魔力を持つ人間は30歳までに結婚しないといけないらしい

ここりす

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63 嫉妬 ①

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ミハイルは王宮で独身寮を所持せず、家を購入していたみたいだ。
王宮のすぐ近くにある高級住宅街に来ていた。

(凄い、どの家も大きい・・・)

自分達が住んでる家も大きいと思っていたが、それよりも豪華な家を一軒一軒観察しながらミハイルと手を繋ぎ歩く。

「凄いね、家持ってたんだ」

「ああ、王宮から近くて便利だと思って購入したが、一人では広すぎて持て余している」

どこかで聞き覚えのある言葉を思い出していると、この近辺でも1番大きい家の前を通り過ぎる。

「さっきのは、君とよくいる後輩の家だな」

「うそ・・・」

(家持ってるって言ってたけど、あんなに大きかったの)

つい驚いて振り返りながら家を確認していると、絡めた手を強く引き寄せられ、もたれ掛かりそうになる。

「ちょっ、どうしたのっ!」

「その・・・後輩のことはどう思っているんだ」

「仲のいい後輩だよ。それ以上はない」

近くなった距離から見上げてキッパリと伝えると、ミハイルは複雑な表情をしながらも頷いて手を繋ぐ力を緩めた。



「僕の家はここだ」

立派な家の前に到着する。さっき通り過ぎた家と大きさも豪華さも変わらず、目を丸くする。
距離は離れていたみたいで、向こうの家はもう見えない。

扉の前に立ち、ミハイルの家の大きさをまじまじと眺めていた。国一番の魔力持ちの家にただ感動する。

「わあ、凄い・・・立派だね」

「ああ、将来マールの家になる」

「そう、だね」

驚きながらも頷いていたら、どこからか視線を感じる。

(ん?なんだろう・・・)

確認しようと家から目を外したら、視線を遮るように腰を強く抱き寄せられると、ミハイルの家に縺れるように入った。

「な、なにっ!」

急いで扉を閉め、ガバリと抱きしめられる。
突然な行動に戸惑いながらも、腕の中から見える家広さに驚いていた。

(これがミハイルの家・・・)

家に見蕩れていると抱きしめる力が込められたので、その背中に腕をまわし、より密着する。

「マール」

「どうしたの?急いで家に入って」

「今日はこの家に泊まっていかないか?」

「え・・・うん」

幸せそうな微笑みを見上げながら、なかなか離れないミハイルの背中を優しく撫でた。


手を繋ぎながら家を紹介してもらう。

広すぎて勝手が覚えられず、とりあえず今日寝る部屋までやってきた。中まで進むと、先ほど買ってもらったお店の紙袋がズラリと置かれていた。

「え、元々この家に来るつもりだったの?」

「ああ、そうだ」

気にせずミハイルは指を鳴らす。

「このクローゼットとマールの部屋のクローゼットを繋いでおいたから、後で仕舞うといい」

「凄すぎるよ・・・そんな魔力簡単に使うなんて」

「ああ、妻の為ならなんでも」

その言葉に照れながらも、今いる広々とした部屋を見渡す。家にある夫婦の寝室より豪華なベットが置かれていた。

「この家を建てた時から1度もこの部屋は使ったことが無い。夫婦の寝室だ」

「え、普通の部屋でいいよ」

「僕の妻になるんだろう?」

「うん、そうだ・・・ね」

複雑な感情になりながらも俯いていると、抱き上げられそのままベットに座る。
甘く蕩けた表情に見下ろされ、私達はじっと見つめ合っていた。


「今日は隣で寝ることを許してくれるか?」


(どうしよう・・・)


私の気持ちを確認するようにゆっくり顔が近付く。


触れる寸前で、咄嗟に顔を逸らしてしまった。


私に受け止められなかった甘い唇が口の端に触れると、悲しそうにミハイルは離れていく。


胸が切なく痛み、ミハイルが見れなくなってしまった。


「僕に愛されるのは嫌か?それとも魔法にかかった僕がいい?」


逸らしていた顔をガッシリと掴まれ無理やり目を合わせると、紫の瞳は魔力が籠り赤く光っているように見えた。


(ダメ・・・これ以上、目を合わせてると・・・き、け・・・ん)


なのに赤い目から逸らせないでいると、ベットの真ん中まで運ばれる。

その表情の怖さに、抜け出して逃げようとすると力強く押さえつけられてしまう。

うつ伏せになり、ベットのシーツが冷たく感じた。

抵抗する間もなく、ミハイルの全身が乗っかり、身動きが全くできないていると、私のポケットに無理やり手が入る。


「やっ!!やめて!!!」


ポケットの中にある水晶に触れられて、腰を動かしながら、ミハイルの腕を掴んだ。


「これが光るのを、ずっと期待しているんだろう」


ポケットの中でコロコロと転がされてこそばゆいが、必死に動く腕を掴む。


「触らないで!!!」


「いつまでっ・・・君にミハイルじゃないと見られるんだ!!いつになったら僕自身を見てくれる?」


怒りの籠った言葉に、私は力なく抵抗するのをやめた。


右頬に触れるシーツの冷たさを感じながら、罪悪感で涙を流す。


ひくっ・・・っひく・・・・


「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」


私の涙がシーツを濡らしていく。


抵抗をやめても、ポケットに入った手は、水晶を触ることをやめない。


ピアスが外された耳に、ミハイルの唇が触れた。



『マール』


ドクンッーー


「あ゙あ゙あ゙あ゙、やだ、やだっ!」


『マール、君のことはもう好きじゃないよ。僕のことは嫌いになって、忘れて』


「や゙だ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」


私の愛しているミハイルの甘い声だ、話し方だ。


ミハイルの言葉だ。


やめて、やめて、壊さないで。


私の大切なミハイルとの思い出を。



なんとか逃れようと、必死に首を振り抵抗しようとする。


透かさずポケットに入っていた手が、動く首を押さえた。


ガシッーー


「んぐっ・・・お゙ね゙がい」


まるで首輪のように固定され、さらに私は囚われる。



『僕はずっと君の傍にいたよ』


『ふふっ、君は僕のことばかり考えてくれているんだね』


溢れる涙越しに泣きボクロに甘く優しい唇が触れた。

それはミハイルがいつもしてくれるキスだ・・・



『僕にキスされて嬉しそうだね。そんなに僕の方がいい?じゃあこっちの僕で一生君を愛してあげる』


『愛してるよ、マール』


後ろで私を離さないミハイルの表情は分からない。

耳元でくすりと笑う吐息に背中がぞくりとする。


「君に愛されたいのに、嫌われたい」


そこで私の意識は途絶えた。
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