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69 伝わらない気持ち
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家に帰ると、まだミハイルは帰ってきていないので、広いソファーで頭を悩ませる。
このまま本当に結婚していいのか。
私の正直な気持ちを出せないまま、ぼんやりとしていると、ミハイルが帰ってきた気配がした。
バァンーーー
気が付くと部屋を飛び出して走っていた。
廊下の先でこちらに早足で向かってくるミハイルは、ものすごいオーラを出している。
(あれ、なんか怒ってる?)
仕事でなにかあったのかと思いながら、駆け寄ってくる私に驚いた顔をして立ち止まっているので、その胸に飛び込む。
「ミハイル、おかえり!」
会いたかったと言わんばかりに彼の胸に擦り寄る。
「マール・・・ただいま」
大切に抱きしめてくれる彼の手が心地いい。
(ミハイルだ・・・嬉しい)
頭を撫でられていると、急に体が軽くなる。
(あれ・・・この感覚は・・・)
そっと離れると、複雑そうに私の顔を見ている。
「その・・・撫でてくれ」
頭を近づけてくるので、抱きかかえるように撫でた。
「お仕事遅くまでお疲れ様」
甘く優しくたくさん撫でると、最後に髪にキスをする。
「なっ・・・」
先ほどのメラメラとしたオーラは消え、赤くなっているミハイルの頬をつつく。
「今日もいっぱい甘やかさないとね」
見つめていると、パッと目を逸らされる。
「すぐに夕飯の支度をしてくるから、少し待っていてくれ」
「私も一緒に作るよ」
「今日は下ごしらえしてあるから、すぐに出来るんだ。また呼びに来る」
ミハイルの顔が近付き、目を瞑ると頬に唇が触れた。
すぐに離れると、ミハイルはキッチンに向かってしまう。
その背中を見つめながら、昨日キスしたことを思い出す。
(きっと・・・あの時私が好きって言ったから、もう唇にはしてくれないのかな)
とびとぼと部屋に戻り、気になったことがあったので洗面所へ向かう。
(一緒に料理と言うよりもミハイルと・・・)
顔を上げ鏡を見ると、その表情は蕩けていてとても幸せそうだった。
もう苦しそうな顔をしていない自分の表情に、気付いてしまった。
今想っている貴方を、昔から変わらない幼なじみのミハイルが好きだと。
「ミハイル」
愛おしい幼なじみの名前を呼ぶと、緑の瞳が甘く輝いている。
「ミハイル」
ーーー私はまた、貴方に恋に落ちた。
「ミハイル・・・」
ピアス穴よりも指輪をしている手を見つめる。
「私は、貴方が・・・・・・」
(好きって言っても、ミハイルはまたあの顔をするんだろうな・・・)
私の気持ちは、信じてもらえないのだろうかと、不安に落ち込む気持ちで唇が触れた頬を撫でた。
目的を忘れ、輝いて見える指輪を甘く見つめていると、はっと我に返る。
(そういえば、首)
髪を横に流してうなじを見ると、歯型は消えていた。
(そんな・・・)
やはり先ほど体が軽くなったのは、ミハイルが回復魔法をかけたからだ。
(別にどこも怪我なんて・・・)
今日はアルノーのおかでげ怪我なく済んだが、それを知っていて・・・
(まさか・・・ね)
歯型が消えてしまった首を撫でながら部屋を出た。
ソファーに座り、高い天井を見つめる。
「はぁー、どうしたら・・・」
私も、今までミハイルを信じてこれていなかった。
毎日そばにいて、支えて、愛してくれていたのに。
(今更、都合が良すぎるよね・・・)
涙が出そうになるのを堪え、目を閉じていた。
抱き上げられてる感覚に、ぼんやりと目を開ける。
愛おしい顔に触れると、私を見て微笑んでいる。
「ミハイル・・・」
「まるで僕のことが好きだって顔をしているな」
「そうだよ」
「ふっ、お腹は減っているか?」
(やっぱり、信じてもらえない・・・)
「帰りにカフェで食べてきちゃったの」
「そうか、ちょうど今日は控えめにしてある」
食卓で今日あったとこを話していると、隣で食べているミハイルに見蕩れていた。
(こうして気を使わず一緒にいる時間、好きだな・・・)
私が食べる手を止めていたので、頬をつつかれる。
「もう、いらないのか?」
その手を掴んで頬にすり寄せていたら、手を握られるので握り返して微笑んでいると、緊張した面持ちでミハイルが口を開いた。
「その・・・今日は隣で、こうして手を繋いで眠りたい」
「うん、そうしよう」
お互いぎゅっと手を握る力を込めていた。
「かわいい・・・この手を離したくない」
「ふふっ、私も」
「マール・・・」
「もー、このままだと食べ終わらないよ。一緒に寝るんでしょ」
お返しに、空いた手でミハイルの頬をつつくとその指を握られ、私達は両手が塞がってしまった。
「マール、僕は幸せだ」
「私も、幸せだよ」
まっすぐ目を合わせているのに、彼の瞳は不安気に揺れている。
(やっぱり私は・・・)
切なさを吐き出すように、ふっと笑ってミハイルの手を離した。
「このままだと、夜が明けちゃうよ」
「ああ、そうだな」
部屋に入ると手を引かれミハイルがベットに座った。
私を足の間に立たせると、ミハイルは見上げながらシャツのボタンをひとつずつ、ゆっくり外していく。
「今日はたくさん寄り道をしたんだな」
ボタンが外れ、肌が少しづつ露わになり、そこから漏れ出す色気に釘付けになっていた。
(これは・・・)
今日はミリアとクラリスとカフェに行ったことと、偶然アルノーに会ったことは伝えている。内容までは深く話していない。
(どれも、ミハイルに怒られそうだし・・・)
ボタンを外す指先から視線を外せないでいると、ミハイルはシャツを肩からするり落とす。
昨日よりも露出が多い肌に、直視ができないでいると手をグッと引かれる。
「おいで」
そのままミハイルを押し倒し、彼の上に跨った。
私を見上げながら無防備にベットに沈むミハイルの姿に、自分の支配欲が沸き起こる。
はだけた肌を見せると、首を傾け誘うように笑っている。
「ほら、好きだろう?」
この雰囲気に酔いしれそうになりながら、口角を上げると、ゾクリとした表情のミハイルを捉える。
食べ尽くしたい気持ちを抑え、ミハイルの胸に顔を埋めた。
ゆっくりと匂いを吸い込むと、もっとミハイルを、もっと強い香りを求めていた。
顔を擦り寄せて、胸板からお腹を吸う。
一緒に唇も這わせて、ミハイルのあたたかい肌の感覚をゆっくりと楽しむ。
「ミハイルってどこも綺麗だね。肌もすごく・・・いい」
彼の腹筋を指でそっと撫でると、ビクリと体が大きく揺れている。
顔を見ると口を押さえて真っ赤になっていた。
「ここは、ミハイルの香りが濃いんだよね」
ミハイルの体がビクビクと反応しているが、甘く笑いながら鎖骨から首を吸い込む。
まるで噛み付くように唇も這わせていく。少し汗ばむ肌から、熱くなった体温を吸い上げるように、香りを堪能する。
「ああ・・・たまらない・・・」
そこから真っ赤なままの耳、おでこ、瞼を優しく吸い込む。
「ふふっ、手繋いでいい?」
ミハイルが口を押さえていた手を絡ませ、ぎゅっと握る。
隠すものがなくて目が泳いでいるミハイルを見ながら、頬の香りを吸い込むと、ちゅっと唇を触れて離れた。
「はぁー・・・好き、だよ」
「僕の方が耐えられない」
手を絡めたまま、顔を両手で押さえている。
「ミハイルが誘ったのに」
「無理だ、心臓が痛い」
空いた手で無防備なミハイルの胸に触れると、心拍数がかなり早い。
「ふふっ」
次は私がシャツのボタンを外す。
ミハイルは指の隙間から、その姿をじっと見ていた。
全て外すとキャミソールが露わになる。
片方の肩を出すようにシャツを下ろすと、ミハイルを誘うようにゆっくり近づく。
「首、寂しくなっちゃった」
手が解かれると、ガバリと起き上がり首筋に歯が立てられる。
「ああっ・・・」
昨日よりも強く感じ、体がゾクゾクと震えながらも受け入れるように噛み付いているミハイルの頭を撫でた。
歯はどんどん沈んでいく。
「うっぁぁ・・・はぁっ」
そこからすぐに別の場所に歯が立てられる。
「ぁああっ・・・ああっ!」
「はあっ、はあっ、マール・・・」
ギラギラと輝く紫の瞳に、甘く微笑みかける。
「これでミハイルのもの、だね・・・」
また彼は両手で顔を隠し、倒れてしまった。
「もう、無理だ」
「ふふっ」
思い出したかのように、隠された顔の上にぽよんと胸を置いた。
ミハイルはすぐに手をどけると、顔でやわらかさを堪能している。昨日よりも肌との距離が近くなり、顔の感触を谷間で受け止める。
「毎日して欲しいもんね」
埋もれたまま頷いていた。
谷間から感じる熱い息に耐えながら、ミハイルが満足するのを待っている。
「ねえ、大丈夫?」
頷いているので、大丈夫みたいだ。
どんどん息が少なくなってきたので、ばっと離れると、真っ赤なミハイルがとてもいい顔をして目を瞑っている。
「はぁー、結婚してからも毎日して欲しい」
「気に入って貰えてなにより」
幸せを噛み締めて動き出さないので、彼のシャツのボタンを止め、私も整えた。
そこから退くと、ベットから立ち上がる。
ミハイルも起き上がると離れていく私を寂しそうに見ていた。
「マール・・・」
「またゆっくりね」
彼の頬をするりと撫でると、髪にキスを落とす。
また両手で顔を隠し、ベットで悶えているので、お風呂に入ってくることにした。
順番にお風呂から出ると、今日もカーディガンを着て、手を繋いで一緒に星を見上げる。
(一緒だったら、バルコニーに出ていいんだ・・・)
「マールは星を見るのが好きなのか」
「うん、今日はいつもより綺麗だなあ」
「ああ、綺麗だ」
ミハイルは私の瞳に見蕩れている。
「ふふっそんなに見つめないでよ」
「緑の瞳が、輝いてとても綺麗だ」
暗いので赤くなった顔はバレていないと思うが、隠すようにカーディガンの袖を匂う。
「そんなに好きなのか」
カーディガンで隠れた表情を見るかのように、髪を耳にかけられる。
「好きだよ」
「そう、か・・・」
月明かりが反射して伏せている長いまつ毛は、キラキラと透き通って見える。
(貴方がいちばん綺麗・・・)
「もうそろそろ寝よう、湯冷めする」
体が冷えていないか確かめるように頬を撫でる。その手に心地良さを感じていると、急にミハイルに手を引かれ部屋に戻った。
カーテンを閉めると、素早く抱き上げベットに向かう。
「ミハイル?」
「ああ、マールの隣で寝るのが楽しみでな」
「ふふっそうだね」
ゆっくりとベットに降ろされ、ソワソワしながら一緒に布団をかける。
ミハイルとはこうして毎日寝ていたのに、今ものすごく緊張している。
バクバクと動く心臓に、眠れるか不安でいると、隣にもっと緊張しているミハイルがいた。
思わず吹き出してしまう。
「あははっ、ミハイル、ソワソワし過ぎだよ。もー、ベットすごく揺れてる」
「ああ、どうしていいのか分からない」
「ほら、手を繋ぐんでしょ」
「そうだ」
愛おしい手に包まれると、緊張が解れた。
「ふふっ、あたたかい」
ミハイルも笑っていて、お互いの顔を見合せて笑う。
「これは寝れないな」
「私の魔力で眠らせようか?」
「マールの寝顔が見たい」
「わかったよ」
見つめあったまま寝るのが恥ずかしくなり、仰向けになる。
目を閉じているのに、視線を感じるのでチラリと横を見ると目が潤んでいるミハイルが目に入った。
慌てて横を向くと、ミハイルの顔を覗き込む。
「どうして、泣きそうなの?」
「この幸せが、ずっと続いたらと思って」
「貴方は消えないんでしょう?」
「ああ」
「ミハイルがいないと、困るよ」
「そうだな」
(ミハイルを失う人生なんて・・・)
あやすように頭を撫で、おでこ、瞼、頬にキスをすると、目を丸くする瞳からは涙が引っ込んでいた。
最後に唇にちゅっとキスをすると、そっと離れる。
「ミハイル、おやすみ」
「ああ・・・マール、おやすみ」
今度こそ目を閉じると、眠りについた。
(唇にして欲しい時は、私からすればいいんだ・・・)
夢の中で唇に柔らかい感触が当たる。
ぼんやり目を開けると愛しい彼がいた。
(ん・・・寝顔見てたのかな)
「ミハイル、愛してる」
「ふっ、またそんな顔をしている・・・夢であの僕と会えたと思っているんだろう・・・」
不安気なミハイルの顔を撫でると、甘く微笑む。
「夢じゃない」
「わかった、夢の続きを見てくれ」
包み込むように抱きしめられると、愛しい香りを吸い込み眠りについた。
このまま本当に結婚していいのか。
私の正直な気持ちを出せないまま、ぼんやりとしていると、ミハイルが帰ってきた気配がした。
バァンーーー
気が付くと部屋を飛び出して走っていた。
廊下の先でこちらに早足で向かってくるミハイルは、ものすごいオーラを出している。
(あれ、なんか怒ってる?)
仕事でなにかあったのかと思いながら、駆け寄ってくる私に驚いた顔をして立ち止まっているので、その胸に飛び込む。
「ミハイル、おかえり!」
会いたかったと言わんばかりに彼の胸に擦り寄る。
「マール・・・ただいま」
大切に抱きしめてくれる彼の手が心地いい。
(ミハイルだ・・・嬉しい)
頭を撫でられていると、急に体が軽くなる。
(あれ・・・この感覚は・・・)
そっと離れると、複雑そうに私の顔を見ている。
「その・・・撫でてくれ」
頭を近づけてくるので、抱きかかえるように撫でた。
「お仕事遅くまでお疲れ様」
甘く優しくたくさん撫でると、最後に髪にキスをする。
「なっ・・・」
先ほどのメラメラとしたオーラは消え、赤くなっているミハイルの頬をつつく。
「今日もいっぱい甘やかさないとね」
見つめていると、パッと目を逸らされる。
「すぐに夕飯の支度をしてくるから、少し待っていてくれ」
「私も一緒に作るよ」
「今日は下ごしらえしてあるから、すぐに出来るんだ。また呼びに来る」
ミハイルの顔が近付き、目を瞑ると頬に唇が触れた。
すぐに離れると、ミハイルはキッチンに向かってしまう。
その背中を見つめながら、昨日キスしたことを思い出す。
(きっと・・・あの時私が好きって言ったから、もう唇にはしてくれないのかな)
とびとぼと部屋に戻り、気になったことがあったので洗面所へ向かう。
(一緒に料理と言うよりもミハイルと・・・)
顔を上げ鏡を見ると、その表情は蕩けていてとても幸せそうだった。
もう苦しそうな顔をしていない自分の表情に、気付いてしまった。
今想っている貴方を、昔から変わらない幼なじみのミハイルが好きだと。
「ミハイル」
愛おしい幼なじみの名前を呼ぶと、緑の瞳が甘く輝いている。
「ミハイル」
ーーー私はまた、貴方に恋に落ちた。
「ミハイル・・・」
ピアス穴よりも指輪をしている手を見つめる。
「私は、貴方が・・・・・・」
(好きって言っても、ミハイルはまたあの顔をするんだろうな・・・)
私の気持ちは、信じてもらえないのだろうかと、不安に落ち込む気持ちで唇が触れた頬を撫でた。
目的を忘れ、輝いて見える指輪を甘く見つめていると、はっと我に返る。
(そういえば、首)
髪を横に流してうなじを見ると、歯型は消えていた。
(そんな・・・)
やはり先ほど体が軽くなったのは、ミハイルが回復魔法をかけたからだ。
(別にどこも怪我なんて・・・)
今日はアルノーのおかでげ怪我なく済んだが、それを知っていて・・・
(まさか・・・ね)
歯型が消えてしまった首を撫でながら部屋を出た。
ソファーに座り、高い天井を見つめる。
「はぁー、どうしたら・・・」
私も、今までミハイルを信じてこれていなかった。
毎日そばにいて、支えて、愛してくれていたのに。
(今更、都合が良すぎるよね・・・)
涙が出そうになるのを堪え、目を閉じていた。
抱き上げられてる感覚に、ぼんやりと目を開ける。
愛おしい顔に触れると、私を見て微笑んでいる。
「ミハイル・・・」
「まるで僕のことが好きだって顔をしているな」
「そうだよ」
「ふっ、お腹は減っているか?」
(やっぱり、信じてもらえない・・・)
「帰りにカフェで食べてきちゃったの」
「そうか、ちょうど今日は控えめにしてある」
食卓で今日あったとこを話していると、隣で食べているミハイルに見蕩れていた。
(こうして気を使わず一緒にいる時間、好きだな・・・)
私が食べる手を止めていたので、頬をつつかれる。
「もう、いらないのか?」
その手を掴んで頬にすり寄せていたら、手を握られるので握り返して微笑んでいると、緊張した面持ちでミハイルが口を開いた。
「その・・・今日は隣で、こうして手を繋いで眠りたい」
「うん、そうしよう」
お互いぎゅっと手を握る力を込めていた。
「かわいい・・・この手を離したくない」
「ふふっ、私も」
「マール・・・」
「もー、このままだと食べ終わらないよ。一緒に寝るんでしょ」
お返しに、空いた手でミハイルの頬をつつくとその指を握られ、私達は両手が塞がってしまった。
「マール、僕は幸せだ」
「私も、幸せだよ」
まっすぐ目を合わせているのに、彼の瞳は不安気に揺れている。
(やっぱり私は・・・)
切なさを吐き出すように、ふっと笑ってミハイルの手を離した。
「このままだと、夜が明けちゃうよ」
「ああ、そうだな」
部屋に入ると手を引かれミハイルがベットに座った。
私を足の間に立たせると、ミハイルは見上げながらシャツのボタンをひとつずつ、ゆっくり外していく。
「今日はたくさん寄り道をしたんだな」
ボタンが外れ、肌が少しづつ露わになり、そこから漏れ出す色気に釘付けになっていた。
(これは・・・)
今日はミリアとクラリスとカフェに行ったことと、偶然アルノーに会ったことは伝えている。内容までは深く話していない。
(どれも、ミハイルに怒られそうだし・・・)
ボタンを外す指先から視線を外せないでいると、ミハイルはシャツを肩からするり落とす。
昨日よりも露出が多い肌に、直視ができないでいると手をグッと引かれる。
「おいで」
そのままミハイルを押し倒し、彼の上に跨った。
私を見上げながら無防備にベットに沈むミハイルの姿に、自分の支配欲が沸き起こる。
はだけた肌を見せると、首を傾け誘うように笑っている。
「ほら、好きだろう?」
この雰囲気に酔いしれそうになりながら、口角を上げると、ゾクリとした表情のミハイルを捉える。
食べ尽くしたい気持ちを抑え、ミハイルの胸に顔を埋めた。
ゆっくりと匂いを吸い込むと、もっとミハイルを、もっと強い香りを求めていた。
顔を擦り寄せて、胸板からお腹を吸う。
一緒に唇も這わせて、ミハイルのあたたかい肌の感覚をゆっくりと楽しむ。
「ミハイルってどこも綺麗だね。肌もすごく・・・いい」
彼の腹筋を指でそっと撫でると、ビクリと体が大きく揺れている。
顔を見ると口を押さえて真っ赤になっていた。
「ここは、ミハイルの香りが濃いんだよね」
ミハイルの体がビクビクと反応しているが、甘く笑いながら鎖骨から首を吸い込む。
まるで噛み付くように唇も這わせていく。少し汗ばむ肌から、熱くなった体温を吸い上げるように、香りを堪能する。
「ああ・・・たまらない・・・」
そこから真っ赤なままの耳、おでこ、瞼を優しく吸い込む。
「ふふっ、手繋いでいい?」
ミハイルが口を押さえていた手を絡ませ、ぎゅっと握る。
隠すものがなくて目が泳いでいるミハイルを見ながら、頬の香りを吸い込むと、ちゅっと唇を触れて離れた。
「はぁー・・・好き、だよ」
「僕の方が耐えられない」
手を絡めたまま、顔を両手で押さえている。
「ミハイルが誘ったのに」
「無理だ、心臓が痛い」
空いた手で無防備なミハイルの胸に触れると、心拍数がかなり早い。
「ふふっ」
次は私がシャツのボタンを外す。
ミハイルは指の隙間から、その姿をじっと見ていた。
全て外すとキャミソールが露わになる。
片方の肩を出すようにシャツを下ろすと、ミハイルを誘うようにゆっくり近づく。
「首、寂しくなっちゃった」
手が解かれると、ガバリと起き上がり首筋に歯が立てられる。
「ああっ・・・」
昨日よりも強く感じ、体がゾクゾクと震えながらも受け入れるように噛み付いているミハイルの頭を撫でた。
歯はどんどん沈んでいく。
「うっぁぁ・・・はぁっ」
そこからすぐに別の場所に歯が立てられる。
「ぁああっ・・・ああっ!」
「はあっ、はあっ、マール・・・」
ギラギラと輝く紫の瞳に、甘く微笑みかける。
「これでミハイルのもの、だね・・・」
また彼は両手で顔を隠し、倒れてしまった。
「もう、無理だ」
「ふふっ」
思い出したかのように、隠された顔の上にぽよんと胸を置いた。
ミハイルはすぐに手をどけると、顔でやわらかさを堪能している。昨日よりも肌との距離が近くなり、顔の感触を谷間で受け止める。
「毎日して欲しいもんね」
埋もれたまま頷いていた。
谷間から感じる熱い息に耐えながら、ミハイルが満足するのを待っている。
「ねえ、大丈夫?」
頷いているので、大丈夫みたいだ。
どんどん息が少なくなってきたので、ばっと離れると、真っ赤なミハイルがとてもいい顔をして目を瞑っている。
「はぁー、結婚してからも毎日して欲しい」
「気に入って貰えてなにより」
幸せを噛み締めて動き出さないので、彼のシャツのボタンを止め、私も整えた。
そこから退くと、ベットから立ち上がる。
ミハイルも起き上がると離れていく私を寂しそうに見ていた。
「マール・・・」
「またゆっくりね」
彼の頬をするりと撫でると、髪にキスを落とす。
また両手で顔を隠し、ベットで悶えているので、お風呂に入ってくることにした。
順番にお風呂から出ると、今日もカーディガンを着て、手を繋いで一緒に星を見上げる。
(一緒だったら、バルコニーに出ていいんだ・・・)
「マールは星を見るのが好きなのか」
「うん、今日はいつもより綺麗だなあ」
「ああ、綺麗だ」
ミハイルは私の瞳に見蕩れている。
「ふふっそんなに見つめないでよ」
「緑の瞳が、輝いてとても綺麗だ」
暗いので赤くなった顔はバレていないと思うが、隠すようにカーディガンの袖を匂う。
「そんなに好きなのか」
カーディガンで隠れた表情を見るかのように、髪を耳にかけられる。
「好きだよ」
「そう、か・・・」
月明かりが反射して伏せている長いまつ毛は、キラキラと透き通って見える。
(貴方がいちばん綺麗・・・)
「もうそろそろ寝よう、湯冷めする」
体が冷えていないか確かめるように頬を撫でる。その手に心地良さを感じていると、急にミハイルに手を引かれ部屋に戻った。
カーテンを閉めると、素早く抱き上げベットに向かう。
「ミハイル?」
「ああ、マールの隣で寝るのが楽しみでな」
「ふふっそうだね」
ゆっくりとベットに降ろされ、ソワソワしながら一緒に布団をかける。
ミハイルとはこうして毎日寝ていたのに、今ものすごく緊張している。
バクバクと動く心臓に、眠れるか不安でいると、隣にもっと緊張しているミハイルがいた。
思わず吹き出してしまう。
「あははっ、ミハイル、ソワソワし過ぎだよ。もー、ベットすごく揺れてる」
「ああ、どうしていいのか分からない」
「ほら、手を繋ぐんでしょ」
「そうだ」
愛おしい手に包まれると、緊張が解れた。
「ふふっ、あたたかい」
ミハイルも笑っていて、お互いの顔を見合せて笑う。
「これは寝れないな」
「私の魔力で眠らせようか?」
「マールの寝顔が見たい」
「わかったよ」
見つめあったまま寝るのが恥ずかしくなり、仰向けになる。
目を閉じているのに、視線を感じるのでチラリと横を見ると目が潤んでいるミハイルが目に入った。
慌てて横を向くと、ミハイルの顔を覗き込む。
「どうして、泣きそうなの?」
「この幸せが、ずっと続いたらと思って」
「貴方は消えないんでしょう?」
「ああ」
「ミハイルがいないと、困るよ」
「そうだな」
(ミハイルを失う人生なんて・・・)
あやすように頭を撫で、おでこ、瞼、頬にキスをすると、目を丸くする瞳からは涙が引っ込んでいた。
最後に唇にちゅっとキスをすると、そっと離れる。
「ミハイル、おやすみ」
「ああ・・・マール、おやすみ」
今度こそ目を閉じると、眠りについた。
(唇にして欲しい時は、私からすればいいんだ・・・)
夢の中で唇に柔らかい感触が当たる。
ぼんやり目を開けると愛しい彼がいた。
(ん・・・寝顔見てたのかな)
「ミハイル、愛してる」
「ふっ、またそんな顔をしている・・・夢であの僕と会えたと思っているんだろう・・・」
不安気なミハイルの顔を撫でると、甘く微笑む。
「夢じゃない」
「わかった、夢の続きを見てくれ」
包み込むように抱きしめられると、愛しい香りを吸い込み眠りについた。
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そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
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