強くてニューサーガ

阿部正行

文字の大きさ
185 / 190
アニメ化記念SS

第七話 王女様のお茶会

 王宮内の王族が暮らす区画にある、王女用の私室でミレーナ達がお茶と共に雑談をしていた。
 座っているのはミレーナとキルレンで、侍女であるアルカとニノスは給仕だ。

「少し……落ち着いたわね」
 ミレーナの声はいつも通り、聞く者を惹きつける美声であったが、親しいキルレン達でないと解りにくいくらいに、その声には僅かながら疲れが滲んでいた

 レモナス王の急死から約半月、国葬から始まり国内や諸外国からの弔問客への対応に加え、権力の移譲とそれに関する手続き、当然行政も滞らせるわけにもいかず、まさに寝る間もないほどの忙しさであった。
 それでもミレーナの天才的な手腕や、キルレン達を始め多くの臣下の尽力もあり、まだまだやることは山積みで忙しさは続くが、何とか一段落ついたというところだ。

 こうして日課であった、お茶の時間も久しぶりに取れている。

「民の反応ですがほとんどがミレーナ様を支持しております。動揺や混乱も見受けられません」
「そう、地道な活動が役に立ったわね」
 アルカの報告に微笑みながらミレーナがニノスを見る。
 様々な仕込みで、人気取りを頑張ったニノスも、照れくさそうに笑みを浮かべた。

「……それでも即位はしばらく先ね。王女のままの方が若輩者として同情も油断も誘えるでしょう」
 戴冠式も効果的な時期を見計らうことをミレーナが告げると、三人が頷いた。

「そう言えばそろそろ着いた頃でしょうか」
 その後も雑談がいくつか続いたが、キルレンがふと思い出したように言うと、何を言っているかわかった、ニノスが顔をしかめる。

「相変わらず警戒しているな。何も出てこなかったのだろう?」
 その顔に気付いたキルレンが苦笑する。
 ニノスはカイル達があの場に偶然居合わせたと言うのは、余りにも出来すぎている気がして、何らかの形でカレナス王子に繋がっているのでは、という疑惑を持っていたのだ。

「はい、調べられる範囲では何も怪しい点はありませんでした……」
 渋々ながら認める。当然ながらカイルが未来から過去に戻ってきているなど想像の外なので、ニノスとしても偶然と言うのを認めるしかないのだ。

「ですが信用しすぎるのはどうかと思います。あの資金力や強さ……得体が知れないのは間違いありません」
 しかし納得をしていないのは ミレーナがカイルのことを気に入り、心を許しているように思えるので、その分警戒しているのだ。

「ニノスの言うことは解るわ。でもカランに派遣する人選に関しては贅沢を言ってる場合じゃない……それも解っているでしょう?」
「それは……」
 ミレーナの問いかけには、ニノスも頷かざるを得ない。

 カランに関しては帝国に譲歩する訳にはいかない。
 結婚で帝国の皇子を懐に入れるなど論外だし、何かしらで譲ればこちらが国王の急死で混乱していると思い、そこにつけ込んで再現なく要求してくる……それが帝国だ。
 毅然とした態度で、端的に言えば舐められる訳にはいかないのだ。

「ガルガン帝国は武を、力を尊ぶ国……我が国の新しい英雄をどう評価するか……」
「彼は帝国に対する抑止力になりますか?」
 キルレンの問いにミレーナが頷く。

「実力のほどは間違いありません。そして自分に何かを期待されているとも解っているようですし……ミランダの助けになるといいのだけど」
 カランに派遣している大使のミランダは、三年前まで教育係の一人だったので、その能力も人柄もよく知っている。

「あとミランダの報告では、帝国だけでなく他にもどうも不穏な……」
 そこまで言ったところで、扉がノックされる。
 嫌な予感を覚えながら、入室を許すと侍従の一人が慌てた様子で報告をする。
「申し上げます。ガルガン帝国の飛竜騎士団がカランに向かったとの連絡がありました。未確認ながら帝国の宮廷魔道士も搭乗しているとのことです」
 その報告にミレーナはため息をつきたくなったが、何とかそれを飲み込む。

「……こうも解りやすく武力で介入してくるとは」
 早速か、と苦々しい顔になるキルレン。アルカとニノスも同じようなものだ。
 これはカランに対する圧力に他ならないからだ。

「頼みましたよミランダ……そしてカイル様」
 窓の外、カランのある方向を見ながらミレーナがそう呟いた。





※ミレーナがカイルを使者として派遣したのは、帝国に対する抑止も含まれてます。
 もし生きていたらゼントスが派遣されていたでしょう。
 向こうは飛竜騎士団、こちらは英雄……やってることはほぼ一緒ですね。
 ただ、もっととんでもないことが起きてしまいましたので、この先どうなるでしょうか?
感想 35

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。