魔物と共にこの過酷な世界を生きる。

やまたのおろち

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1章

計画通り

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砂漠の頂点捕食者は全てを見下す。傲慢の化身だ。
おや?
餌が投げられてきた。これは…知らない生き物の肉だ。異物が入っているが、問題はないだろう。まあ、ありがたくいただく。

普通の生き物は、少しでも不審な点があれば例えどれだけ美味な物でも食べることはない。それは、魔物にももちろん当てはまる。
しかし、このワニは全てを見下していた。
これがマンティコアなら、キラーウルフなら、ブラッドタイガーなら、オークなら、ライオンなら、ゴブリンなら、食べることはなかった。

それが、敗因となったのだ。


「あのワニ、バカで助かった」

いや、バカではないのだろう。毒があることにも気づいていたはずだ。だが、奴は傲慢すぎた。下等生物がやることなんて、と脅威に思っていなかったのだろうな。だから食べてしまったのだ。俺が持つ全てのチュウトカゲの毒を混ぜたブラッドタイガーの肉を。

「!?◻︎△⚪︎△△⚪︎◻︎△⚪︎!!!」

ワニは悶える。跳ねる。暴れる。
この毒で死ぬことはないが…かなりのダメージにはなっているはずだ。
あ、メアリがゆっくりと後方に下がってる。なんだなんだ、もしかして怖くなっちゃった?

そして…

「隙だらけだ」

アーチャー職の男が1本1本強力な矢を放つ。ワニがあまりにも速すぎたせいで中々当たらなかった矢だが、ここでは思う存分火を吹く。

だが、傲慢だとはいえ歴戦の猛者だ。
ワニは悶えて跳ねて暴れるのをやめた。そして砂に潜る!

「ちょ、ちょっと!?」

狙いはアーチャーと僧侶だ。
このワニ、やっぱかなり賢い。

「ァァァ!!!!!」

ワニが砂と共に飛びかかる!咄嗟に彼らは防御耐性を取ったが、それだけで防げるほどこのワニの怒りは甘くない。

砂が鮮血に染まる。しかし、彼らは気絶だけで済んだ。

メアリが、彼らの盾となったからだ
メアリがワニに頭突きして吹っ飛ばす。
「ッッ!」
こうなると思った、後方に下がってて正解だった?

「俺が甘かった。ごめんなさい!」

おっと、それよりもワニはどうなった?
あ、いた。ワニだ。かなり苦しそう。これは勝負ありか?

睨まれた。やばい、こっち来てる。
だが、満身創痍なようであの爆速ゴキブリカサカサみたいな動きはしなくなった。だが…被害はこちらの方にもかなり出ている。

野良冒険者パーティー、オリオン、そして最高戦力のメアリは戦闘不能。

「ブライガーはまだ元気そうだが…」
「ニャン」

だめだ、この猫じゃダメだ。
おそらく、あと1撃で勝負が決まる。
ブライガーが攻撃を当てるか、それともワニが攻撃を当てるか。
その賭けに負けた場合、代償は俺の命。あと仲間たち。

「人生はギャンブルともいうけどこれは流石に撤……おや」

あれは。

「70日後に死ぬワニめ、こっちだ!」

ブライガーに乗ってワニの気を逸らす。あのワニ、やっと脅威だと認識したようで俺だけに注目をしている。

「お前、やっぱりバカなワニだったよ」

上空から高速でやってきたのは、重症者を運び終え、戦場に戻ってきたキジクジャクだった。

「ツクツク!」

緑の彗星がワニに向かって降り注ぐ!
最強の捕食者かつ頂の大愚者はついに倒れた。

「計画通り!」



場面は打って変わってここは病院。

「あぁ、君やな。あの砂漠鰐はどうなったん?」

「それがあとちょっとのところで逃げられちゃったよ…いやはや、残念ですな」
嘘だけど

「そうなんや…ほなら、ギルドからの報酬は全額は出なさそうやなぁ」

「命が助かっただけマシですよ、アガス。まずは、生きて帰ってきたことを喜びませんか?」

さっきから思ってたんだけど、僧侶がタメ口で魔法使いが敬語なんだよね、これが神職者の現実か…

どうやら、戦士がアガス、僧侶がサフン。弓使いがハリム、魔法使いがアリサって名前らしい。

「ところで、名前だけお伺いしても?」

「俺の名前はミナト、魔物使いだよ」

「ミナト殿、感謝する。おそらくあなたがいなければ死んでいた」

俺もやっと感謝される身になったか。いや、今までがおかしかったんだよ。なんで異世界召喚された勇者なのに国には冷遇されるわヒロインはカメだわ国を亡命するわとかしなくちゃいけないんだよそこらへんなにを考えて

「あ、そうや。君、うちのパーティーに入らへん?」

アガスは頬を掻きながらそんなことを言ってきた。パーティーか。

「ん?」

パーティか!そうそうこれだよ、異世界召喚ものってパーティー組まないとダメでしょ。

「では…「あの砂漠鰐の討伐もあなたがいなければできなかった。あなたは俺たちのパーティーに必要だ」


あ、砂漠鰐。
砂漠鰐仲間にしたけど逃したって体で嘘ついてるんだった。もし砂漠鰐仲間にしたって言ったら絶対あの人たち怒るもん。倒したら全額報酬もらえたのに!って

今パーティーに入るのはまずいな…

「すみませんが、今は自分の実力不足を痛感している身です。あの砂漠鰐を俺たちで倒せるほどの強さになったら、また、入らせてください」

焦りすぎて敬語になっちゃった。

「そうですか、残念ですね…でも!私たちはこの街を拠点にしているのでもし考えが変わったならまたここに来てください、いつでも歓迎しますから!」

白い髪を揺らしながらアリサさんがそう言ってきた。やばい、すごい後ろめたいです…

「では失礼します」

俺は病院を出て…砂漠鰐のファラクを出した。

「すげええええええええ!!高速移動だ!!!!」

ほんとにね、このワニすごいのよ。
陸上最速かも。
砂に半分だけ体をうずめてそこを泳いでる感じ。

ちなみに、仲間の魔物たちはとっくに回復している。魔物って自然治療みたいな効果をデフォルトで持ってたりするのかな。そして今俺はどこに向かってるかというと…

「死にたいやつからかかってきな!」

仲間5体と共に砂漠で素材稼ぎをしている。サソリの尻尾やマミーの包帯などだ。

「チュウトカゲの毒がもうないからなんかの毒が欲しいんだけどな」

そう、ファラク戦でチュウトカゲの毒を使い切ってしまったのだ。なので代わりとなる毒を集めたいのだが…

「サソリは毒持ってるけど液体じゃない、蛇はそもそもここのやつら毒持ってない…」

改めてさ、チュウトカゲの毒の優良物件さを思いしったよな。だがここに稀にオオトカゲが出現すると聞いた。ほらあれだよ、ブラッドタイガー枠。

オオトカゲを仲間にするのもいいんだよね。戦闘もそこそこできるみたいだし、毒用員としてめちゃくちゃ優秀だ。

「だが、そのためにはいい品質の魔物杖が必要だ」
「ニャン」

ブライガーが肯定した。ブライガーは蛇ばっかと戦っている。ブライガーは鉄分のある血を好むらしいのでサソリはあまり好きじゃないらしい。血を流さないマミーは論外だ。


「とりあえず、金を集めてさっさと魔物杖を買うとしよう」

確か、16体収納できるやつが100銀貨で売られていた。まずはそれまで貯めなければ。


そして大量に魔物を狩ってるせいか、俺たちのレベルがどんどん上がっている。

メアリのレベルは46、オリオンは35、ブライガーは37、キジクジャクは33、ファラクは71。

流石にファラクほどの高レベルになると中々レベルも上がりづらくなるらしい。
そうそう、ファラクといえば地面を泳いで高速移動以外にもやはりあの初見殺し技もできるみたいだ。

「あのー、あれだよ。地面から飛び出して奇襲攻撃をするやつ」

今までの奇襲攻撃はバレてしまう可能性がそこそこあったが、こちらは極めて少ない。

砂漠鰐って、いいね!
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