妹の婚約者は私の元婚約者

さくらもち

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第一章

四話

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「たっっっっか!!!」

 塔を登り始めて、もう何十分たったのだろうか。
 外から見たとき、高くて、ほんっとに巨人が何頭もいるくらい高く、頂上が見えないほどだった。

「大体の人が皆同じ事を言うな」

「そうですかいっ!!」

 階段を一段一段と踏み込み、荒くなった息が漏れ出る。
 なぜリシャは平気なのか不思議だ。

「君は、疲れないのか」

「疲れるとも!!!」

 思わず大声をあげると、ふっと後ろからでもわかる口元に笑みを浮かべながら、ぴたりと急に止まった。
 その反動に階段から落ちそうになったが、なんとかバランスを整える。

「それじゃあ、嬉しいお知らせだ。ついた」

「タイミングってもんを知らんのか」

「あぁ、知らないが?」

 殴りたいこの笑顔☆

 ふと、リシャが私の後ろへとまわるので不思議に思ったが、リシャの背中しか見えなかった私の正面には、ドアがあった。
 古びたドア、けども、頑丈すぎる鎖、鍵。

「あれ、リシャはいかない?」

「は…っ、あんな呪い持ちなんて同じ空気も吸いたくない。鍵だ」

 そう言い残してリシャは鍵だけ残し、私の目の前から去っていった。
 呪いの子は嫌われ者。

「よしっ…!とりあえず、挨拶してその後は自由でいいかな」

 厳重に鍵がかけられたドアの前で、意気込みを入れる。
 私は恐る恐る鍵口に鍵を差し込み、まわした。年期のはいったガチャッという音がすると、自ずと扉が開く。

 ドアの先には絶句するほど酷い状態が私の目に写った。

 壁は色が剥がれ落ちていて、床なんてぼろっぼろ。ところどころ植物が生えている。
 しかも、ベッドと質素な机、椅子しか家具がないなんてありえない。

 枕も薄汚れ、ぺったんこに潰れ、机もはしっこなんてぼろぼろに欠けていた。

 王族がこんなところにいるーー!??

 心の中で叫びながらも、部屋の中に入る。

 そして、ベッドの隅に人影があることに気がついた。きっと、王子ルイスだ。
 私はそこに近づき声をかけた。

「こんにちは~」

「っ!??」

 私が挨拶しただけで、顔を上げ、私の方を見た。酷く驚いていることに気がつく。

 それだけに関わらず、痩せ干せている枝のような体、ぼろぼろな年期がはいった服。
 きっと、まともにご飯なんて食べていない。

 こりゃあ、誰でも逃げるわ

 婚約者、というより、こっちが恐れられているんだから、使用人とほぼ同じだろう。
 まぁ、その使用人が全部放置しているんだし、恐れられてもしょうがないか。

 こちらとしても、結構好都合ではある。

「よっし!このマリーに任せなさい!!」

       *   *
「お…っまた、せ…し、ま……した」

 息を切らしながら、部屋へと入る。

 一旦、下に降りて調理室を勝手に使い、食べれそうなお粥を作ってきた。
 お盆にお粥と梅干し、沢庵、水などを乗せ持っていく。

 令嬢がご飯作ることなんてありえないが、たまに親から作れと命令されていたので、お茶の子さいさいだ。

 けど、塔が高く、できれば温かい時に食べてほしかったので、階段を走っていたら、体力が切れて死んだ。

「ほら、食べてください」

 料理がのったお盆をルイスの顔へと近づける。けれど、下を向いてるばかりで、食べてくれなさそうだ。

「あれ~お粥にしたけど、駄目だったかな?」

 さすがに無理に食べさせるわけいかないので、とりあえず机の上にお粥をおいた。
 そして、部屋を見渡す。 

「汚れすぎでは???」

 私の掃除スイッチが入った。


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