にマールから愛されたんだ」
「ミハイ、ル」
目の前で顔が止まる。唇が触れそうだ。
「これから、ミハイルにどんな風に愛されたのか教えてくれないか?」
その言葉に目を伏せる。許されない私は逃げられない。
夕食を彼の手から食べさせて貰い、寝室に運ばれる。
家よりも広々としたソファーに座ると、腰を抱き寄せられたまま、彼の顔を見ることしか出来なかった。
「さあ、恋に落ちた時のことを教えてくれ。僕には君に愛された記憶がない」
一呼吸置くと、諦めたように話し出す。
「魔法にかかった貴方は、本当に別人みたいに変わったの。私を毎日優しく支えて守って愛してくれた。こんな毎日が続くのなら、本当に結婚したいと思えたほどに貴方を愛していた。それが魔法の愛だったとしても、貴方の心を信じていた」
無表情で私の瞳を覗き込んでいる彼の感情は読み取れない。
だけど腰を抱いている力は込められる。
「私も愛していたから、本当の夫婦のように過ごしていた。だから、そのーーー」
その先の言葉を言わせないように押し倒されると、ミハイルは上にのしかかる。逃してくれない重みを私は受け入れた。
「そこから先は、僕に実際にしてくれないか。初めてだから分からない」
熱と怒りの籠った瞳から逃げることなく捉える。
「分かった」
彼を傷付けた痛みを受け入れるように、ミハイルの顔に手を添えた。ビクリと一瞬驚いているが、彼の顔が私の唇の前で止まった。
瞳を閉じて愛おしい彼の唇にゆっくりと重ねる。ミハイルとの久しぶりの口付けに、心が悲しく満たされていた。
なかなか離れないので、そっと押しのける。
「んっ」
動けないように顔を包み込まれ、いつまでも唇が離れず、呼吸を必死にしながら口を塞がれている。
「んんんんん!!!」
限界になり、目を開けると暗い紫の瞳と目が合う。ずっと私を見ていたのか、視線が怖くなり、逃げるようにまた瞳を閉じた。
やっと離れたかと思うと、すぐに角度を変えて逃げられない口付けが続く。
「んむっ・・・んんっ!」
(初めてのはず、なんで・・・)
「はぁっ、まっ、っん、んぅ」
ちゅっと惜しむように唇が離れると、彼の熱い視線に捉えられる。どっと溢れる色気に顔を逸らしたいのに、彼の手の中から動けないので見つめていると、また唇が重なる。
「もぅ!っんん・・・」
「はあ・・・他にどんなキスをしたんだ?マールからじゃないと分からない」
「はあっ、はあ・・・まだ、するの」
「ああ、全然足りない。僕とこれ以上したんだろう」
もう逃げられないことは分かっているので、彼の気が済むまでキスを続けることにした。
目の前にある唇にまた重ねる。何度も角度を変えていると唇が少し開いた瞬間にそっと舌を忍び込ませた。
「ん・・・っ!」
ミハイルが驚いたので、舌を戻し口付けを続ける。
逃がさないと言わばかりに、さらに深く口を塞がれると、彼の舌が追いかけるように私の舌に絡ませてきた。溺れそうになりながら必死に唾液を飲み込むと、嬉しそうに唇が笑う。
艶めかしく唇が離れると糸が引いている。
この雰囲気の酔いそうになりながら、目を開けると、ギラギラと支配欲が籠った顔でじっと見下ろされていた。
「それで、・・・ここからも続きがあるんだろう」
「はあっ、まっ、て」
「ああ・・・マールの答えを待ってるよ」
頭が真っ白になり話出さないでいると、彼の甘い唇が頬から、瞼、そして耳元に移動していく。
「ほらっ、ん、どうするんだ・・・」
耳元で熱く囁く吐息にビクリとすると、耳が熱い口の中に咥えられる。
どんどん耳が濡れていき、体が反応していると甘く笑う吐息に声が漏れてしまう。
「あんんっ・・・!」
「ふっ、マールは耳が弱いんだったな」
舌の動きと、いやらしい音が混ざり、体が大きく反応したまま上手く頭が回らない。
どこまで彼としたことをもう一度するべきか、全てするべきなのか。
ごちゃごちゃになりながらも答えようとすると、さらに首元まで降りてきた彼の熱い舌が這う。
「あっ・・・んっ・・・だめ!!」
「魔法にかかった僕には許したのだろう」
「おね、がい・・・」
「じゃあ、最後にもう一度だけ」
抱き起こされると、座ったミハイルと向き合う状態になる。近さは変わらないのに、より彼を感じるような気分になる。
「今度は目を瞑らず、目を開けたまま僕を見てしてくれ」
逃げ出したくなるような言葉に、顔を逸らしたくなったが、腰と頭に手がまわり動けない。
「ほら、こっちを見ろ」
ミハイルの甘い顔立ちを見ると、紫の瞳と目を合わせる。
「今からマールとキスをするのは、幼なじみのミハイル・エンリーだ」
真っ直ぐに見つめられ、もう逃げられない。
紫の瞳と目を合わせながら、ゆっくりと唇を重ねた。
目には涙が溜まり、流れ落ちる。
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(ごめんなさい)
心の中で何かが砕ける音がした。
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