ご都合主義の婚約破棄

さくらもち

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一話

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「此方としても苦しいが、婚約破棄させてもらう」

 __ご都合主義かっっっ!!!

 そんな言葉が口から飛び出そうになり、ぐっと抑えた。
 婚約者、ハーバルの胸元には妹が顔をうずくめながら、嘘泣きをしている姿が目にうつった。
 その他に、妹のとりまき男共が近くにいた。

「理由を聞かせてもらっても?」

 はぁ…と深いため息をつきながらも、とりあえず話を続けようとした。
 ハーバルはかっと表情が豹変し、怒りの感情をあらわにした。

「な……っ、あくまでも罪を認めないというのかっ!」

 __いやまず何もやってないんだが??

「申し訳ないが、ティアから全て聞いている。白状しろ、この悪女」

 私の目の前にいる男共が何か言ってるが、意味が全く理解ができない。
 頭にクエスチョンマークだけが浮かんだ。

「ど、どういうことですか?」

 全くもってわからない私が質問すると、妹のティアは、ハーバルの胸元にあった頭を少しだけ動かし、泣き顔が私に見えやすいようにしていた。

「お姉様……酷いです。私に、沢山…っ沢山の意地悪を何度も、何度も…してきたじゃないですか」

「いや?してませんが」

 普通に正直な返答が口から出る。意地悪、なんて妹にしたことがないし、むしろ意地悪するのは妹の方だ。

 両親からは妹の方が好かれている、だからよく服を買ってもらっていて、自慢されたり、私の服は破かれたり、罪をきせられたりなど、全くの濡れ衣である。

「いい加減、罪を認めたらどうだ?」

 __やってもないのにどうしろと??

 やってないのに罪を認めるなんておかしい。やってないのに。

「お前は実の妹に……っ…なんて酷いことをするんだ!!!最後まで罪を認めないなんて!!そんな汚らわしいお前とは今後一切関わらん!」

「婚約破棄、ですか?」

「もちろんそうだ!そもそも、俺はティアと運命で結ばれてるんだからな」

 自信満々に大きな声で恥ずかしげもなくいう元婚約者に呆れた。
 言葉はどうかと思うが、良しとしよう。こんなクソ婚約者と別れられて、私としては嬉しい。

 __でもなぁ、あいつ。多額の借金背負ってんのに大丈夫かな?

 ふと、そんな不安が頭によぎった。妹には借金がある。何億万円もの借金が。

 妹は外面が良いので、誤解されることも多いが、家事、育児、その他諸々はもちろんできないし、金ないくせに借金してまでブランド物を買うことが多い。

 妹は多分見てないだろうが、つい先日私が妹の借金を少し見てみた所、ゼロが沢山、沢山あり、数えたところ何億万円の単位だった。

「ま、私は関係ないもんね~」

 ふふっと口元が緩む。
 さて、これからどうしようか。親からは婚約破棄された傷物の私なんかいらないと絶縁されるだろう。

 あぁ、楽しみだなぁ

 るんるん気分で家へと帰っていった。
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