妖精の愛し子は、妖精の王に求婚されます〜ついでに、復讐もさせていただきますね

さくらもち

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三十話

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「わぁ……っ……」

 心地よく吹かれる風、いろんな花の匂いに、それを発する美しい花達。
 外に出た途端、こんな場所があるなんて知りもしなかった。

「そんなにすごいねぇ」

「うん………」

 確かに綺麗だけど、なんだかここでこんなにゆっくり過ごしてはいけない気がした。
 胸がチクチクするような。

「僕も美しいと思いますよ。私達の神が作ってくれたのですから」

「神……」

 少し嫌な気がした。だって、神ということは納得できる。
 けど、だからといって神様が全てを作り出したわけなのではないのだから。

「こういうときは神と言っちゃいやだねぇ」

「え、あ、す、すみません」

 ウェイルはなんとなく察したのか、ルークに注意していた。
 ルークもわかったのか、すぐさま謝った。 

「…………」

「さっきから、どうしたのですか?何か気に食わない事でもーーー」

「…いない」

 その言葉が自然と口からこぼれ落ちる。

「何がですか?」

「なんだか、大事な人がいた気がするような………」

 美しい景色なはずなのに、心がぽっかり空いてしまったような気がした。
 むしろ、景色を見てる度に嫌になる。

「……!」

 ルークとウェイルは二人して顔を合わせながら、目を見開いていた。
 まるで、それを言われるのが恐れるように。

「気のせいじゃないですか?」

「そうだね……気のせいだと思うよ」

 にこっと微笑んで、全て忘れることにした。

 だって、ウェイルとルークのその表情がとても怖く恐ろしいものだったからーー

       *    *

「う~~ん」

 帰ったあと、ベッドに倒れ込み、頭を抱えこんだ。このもやもやはいつになったら消えるのだろうか。

「忘れると言っても、忘れられない。誰だっけ…誰が………」

 私を助けてくれたんだっけ

 けど、また真っ黒に塗りつぶされる。記憶がどんどん消えていってしまうような気がした。
 不安で、怖くて、仕方がない。

「……寝なきゃ。明日になったら、忘れてて」

 そして、その日はそのまま眠りについてしまった。
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