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サボテンです。
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たん、たん、たん、と外階段を上がる音が聞こえる。サボテンの胸は高鳴る。紛れもなくこの音は雉真匠の足音だと知っているからだ。
ちなみに隣の202号室の人はどん、どん、どん。その隣の203号室はてとん、てとん、てとん。205号室はほぼ足音がしない。サボテンは2階の住人の足音を聞き分けられるようになっていた。実際に見たことはないので、顔や声などは知らないが。
外はもう夕焼けが闇に溶けようとしているところだった。帰ってきたら何て話そう、まずはお疲れ様かな。外はもう寒そうだから寒かったでしょ、ほらストーブであったまって。とか。私が動けたら帰ってくる前に部屋をストーブで暖めておくのに…
そんなことを考えているうちに玄関のドアがガチャガチャと鳴った。何度か鳴るうちにドアがようやく開く。雉真匠はここのドアの鍵を開けるのが下手なのだ。基本的に器用なほうなのでここの鍵がおかしいのだとサボテンは睨んでいる。
「ただいまーー」
スーツ姿の雉真匠が靴を脱ぎながら入ってくる。安堵と疲れが混じったその声を聞くとサボテンはさっきよりもどこか緑色が増し、トゲがピンと立っているように見えなくも、ない。
「うー、さむっ。ストーブストーブ~」
ピッとストーブのスイッチを押すと可愛らしいメロディが流れる。このメロディを聞くのがサボテンは好きなのだ。
「げっ、灯油ないのかよ…」
でも雉真匠はこのメロディが流れるととてもめんどくさそうにする。サボテンは、私が代わりに入れてあげれたらいいのに…と思う。
スーツのまま、また灯油缶を持って玄関に戻っていく雉真匠。
雉真匠は24歳の男性、社会人である。
仕事は会社に勤めている。その会社には毎日スーツで通っていて、電車で15分のところにある。帰り道に人気のケーキ屋さんでシュークリームを買ってくることもある。そう、雉真匠は甘いお菓子が大好きなのだ。
平日は仕事、休日は部屋にいてゴロゴロすることもあれば掃除をしたり洗濯をしたり、オシャレに着替えて友達と遊びに行くこともしばしばである。
そして毎日私に水をやることを日課にしている。
サボテンがどうしてやたら雉真匠についてよく知っているのかというと、よく言うサボテンの神秘的な力、ではなく、サボテンが雉真匠のことを好きだからである。時に「好き」という感情は驚異的な情報収集力を持つことがある。時にやりすぎることで犯罪めいてしまうこともあるが、そこはサボテンの身なので心配することはない。その点ではサボテンはサボテンであって良かったと思っているのだ。
ストーブをつけ、部屋着に着替えてテレビをつける。一連の流れを終えると雉真匠はサボテンのいる窓のカーテンを閉めた。
「さーぼーぼ、元気だったか?」
サボテンは雉真匠に「さぼぼ」と名前をもらっている。さぼぼ。女か男かよく分からない名前だが、雉真匠がつけてくれた名前に違いないのでサボテンは喜んで受け入れている。
目の前に雉真匠の顔があり、照れと嬉しさでついニヤついてしまう。サボテンなので口はないのだが。トゲが気持ちとろんと柔らかくなったように見える。
雉真匠の顔は控えめに言ってかっこいい。坂口健太郎と天沢聖司を足してふんわり混ぜてバニラエッセンスを垂らし、優しく焼き上げたようにかっこいい。
色黒という訳ではない。これはサボテンの思考が少し暴走してしまった表現なのだ。
とりあえず、かっこいいってことだけ伝わっていればいい。
「俺はさー、ちょっと仕事疲れちゃったよ。上司は働かないし、部下はチャラチャラしてるしさ…」
うんうん、とサボテンは耳を傾けている。耳はないんだけど。
「あっ!昨日買ってたプリンがあるんだった!」
雉真匠は嬉しそうに冷蔵庫の元へ行ってしまう。サボテンはちょっぴり寂しい。雉真匠はプリンも大好物なのだ。
ちなみに隣の202号室の人はどん、どん、どん。その隣の203号室はてとん、てとん、てとん。205号室はほぼ足音がしない。サボテンは2階の住人の足音を聞き分けられるようになっていた。実際に見たことはないので、顔や声などは知らないが。
外はもう夕焼けが闇に溶けようとしているところだった。帰ってきたら何て話そう、まずはお疲れ様かな。外はもう寒そうだから寒かったでしょ、ほらストーブであったまって。とか。私が動けたら帰ってくる前に部屋をストーブで暖めておくのに…
そんなことを考えているうちに玄関のドアがガチャガチャと鳴った。何度か鳴るうちにドアがようやく開く。雉真匠はここのドアの鍵を開けるのが下手なのだ。基本的に器用なほうなのでここの鍵がおかしいのだとサボテンは睨んでいる。
「ただいまーー」
スーツ姿の雉真匠が靴を脱ぎながら入ってくる。安堵と疲れが混じったその声を聞くとサボテンはさっきよりもどこか緑色が増し、トゲがピンと立っているように見えなくも、ない。
「うー、さむっ。ストーブストーブ~」
ピッとストーブのスイッチを押すと可愛らしいメロディが流れる。このメロディを聞くのがサボテンは好きなのだ。
「げっ、灯油ないのかよ…」
でも雉真匠はこのメロディが流れるととてもめんどくさそうにする。サボテンは、私が代わりに入れてあげれたらいいのに…と思う。
スーツのまま、また灯油缶を持って玄関に戻っていく雉真匠。
雉真匠は24歳の男性、社会人である。
仕事は会社に勤めている。その会社には毎日スーツで通っていて、電車で15分のところにある。帰り道に人気のケーキ屋さんでシュークリームを買ってくることもある。そう、雉真匠は甘いお菓子が大好きなのだ。
平日は仕事、休日は部屋にいてゴロゴロすることもあれば掃除をしたり洗濯をしたり、オシャレに着替えて友達と遊びに行くこともしばしばである。
そして毎日私に水をやることを日課にしている。
サボテンがどうしてやたら雉真匠についてよく知っているのかというと、よく言うサボテンの神秘的な力、ではなく、サボテンが雉真匠のことを好きだからである。時に「好き」という感情は驚異的な情報収集力を持つことがある。時にやりすぎることで犯罪めいてしまうこともあるが、そこはサボテンの身なので心配することはない。その点ではサボテンはサボテンであって良かったと思っているのだ。
ストーブをつけ、部屋着に着替えてテレビをつける。一連の流れを終えると雉真匠はサボテンのいる窓のカーテンを閉めた。
「さーぼーぼ、元気だったか?」
サボテンは雉真匠に「さぼぼ」と名前をもらっている。さぼぼ。女か男かよく分からない名前だが、雉真匠がつけてくれた名前に違いないのでサボテンは喜んで受け入れている。
目の前に雉真匠の顔があり、照れと嬉しさでついニヤついてしまう。サボテンなので口はないのだが。トゲが気持ちとろんと柔らかくなったように見える。
雉真匠の顔は控えめに言ってかっこいい。坂口健太郎と天沢聖司を足してふんわり混ぜてバニラエッセンスを垂らし、優しく焼き上げたようにかっこいい。
色黒という訳ではない。これはサボテンの思考が少し暴走してしまった表現なのだ。
とりあえず、かっこいいってことだけ伝わっていればいい。
「俺はさー、ちょっと仕事疲れちゃったよ。上司は働かないし、部下はチャラチャラしてるしさ…」
うんうん、とサボテンは耳を傾けている。耳はないんだけど。
「あっ!昨日買ってたプリンがあるんだった!」
雉真匠は嬉しそうに冷蔵庫の元へ行ってしまう。サボテンはちょっぴり寂しい。雉真匠はプリンも大好物なのだ。
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