2 / 2
二話
しおりを挟む
「価値のないあんたなんていらないのよ!!」
「そうだぞ!せっかくお前の元婚約者がこの家に金を貢いでくれているのに……!!」
貢ぐやめぃ
婚約破棄した事と、代わりに妹が婚約した事を伝えると、私に激怒していた。
「まぁでも、安心したわ。リリが婚約者になってくれて。姉とは大違いよ。偉いわね、お礼になんでも買ってあげるわ!」
「ありがとう、お母様…!私もあれが姉なんて恥ずかしいわ……」
すんすんっとこちらを見ながら、涙を頬からしたらせていた。
母もまた妹、リリを優しく撫でる。
「あぁ!なんでも頼め!!宝石か?ドレスか?ったく、なんでお前の姉は出来損ないなんだか。やっぱりお前の浮気してできた子だろ?」
「まぁ…っ…!私だって、こんな子望んでできた子じゃないのよ!?」
ご本人ここにいるのでやめてほしい。
父はそれを聞くと舌打ちをしながら、不機嫌そうな顔でこちらに近づいてきた。
「っち………おい!聞いてるのか!!名無し!!」
名無し
私には名前がない。
本来なら、この国は五歳以上になったら、やっと親から名前が与えられる。
けど、リリとさほど年が離れていないので、リリを溺愛していた両親は私に名前なんてつけなかった。
代わりに、呼ぶときは必ずこう言う。
名無し
「お前なんて誰にも望まれてなく生まれてきたんだ…っ!!世話してるだけありがたく思え」
そう言われた時、私の中でもうめんどくさくなってしまった。
「……お前らは人間じゃない。腐ってる。何が出来損ない、だ。誰にも望まれないだ。誰にも望まれてないからって、出来損ないだからって生きていけないんか?駄目なの?」
「は…っ…親に口答えをするのか?とんだ馬鹿がいるな」
ぽつり、ぽつりとその言葉が、今までためていた言葉達が口から流れるようにすらすらと出てくる。
今までは言ってもきっとここまでだっただろう。
けど、もう無理だった。どうせ私はこの家から出ていくんだし、というのもあるだろう。
「私は本心言っただけよ?お前らは腐ってる、それだけが事実だ。その他には何もいらない。私がなんで今まで反抗しなかったかわかる?負け組に興味なんてねぇんだよ。私は、貧乏な人とか、持病を持った人とかに負け組なんて思わない。だって、お前らが本物の負け組だから」
「な……っ…!お前なんて一族の恥だっ!!!出てけ!!」
「それが?他人からの価値観に囚われてるお前らよりマシ」
収まりきらない怒りが漏れていく。
「バイバイ」
本当に出ていくのか、というような表情をしながら、元両親と元妹が私の背中を眺めていた。
人というものは誰でも自分に利益がある事しかしないだろう。
利用し、利用され、壊れていく。
けど、それは誰もがする当たり前のことであり、普通の事だ。
勝ち残ったものがこの世界の勝者。
もし、誰かが手を差し伸べてくれるのならば、人はかわれる。
人間、失格
もはや私は人間じゃなくなりました
(文豪、太宰治さん『人間失格』の本からの引用)
「そうだぞ!せっかくお前の元婚約者がこの家に金を貢いでくれているのに……!!」
貢ぐやめぃ
婚約破棄した事と、代わりに妹が婚約した事を伝えると、私に激怒していた。
「まぁでも、安心したわ。リリが婚約者になってくれて。姉とは大違いよ。偉いわね、お礼になんでも買ってあげるわ!」
「ありがとう、お母様…!私もあれが姉なんて恥ずかしいわ……」
すんすんっとこちらを見ながら、涙を頬からしたらせていた。
母もまた妹、リリを優しく撫でる。
「あぁ!なんでも頼め!!宝石か?ドレスか?ったく、なんでお前の姉は出来損ないなんだか。やっぱりお前の浮気してできた子だろ?」
「まぁ…っ…!私だって、こんな子望んでできた子じゃないのよ!?」
ご本人ここにいるのでやめてほしい。
父はそれを聞くと舌打ちをしながら、不機嫌そうな顔でこちらに近づいてきた。
「っち………おい!聞いてるのか!!名無し!!」
名無し
私には名前がない。
本来なら、この国は五歳以上になったら、やっと親から名前が与えられる。
けど、リリとさほど年が離れていないので、リリを溺愛していた両親は私に名前なんてつけなかった。
代わりに、呼ぶときは必ずこう言う。
名無し
「お前なんて誰にも望まれてなく生まれてきたんだ…っ!!世話してるだけありがたく思え」
そう言われた時、私の中でもうめんどくさくなってしまった。
「……お前らは人間じゃない。腐ってる。何が出来損ない、だ。誰にも望まれないだ。誰にも望まれてないからって、出来損ないだからって生きていけないんか?駄目なの?」
「は…っ…親に口答えをするのか?とんだ馬鹿がいるな」
ぽつり、ぽつりとその言葉が、今までためていた言葉達が口から流れるようにすらすらと出てくる。
今までは言ってもきっとここまでだっただろう。
けど、もう無理だった。どうせ私はこの家から出ていくんだし、というのもあるだろう。
「私は本心言っただけよ?お前らは腐ってる、それだけが事実だ。その他には何もいらない。私がなんで今まで反抗しなかったかわかる?負け組に興味なんてねぇんだよ。私は、貧乏な人とか、持病を持った人とかに負け組なんて思わない。だって、お前らが本物の負け組だから」
「な……っ…!お前なんて一族の恥だっ!!!出てけ!!」
「それが?他人からの価値観に囚われてるお前らよりマシ」
収まりきらない怒りが漏れていく。
「バイバイ」
本当に出ていくのか、というような表情をしながら、元両親と元妹が私の背中を眺めていた。
人というものは誰でも自分に利益がある事しかしないだろう。
利用し、利用され、壊れていく。
けど、それは誰もがする当たり前のことであり、普通の事だ。
勝ち残ったものがこの世界の勝者。
もし、誰かが手を差し伸べてくれるのならば、人はかわれる。
人間、失格
もはや私は人間じゃなくなりました
(文豪、太宰治さん『人間失格』の本からの引用)
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。
「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ
間瀬
恋愛
わたくしの愛おしい婚約者には、一つだけ欠点があるのです。
どうやら彼、『きみ』が大好きすぎるそうですの。
わたくしとのデートでも、そのことばかり話すのですわ。
美辞麗句を並べ立てて。
もしや、卵の黄身のことでして?
そう存じ上げておりましたけど……どうやら、違うようですわね。
わたくしの愛は、永遠に報われないのですわ。
それならば、いっそ――愛し合うお二人を結びつけて差し上げましょう。
そして、わたくしはどこかでひっそりと暮らそうかと存じますわ。
※この作品はフィクションです。
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる