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エピローグ
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何処の国にも所属していない大地。
管理者のいない道を二人の少女が歩いていた。
旅人にしては軽装だが、二人とも大きなカバンを背負っていて、その姿は少しアンバランスだった。
「いやー、先輩と会うのも久し振りっスね!」
「そうだね。もう……三ヶ月?」
「それに頼まれたこれ、絶対に先輩のオーダーっスよね」
背負ったカバンを指差しながらそう言うショートカットの少女。
「うん。先輩は猫ちゃんだからね」
「あ、それチクってやろー」
「え、ダメ。やめて」
「いやっスよー」
「わっ、待って」
突然走り出した相方を追いかけるハーフアップの少女。
一人は楽しそうに、一人は困ったように、対照的な表情を浮かべて走る二人の前に、複数の人影が現れた。
「おーお嬢ちゃんたち、随分と大きな荷物だな。重いだろ? ここにおいていけよ」
ぼろぼろの服装と同じく刃毀れの目立つ剣や槍を持った男が九人。その中でも一番ガタイの良い男がニヤニヤとした笑みを浮かべながら言う。
そんな男たちに向かってあからさまに嫌な顔を見せる少女たち。
「うわー、汚いっスねー。この場合は何スかね。山賊? 海賊? 道賊っスね!」
「ねえ、オマエらじゃま。今なら許す消えろ」
笑いながら失礼な事を言う少女と、淡々とした感情の込められていない言葉を放つ少女。
そんな姿に、怒りを示す男たち。
「大人を舐めるなよクソガキ共!」
「アップルは何もしなくていい。こいつらはカップが抜く」
「おっけー。よろっスー」
「ふざけ——」
男たちが叫びながら各々の武器を振り上げようとした瞬間、九つの爆発音が鳴り響いた。
「遅い。遅過ぎる」
冷めた視線を倒れた男たちへと降り注がせた少女、カップの手には突撃銃《アサルト》が握られており、銃口からは一筋の煙が立ち上っていた。
「うわ、腰撃ち連射で頭撃《ヘッショ》ち九連とかやば過ぎっス。流石にうちもこれには引きレベルマシマシのドン引きっス」
「的が大きい。距離もちょうどよかった。でも全てはカップの才能。ドヤァ」
「無い胸を張るカップは今日も可愛いスねー」
「撃つよ」
輝きを失った瞳と共に銃口を向けたカップ。向けられた側であるアップルは両手を上げて降参していた。
「冗談っスよ。カップは器が大きいっスからね。……胸は小さいけど」
「撃つ」
「あははははっ!」
逃げ出したアップルを追い掛けながら、走り撃ちをするカップ。
明らかにマガジンのサイズからしてあり得ない数の弾幕が展開される中、一発として命中する事はなかった。
「当たんないっスよー。照準《エイム》弱々っスねー」
「ああああああっ!」
「あははははっ!」
再び走り出した二人の少女。その道中では何度も銃撃音が鳴り響いていた。
☆ ★ ☆ ★
場所はピーチの部屋。
オレは今回得た情報を早速彼女の共有していた。
「なるほど、タルトのお母さんとお姉さんが」
「高確率で魔装具は母様が持ち込んだ技術と魔術、その二つを融合させたものだ」
「うん。アタシも同意見かな。魔術文化のないこの国で魔装具っていう名前には少し違和感があったから。答え合わせになったかも」
魔装具を展開する際に使っている力は、ホムラフェルファにおいて魔力と呼ばれている。
だけどこの国では意志の力と表現していた。
「まさかこんな形で任務が進展するなんてね。何か手伝う?」
「いや良い。涼樹と組めばどうにかなるだろ」
「……ふーん、仲良いね」
「友達だからな」
「……ふーん」
なんだこいつ。その探るような目はやめろ。イラっとするんだけど?
いつもなら正直にそう言っていたけど今日はそんな気分にならず黙っていると、ピーチはふっと微笑んで頷いた。
「うん、それじゃあ任せようかな」
「おう。ピーチはペスカトーレ早よ」
「それはもうすぐ用意できる予定!」
「具体的には?」
「……三週間後」
「おっそ」
ジト目を向けるオレから気まずそうに視線を逸らすピーチ。
ただまあ、確かに三週間後は長いけど、予定が決まっただけでも良い事だな。
「まあ報告する事はこれくらいだな。どうせまた狙われるだろうし、こっちから動かなくても情報から来てくれるだろうな」
「そうだね。でも本当に平気? 家族、でしょ?」
「オレの中じゃもう家族の縁切ったから平気。それに血の繋がりのない姉がいるしな。家族は十分だよ」
「……誰?」
首を傾げて疑問符を浮かべているピーチ。
こいつ……一発殴ってやろうか? まあでも、ピーチだもんな。
「本当にわからない?」
「うん、わからない」
ため息を一つ。
その後、身体の向きを逸らしながら口にした。
「オマエだよ」
「ええっ!? タルトがデレた!?」
「サービスだサービス。嬉しいか?」
「うんっ嬉しい! タルト好きー」
満面の笑みを輝かせながらオレへと飛び付き、ソファーに押し倒してくるピーチ。
「ちょっ、やめ、やめろーっ!」
「タルトー可愛いー」
オレの頭を抱き抱え、ぐりぐりと押し付けて来るピーチ。
撫照より大きな膨らみで呼吸が! 息が! 酸素ーっ!
我ながら素直になった自覚はある。
まあ、今までが捻くれていたというか……正直人として終わってたからな。
両親が思っていた以上に悪党だってわかったし、任務の達成に近付く事も出来た。
任務が終わればオレたちはこの国を去る。
……出来る事なら、みんなを裏切るのはそういう形が良いな。
争わず、ただ消える。
そして、良い思い出だけを残したいんだ。
オレはタルト・ドルマーレ。
王女はもういない。
オレは一人の、ただの人間だ。
管理者のいない道を二人の少女が歩いていた。
旅人にしては軽装だが、二人とも大きなカバンを背負っていて、その姿は少しアンバランスだった。
「いやー、先輩と会うのも久し振りっスね!」
「そうだね。もう……三ヶ月?」
「それに頼まれたこれ、絶対に先輩のオーダーっスよね」
背負ったカバンを指差しながらそう言うショートカットの少女。
「うん。先輩は猫ちゃんだからね」
「あ、それチクってやろー」
「え、ダメ。やめて」
「いやっスよー」
「わっ、待って」
突然走り出した相方を追いかけるハーフアップの少女。
一人は楽しそうに、一人は困ったように、対照的な表情を浮かべて走る二人の前に、複数の人影が現れた。
「おーお嬢ちゃんたち、随分と大きな荷物だな。重いだろ? ここにおいていけよ」
ぼろぼろの服装と同じく刃毀れの目立つ剣や槍を持った男が九人。その中でも一番ガタイの良い男がニヤニヤとした笑みを浮かべながら言う。
そんな男たちに向かってあからさまに嫌な顔を見せる少女たち。
「うわー、汚いっスねー。この場合は何スかね。山賊? 海賊? 道賊っスね!」
「ねえ、オマエらじゃま。今なら許す消えろ」
笑いながら失礼な事を言う少女と、淡々とした感情の込められていない言葉を放つ少女。
そんな姿に、怒りを示す男たち。
「大人を舐めるなよクソガキ共!」
「アップルは何もしなくていい。こいつらはカップが抜く」
「おっけー。よろっスー」
「ふざけ——」
男たちが叫びながら各々の武器を振り上げようとした瞬間、九つの爆発音が鳴り響いた。
「遅い。遅過ぎる」
冷めた視線を倒れた男たちへと降り注がせた少女、カップの手には突撃銃《アサルト》が握られており、銃口からは一筋の煙が立ち上っていた。
「うわ、腰撃ち連射で頭撃《ヘッショ》ち九連とかやば過ぎっス。流石にうちもこれには引きレベルマシマシのドン引きっス」
「的が大きい。距離もちょうどよかった。でも全てはカップの才能。ドヤァ」
「無い胸を張るカップは今日も可愛いスねー」
「撃つよ」
輝きを失った瞳と共に銃口を向けたカップ。向けられた側であるアップルは両手を上げて降参していた。
「冗談っスよ。カップは器が大きいっスからね。……胸は小さいけど」
「撃つ」
「あははははっ!」
逃げ出したアップルを追い掛けながら、走り撃ちをするカップ。
明らかにマガジンのサイズからしてあり得ない数の弾幕が展開される中、一発として命中する事はなかった。
「当たんないっスよー。照準《エイム》弱々っスねー」
「ああああああっ!」
「あははははっ!」
再び走り出した二人の少女。その道中では何度も銃撃音が鳴り響いていた。
☆ ★ ☆ ★
場所はピーチの部屋。
オレは今回得た情報を早速彼女の共有していた。
「なるほど、タルトのお母さんとお姉さんが」
「高確率で魔装具は母様が持ち込んだ技術と魔術、その二つを融合させたものだ」
「うん。アタシも同意見かな。魔術文化のないこの国で魔装具っていう名前には少し違和感があったから。答え合わせになったかも」
魔装具を展開する際に使っている力は、ホムラフェルファにおいて魔力と呼ばれている。
だけどこの国では意志の力と表現していた。
「まさかこんな形で任務が進展するなんてね。何か手伝う?」
「いや良い。涼樹と組めばどうにかなるだろ」
「……ふーん、仲良いね」
「友達だからな」
「……ふーん」
なんだこいつ。その探るような目はやめろ。イラっとするんだけど?
いつもなら正直にそう言っていたけど今日はそんな気分にならず黙っていると、ピーチはふっと微笑んで頷いた。
「うん、それじゃあ任せようかな」
「おう。ピーチはペスカトーレ早よ」
「それはもうすぐ用意できる予定!」
「具体的には?」
「……三週間後」
「おっそ」
ジト目を向けるオレから気まずそうに視線を逸らすピーチ。
ただまあ、確かに三週間後は長いけど、予定が決まっただけでも良い事だな。
「まあ報告する事はこれくらいだな。どうせまた狙われるだろうし、こっちから動かなくても情報から来てくれるだろうな」
「そうだね。でも本当に平気? 家族、でしょ?」
「オレの中じゃもう家族の縁切ったから平気。それに血の繋がりのない姉がいるしな。家族は十分だよ」
「……誰?」
首を傾げて疑問符を浮かべているピーチ。
こいつ……一発殴ってやろうか? まあでも、ピーチだもんな。
「本当にわからない?」
「うん、わからない」
ため息を一つ。
その後、身体の向きを逸らしながら口にした。
「オマエだよ」
「ええっ!? タルトがデレた!?」
「サービスだサービス。嬉しいか?」
「うんっ嬉しい! タルト好きー」
満面の笑みを輝かせながらオレへと飛び付き、ソファーに押し倒してくるピーチ。
「ちょっ、やめ、やめろーっ!」
「タルトー可愛いー」
オレの頭を抱き抱え、ぐりぐりと押し付けて来るピーチ。
撫照より大きな膨らみで呼吸が! 息が! 酸素ーっ!
我ながら素直になった自覚はある。
まあ、今までが捻くれていたというか……正直人として終わってたからな。
両親が思っていた以上に悪党だってわかったし、任務の達成に近付く事も出来た。
任務が終わればオレたちはこの国を去る。
……出来る事なら、みんなを裏切るのはそういう形が良いな。
争わず、ただ消える。
そして、良い思い出だけを残したいんだ。
オレはタルト・ドルマーレ。
王女はもういない。
オレは一人の、ただの人間だ。
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