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二話
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「お母様ぁ~!ティターニアが私のドレスを捨てたの!!」
嘘泣きだとすぐわかるような声で、リンナにしがみついた。
もちろん、捨てるはずがない。けど、リンナは私をまた怒った。
「ティターニア!!あんたは…!!!」
「ち、違うんです!私じゃなくて…っ……!」
アリーがやったんです、そう言う前に頬に鋭い痛みがはしった。
痛い、呆然としながら触ってみると少しだけ血がでていた。
「嘘はもうよしなさいね!?下品な…っ…」
大声でそう怒られ、二人去っていった。
その後もいたずらはエスカレートしていった。
とある日は、招待状を捨てられたと嘘をつかれたり、とある日は、殴られた、暴言をはかれたと嘘をつかれ。
全て、全て、私に罪をなすりつけられた。
「なんで、私だけ………」
いつものように、仕事が終わったら自分の汚い部屋に戻り泣きわめく日々。
辛いのに、どうして誰も助けてはくれないのだろうか。
「誰か……助けて……」
押し潰されそうな気持ちのまま、気分転換へと、夜の外へと足を踏み出した。
昼では見えなかった満月の美しい月が輝いている。
「いいなぁ……月は夜には輝ける。でも、私は夜でも朝でも輝けないよ……」
今にも涙が溢れ出てきそうだ。今日、打たれた頬へとそっと手を伸ばす。
「痛い……」
まだつーんとした痛みが頬に残る。
「光……?」
茂みらへんに、光っているモノが見えた。月の光で何かが反射しているのだろうか。
私は気になって、その光に近づいた。
けど、それは光じゃなくて、羽を持った小さな人だった。これは本で見たことがある。
妖精、というものだ。
妖精は自然界にとても近いモノだときく、それに、普通の人間には見えないものだと。
『う…っ……ぁう…』
痛そうにうめき声をあげているので、その妖精を持ち上げた。
「怪我してる…」
先程まで、見えなかった傷が近くで見るとすぐわかった。
私達人間は妖精と比べると、大きいからこんな傷、かすり傷だと思ってしまうが、妖精にとってはとても大きな傷だ。
きっと、この傷のせいで力が弱まり、私にも見えるのだろう。
「……でも、どうしよう。薬とか持ってないし………妖精の傷を治すにはどうしたら…」
人間と妖精は全く違う。だから、人間の薬を使っても治るという保証はないし、むしろ、悪化する可能性だってあった。
私は、ぼろく汚い自分の服の裾を破りとり、妖精の傷に巻きつけた。包帯代わりだ。
けど、すぐに布は真っ赤に染まっていってしまう。
これじゃあ、切がなかった。妖精は普通見えなく、見える時は稀だ。
だからこそ、妖精を助ける手立てなど、書物にも書かれてなかった。
「助けられなくて、ごめんね」
『ぃ…と……ご……』
先程までうめき声しかあげなかった妖精が口を開いた。
「え?なんて……」
『い……と…し……ご』
今にも消え入りそうな声で、私が見ているのすらも辛かった。
そして、妖精の言葉もなんて言っているのか聞き取れない。
『レン…っ…!何してるのよ!!』
ふと、後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこには妖精の女の子がいた。
小さく可愛らしい女の子だ。それに、羽の形や色が微妙に違った。
『なっ……人間…?あんたが、レンになにかしたのね!?』
「ち……違うの」
『これだから、人間は嫌いなのよ!私達妖精の事を考えようともしない。見つけたら、気味悪がるか、研究の材料にされるだけ』
私を見た途端に血相を変えて怒り狂った。否定しても、耳に入れようとしていない。
『ア…イ……違う…んだ……』
『レン…!ま、待ってなさい!すぐに、王を呼んでくるから!!』
どうやら、アイとレンと言うらしい。レンはかすれたような声で、アイに言った。
でも、先程よりなんだか話すのが楽そうだ。
『違う……この子が…やったんじゃない……それに、こ…の子は、ア、イ…の事が…見…えて、る……』
『え……?そ、そういえば、レンの事は見えてても、私の事は見えないはず………』
「ごめんなさい……私が…っ……私…っ……ごめんなさい……っ……」
また怒られると思った。また、殴られたり、暴言をはかれたり、するのかと思ってしまった。
こんな小さな妖精に殴られる訳がないだろうに、私はどうにもそう思ってしまう。
おかしくなってしまったのだろうか。怒られるのが怖かった。
だから、私はそれだけ言い残して、レンを地面にそっと起き、逃げた。
「ごめんなさい……」
嘘泣きだとすぐわかるような声で、リンナにしがみついた。
もちろん、捨てるはずがない。けど、リンナは私をまた怒った。
「ティターニア!!あんたは…!!!」
「ち、違うんです!私じゃなくて…っ……!」
アリーがやったんです、そう言う前に頬に鋭い痛みがはしった。
痛い、呆然としながら触ってみると少しだけ血がでていた。
「嘘はもうよしなさいね!?下品な…っ…」
大声でそう怒られ、二人去っていった。
その後もいたずらはエスカレートしていった。
とある日は、招待状を捨てられたと嘘をつかれたり、とある日は、殴られた、暴言をはかれたと嘘をつかれ。
全て、全て、私に罪をなすりつけられた。
「なんで、私だけ………」
いつものように、仕事が終わったら自分の汚い部屋に戻り泣きわめく日々。
辛いのに、どうして誰も助けてはくれないのだろうか。
「誰か……助けて……」
押し潰されそうな気持ちのまま、気分転換へと、夜の外へと足を踏み出した。
昼では見えなかった満月の美しい月が輝いている。
「いいなぁ……月は夜には輝ける。でも、私は夜でも朝でも輝けないよ……」
今にも涙が溢れ出てきそうだ。今日、打たれた頬へとそっと手を伸ばす。
「痛い……」
まだつーんとした痛みが頬に残る。
「光……?」
茂みらへんに、光っているモノが見えた。月の光で何かが反射しているのだろうか。
私は気になって、その光に近づいた。
けど、それは光じゃなくて、羽を持った小さな人だった。これは本で見たことがある。
妖精、というものだ。
妖精は自然界にとても近いモノだときく、それに、普通の人間には見えないものだと。
『う…っ……ぁう…』
痛そうにうめき声をあげているので、その妖精を持ち上げた。
「怪我してる…」
先程まで、見えなかった傷が近くで見るとすぐわかった。
私達人間は妖精と比べると、大きいからこんな傷、かすり傷だと思ってしまうが、妖精にとってはとても大きな傷だ。
きっと、この傷のせいで力が弱まり、私にも見えるのだろう。
「……でも、どうしよう。薬とか持ってないし………妖精の傷を治すにはどうしたら…」
人間と妖精は全く違う。だから、人間の薬を使っても治るという保証はないし、むしろ、悪化する可能性だってあった。
私は、ぼろく汚い自分の服の裾を破りとり、妖精の傷に巻きつけた。包帯代わりだ。
けど、すぐに布は真っ赤に染まっていってしまう。
これじゃあ、切がなかった。妖精は普通見えなく、見える時は稀だ。
だからこそ、妖精を助ける手立てなど、書物にも書かれてなかった。
「助けられなくて、ごめんね」
『ぃ…と……ご……』
先程までうめき声しかあげなかった妖精が口を開いた。
「え?なんて……」
『い……と…し……ご』
今にも消え入りそうな声で、私が見ているのすらも辛かった。
そして、妖精の言葉もなんて言っているのか聞き取れない。
『レン…っ…!何してるのよ!!』
ふと、後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこには妖精の女の子がいた。
小さく可愛らしい女の子だ。それに、羽の形や色が微妙に違った。
『なっ……人間…?あんたが、レンになにかしたのね!?』
「ち……違うの」
『これだから、人間は嫌いなのよ!私達妖精の事を考えようともしない。見つけたら、気味悪がるか、研究の材料にされるだけ』
私を見た途端に血相を変えて怒り狂った。否定しても、耳に入れようとしていない。
『ア…イ……違う…んだ……』
『レン…!ま、待ってなさい!すぐに、王を呼んでくるから!!』
どうやら、アイとレンと言うらしい。レンはかすれたような声で、アイに言った。
でも、先程よりなんだか話すのが楽そうだ。
『違う……この子が…やったんじゃない……それに、こ…の子は、ア、イ…の事が…見…えて、る……』
『え……?そ、そういえば、レンの事は見えてても、私の事は見えないはず………』
「ごめんなさい……私が…っ……私…っ……ごめんなさい……っ……」
また怒られると思った。また、殴られたり、暴言をはかれたり、するのかと思ってしまった。
こんな小さな妖精に殴られる訳がないだろうに、私はどうにもそう思ってしまう。
おかしくなってしまったのだろうか。怒られるのが怖かった。
だから、私はそれだけ言い残して、レンを地面にそっと起き、逃げた。
「ごめんなさい……」
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