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第三十三話 狂
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「これでお話がし易くなりましたわね。タルト」
見渡す限り細く赤い棘が生えている公園の中で、オレと赤髪の場所を結んだ直線だけ棘がなくなっていた。
「……お前、何のつもりだ」
「想像出来ているんじゃなくて? 私《わたくし》はただ、その通りだと言っておきますわね」
「——っ!」
やっぱりこいつはそうなんだ。本当にオレの姉なのか?
「貴方だけ拘束しなかった理由は単純ですわ。私《わたくし》はただこの時を楽しみにしていましたのよ。だからもっと、もっと貴方の力を私《わたくし》に見せなさい」
「そうかよ。それなら望み通りに、ちゃんと殺してやる」
「あらあら、心地良い殺気だわ。うふふ、そうよね。早く私《わたくし》の事が殺したくて堪らないのでしょう? タルト」
「黙れっ!」
魔装具のおかげでダメージなんてものはない。
そもそもさっきの奇襲は確実に当てるためにあまりにも広範囲だった。その分、棘の一つ一つに使われた血液量は少なく、それはイコールで威力の減少に繋がった。
涼樹が拘束されている今の状況は、さっきまでより不利になったように見えるが、実際のところは然程変わりない。
涼樹の事は奴と戦う上で重要な戦力だと思っている。過小評価なんてしていない。
だけど、涼樹を拘束する事で今の赤髪は大幅に弱体化しているんだ。
血を操る魔術。それはあくまでも操るだけであって、血液量を増やしているわけではない。
人間は出血し過ぎれば死ぬ。それは魔術師だって同じだ。つまり、奴の武器である血には最大値が存在している。
涼樹みたいな肉体派を拘束するために必要な血液量は決して少なくない。つまり、オレと戦う際に使える血の量は明らかに減るはずだ。
殺す。
この場で確実に殺す。
そうしないと、早く殺さないと——
いや……任務のために殺すんだ。
「あらあら、その程度なのかしら?」
「喋るな臭い!」
展開はさっきまでとほとんど変わらない。
赤髪の周囲を動き続けながら、ありとあらゆる方向から鎖を叩き付ける。同じように全て防がれてしまうものの、明らかに攻撃の手が少ない。
最初は血刃が六本あったというのに、涼樹を拘束するのに使っている血以外を回収しているけど、今はたったの二本しかない。とはいえ、数が減った分一本一本の精度が高いか。
減った本数とは違い、手数は半分くらいだな。
(やれる。確実に殺せる!)
致死量ではないにしろ。大量の血液を体外に出している事に変わりはない。武器を増やせば増やすほどに体内の血液が減り、それはパフォーマンスへと影響する。
反応が悪くなっている。このまま続けていれば確実に殺せる。
「あらあら、殺意が増していますやね。そんなにも私《わたくし》を、塔怪瑠海を殺したいのですわね」
「黙れっ!」
「タルト! 挑発に乗るな!」
奴の言葉にオレは進む方向を変えた。その行動に涼樹が叫ぶけれど、気にしていられない。
今はただ、一秒でも早くこいつを殺してやりたいんだ。
奴が余計な事を言うより早く、言葉を奪ってやる。
鎖を引き寄せるとその場で回転しながら大きく振るった。
——左腕を。
「甘——っ!?」
余裕の笑みを浮かべて血盾を張る赤髪。その目が広がった。
「くっ」
ここまでずっと動かずに戦っていた赤髪がついに動いた。慌てた様子で後ろに跳んだ奴はバランスを崩し、ふらついた。
「死ね!」
その隙を狙って右腕を振るい鎖を操る。狙いは頭だ。その頭蓋骨をカチ割ってやる!
「甘いですわ!」
腕を前に突き出して血盾を張る赤髪。
思念だけでなく、腕を使っての血の制御! 弱っている証拠だ!
これだけの血を武器に変えた状態で跳んだんだ。体調最悪だろうな!
「オマエがな」
オレは女王の道具として何度も戦って来た。小悪党共だったり、化け物だったり、相手は色々だ。同格や格上との経験だってある。
つまり、オレとお前じゃ戦闘経験に差があり過ぎるんだよ。
今のは囮だ。正面に血盾を張った事でオレの姿が見えなくなっただろ? 自ら死角を増やしてくれてありがとな。
「——っ!?」
今までの動きは最速じゃない。だからこの瞬間、背後に現れるだなんて想定外だろう。
赤髪はオレに気が付いたみたいだが、もう遅い。
これで斬って終わりだ。
確かにオレはいつも鎖を使っている。だけどオレの武器は鎖じゃない。
オレの武器。それは鎖鎌だ。
「じゃあな」
左袖から出した鎌で赤髪の首を斬り落とそうとした瞬間、脳裏に浮かんだ思考。
(ここでこいつを殺せば、塔怪瑠海が死んだ事に出来る!)
そう思った瞬間、身体が硬直した。
涼樹の中で塔怪瑠海はオレではなく、こいつだ。
経験でわかる。こいつは悪だ。オレの両親と同じ悪だ。
ここで死ぬべき存在だ。
だけど……だけど……だけど……それで、本当に良いのか?
オレは知ってしまった。この目で見てしまった。
——涼樹の瑠海《オレ》に対する殺意を。
どうなる? これからどうなる?
瑠海《オレ》は死んだ事にして、タルトとしてこれからも側に?
本当に?
それは……悪じゃないか?
「タルト!」
声が聞こえる。
出会って一か月だけど、随分と耳に馴染んだ声。涼樹の声だ。
「りょぉ、き……」
ああ、駄目だ。
これは……耐えられない。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
☆ ★ ☆ ★
見渡す限り細く赤い棘が生えている公園の中で、オレと赤髪の場所を結んだ直線だけ棘がなくなっていた。
「……お前、何のつもりだ」
「想像出来ているんじゃなくて? 私《わたくし》はただ、その通りだと言っておきますわね」
「——っ!」
やっぱりこいつはそうなんだ。本当にオレの姉なのか?
「貴方だけ拘束しなかった理由は単純ですわ。私《わたくし》はただこの時を楽しみにしていましたのよ。だからもっと、もっと貴方の力を私《わたくし》に見せなさい」
「そうかよ。それなら望み通りに、ちゃんと殺してやる」
「あらあら、心地良い殺気だわ。うふふ、そうよね。早く私《わたくし》の事が殺したくて堪らないのでしょう? タルト」
「黙れっ!」
魔装具のおかげでダメージなんてものはない。
そもそもさっきの奇襲は確実に当てるためにあまりにも広範囲だった。その分、棘の一つ一つに使われた血液量は少なく、それはイコールで威力の減少に繋がった。
涼樹が拘束されている今の状況は、さっきまでより不利になったように見えるが、実際のところは然程変わりない。
涼樹の事は奴と戦う上で重要な戦力だと思っている。過小評価なんてしていない。
だけど、涼樹を拘束する事で今の赤髪は大幅に弱体化しているんだ。
血を操る魔術。それはあくまでも操るだけであって、血液量を増やしているわけではない。
人間は出血し過ぎれば死ぬ。それは魔術師だって同じだ。つまり、奴の武器である血には最大値が存在している。
涼樹みたいな肉体派を拘束するために必要な血液量は決して少なくない。つまり、オレと戦う際に使える血の量は明らかに減るはずだ。
殺す。
この場で確実に殺す。
そうしないと、早く殺さないと——
いや……任務のために殺すんだ。
「あらあら、その程度なのかしら?」
「喋るな臭い!」
展開はさっきまでとほとんど変わらない。
赤髪の周囲を動き続けながら、ありとあらゆる方向から鎖を叩き付ける。同じように全て防がれてしまうものの、明らかに攻撃の手が少ない。
最初は血刃が六本あったというのに、涼樹を拘束するのに使っている血以外を回収しているけど、今はたったの二本しかない。とはいえ、数が減った分一本一本の精度が高いか。
減った本数とは違い、手数は半分くらいだな。
(やれる。確実に殺せる!)
致死量ではないにしろ。大量の血液を体外に出している事に変わりはない。武器を増やせば増やすほどに体内の血液が減り、それはパフォーマンスへと影響する。
反応が悪くなっている。このまま続けていれば確実に殺せる。
「あらあら、殺意が増していますやね。そんなにも私《わたくし》を、塔怪瑠海を殺したいのですわね」
「黙れっ!」
「タルト! 挑発に乗るな!」
奴の言葉にオレは進む方向を変えた。その行動に涼樹が叫ぶけれど、気にしていられない。
今はただ、一秒でも早くこいつを殺してやりたいんだ。
奴が余計な事を言うより早く、言葉を奪ってやる。
鎖を引き寄せるとその場で回転しながら大きく振るった。
——左腕を。
「甘——っ!?」
余裕の笑みを浮かべて血盾を張る赤髪。その目が広がった。
「くっ」
ここまでずっと動かずに戦っていた赤髪がついに動いた。慌てた様子で後ろに跳んだ奴はバランスを崩し、ふらついた。
「死ね!」
その隙を狙って右腕を振るい鎖を操る。狙いは頭だ。その頭蓋骨をカチ割ってやる!
「甘いですわ!」
腕を前に突き出して血盾を張る赤髪。
思念だけでなく、腕を使っての血の制御! 弱っている証拠だ!
これだけの血を武器に変えた状態で跳んだんだ。体調最悪だろうな!
「オマエがな」
オレは女王の道具として何度も戦って来た。小悪党共だったり、化け物だったり、相手は色々だ。同格や格上との経験だってある。
つまり、オレとお前じゃ戦闘経験に差があり過ぎるんだよ。
今のは囮だ。正面に血盾を張った事でオレの姿が見えなくなっただろ? 自ら死角を増やしてくれてありがとな。
「——っ!?」
今までの動きは最速じゃない。だからこの瞬間、背後に現れるだなんて想定外だろう。
赤髪はオレに気が付いたみたいだが、もう遅い。
これで斬って終わりだ。
確かにオレはいつも鎖を使っている。だけどオレの武器は鎖じゃない。
オレの武器。それは鎖鎌だ。
「じゃあな」
左袖から出した鎌で赤髪の首を斬り落とそうとした瞬間、脳裏に浮かんだ思考。
(ここでこいつを殺せば、塔怪瑠海が死んだ事に出来る!)
そう思った瞬間、身体が硬直した。
涼樹の中で塔怪瑠海はオレではなく、こいつだ。
経験でわかる。こいつは悪だ。オレの両親と同じ悪だ。
ここで死ぬべき存在だ。
だけど……だけど……だけど……それで、本当に良いのか?
オレは知ってしまった。この目で見てしまった。
——涼樹の瑠海《オレ》に対する殺意を。
どうなる? これからどうなる?
瑠海《オレ》は死んだ事にして、タルトとしてこれからも側に?
本当に?
それは……悪じゃないか?
「タルト!」
声が聞こえる。
出会って一か月だけど、随分と耳に馴染んだ声。涼樹の声だ。
「りょぉ、き……」
ああ、駄目だ。
これは……耐えられない。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
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