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第一章

五話

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「我ながら良いでき!!」

 掃除を最初にやっていたはずが、家具や生地類などの汚れも気になってしまい全部新しいものと交換した。
 なお、婚約者ではなく使用人になっていることは誰もツッコまないでほしい。

 こちらとしても自由になりたい、というだけだったので、使用人でもなんでもいい。

 けど、心配なのはルイスの方だ。掃除してる時も何も喋らず食わず飲まず。
流石にこっちだって心配にはなってしまう。

 私はとりあえずその点は無視し、新しい綺麗なたたまれた服をずいっとルイスの方へと向けて、こう言い放った。

「服、これに着替えてください」

 びくっと震えていたが、ルイスはそれよりも部屋の状態が気になったのか、きょろきょろと辺りを見回し始めた。

 やっと隅っこから出てきてルイスの顔や体がわかりやすいが、わかったことがある。

 美形やな

 磨けば光るタイプとはまさにこの事だ。

 多分、身長的にも同年代くらいだろう。体は細いし、腕なんてもはや枝と同類ほどまでになってるので、何か食べなきゃ死ぬ気がする。

「お前……新しい使用人か?」 

「喋った!」

 いや、しゃべるわな。

 ぼそっとかすれかすれな声でルイスはそう言ってきた。どこかぎこちなく、あまり喋ったことがないようだ。

 てか、使用人と間違えられてるっていう

「えーと、マリーです」

「マリー、か。じゃあ、出てけ」

「あ、はい!けど、ご飯は食べてくださいね!!」

 これ以上刺激するのも良くないと思い、ドアの側へと移動する。

「どうせ毒なんか入ってるんだろ、いらない」

「食べ物粗末は駄目です。毒があるか気になるんなら、毒味したっていいんですよ?」

「は?」

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