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アニメ化記念SS
第八話 名産品
「ねえゴウ君、これって何かしら?」
そう訊ねるリーゼの手にあるのは、ガラスで出来た小瓶で、中には色とりどりで半透明の結晶のようなものが入っている。
今はゴウの家の掃除を手伝っていて、その最中に見つけたものだ。
「台所で見つけたんだけど……これって食べ物なの?」
何らかの食べ物と思われるが、食材には詳しいリーゼでも見覚えが無い。
「ああ、それは鉱石飴です。鉱石の結晶みたいですけどカランの名物でして……姉が好きだったんですよ」
まだ残ってたんだ、とゴウが説明する。
「ほう、飴とな?」
「これが飴……? 食べたら何だか歯が欠けそうな形状だが」
当然と言うべきか、シルドニアが素早く反応するが、ウルザも口ではやや否定しつつも気になるようで興味深げに見ている。
「どうぞ、食べてください。父さんは甘い物苦手ですし、僕もあまり食べないので」
そう言われ、三人が手に取り口の中に入れる。
「ふむ、なかなかの甘露」
「……甘くて風味が良いな」
「うん、美味しい……糖飴に果汁やハーブエキスを混ぜて固めてるね」
三者三葉の感想を漏らすが、全員好意的だ。
「見た目も綺麗だから、お土産に買われていくって聞いたことありますね」
カランの名産品の一つですね、と語るゴウは少しだけ自慢気だ。
「ほう、では他にこの地でしか食べれないような、名物料理はあるか?」
わくわくした顔でシルドニアが訊ねると、ゴウは考え込む。
「そうですねチーズがよく食べられるんですけど……鍛冶炉スモークチーズってのがありますね。廃炉になった鍛冶炉を利用して木炭や山桜のチップでチーズを燻すんです。香りが強いんですが人気ですね」
父さんのとっておきです、と貯蔵庫から取り出したのは子供の頭くらいはありそうなチーズの塊で、表面は色が黄褐色になっており都市の紋章が焼印されているなど、上等な品だと解る。
「ふむ、確かに匂いは強いが……美味そうじゃ」
「そういやおふくろが言ってたな、ドワーフが作るチーズは酒のつまみに最適だって」
ここで明らかに暇を持て余してる様子のセランが口を挟む。
ガザスがいなかったことで当てが外れたが、リーゼが昼食を作ってくれるとのことなので、待っているのだ。
「これも良いのう……他には?」
期待した顔のシルドニアだが、ゴウはさすがに困った顔になる。
「あくまで鉱山都市ですから、食べ物に関してはあまり種類は無いものでして」
「何じゃつまらん……とは言えその土地にしかない食べ物と言うのはあるものだな」
感謝して食べねば、と何故か感慨深げに頷きながらシルドニア。
「そうだね……リマーゼにいたんじゃ解らなかったよ」
これだけでも旅に出た甲斐がある、とリーゼも感心した様に言う。
「まあ確かに旅の醍醐味でもあるな…」
旅慣れているウルザも同意するように頷くが、リーゼが何かに気付いたように聞く。
「そうだ、ウルザの故郷にも何か名物みたいなのある?」
「名物か……精々森の果実を地元の酒で煮詰めたジャムや、あとはハーブティーくらいだが……」
「へえ……いつかウルザの故郷にも行ってみたいね」
何気ないリーゼの言葉だが、ウルザは顔をしかめた。
「自分で言うのも何だが、エルフの森に行くのはお勧めできない。完全に閉じている訳ではないが、閉鎖的だ。歓迎されることはない……」
自分の故郷ながらそれが嫌で半ば強引に旅に出たウルザは、そこでため息をつく。
「……まあ機会があれば案内しよう」
ここで妙な空気になりかけたので、首を横に振りつつウルザが話は終わりとばかりにそう言った。
「えっと……じゃあお昼ご飯は、チーズを使ったのを作るね」
「あ、このスモークチーズも食べましょう」
「いいの? とっておきなんじゃ」
「構いませんよ……僕のじゃないし」
最後にぼそっと呟くように言うゴウ。
「おう、早く作ってくれ」
「なら掃除くらいは手伝いなさいよ……」
催促するセランにため息をつくリーゼ。
「では食事を楽しみに続けるぞ……お主はなかなかに呑み込みが良いからな」
「は、はい! ありがとうございます!」
ゴーレムに関してだけでなく、様々な古代魔法王国時代の技術や知識を指導してくれるシルドニアに、ゴウは興奮したように返事をする。
いくらでも資金を出すというパトロンが見つかり資金繰りに困らないで済むし、シルドニアという、自分よりはるかに膨大な知識を持った協力者が得られた。
この調子なら十年はかかるだろうと思っていたゴーレムの開発も、本当に一年で何とかなるかもしれない。
家の中だがスキップでもしたくなるぐらいに上機嫌になるが、この後家が半壊するような眼に会うとは、夢にも思わないゴウだった。
※その土地独自の味を楽しむのは旅の醍醐味ですよね。
ただゆっくりできる食事もこれで終わり、次話からはまた戦いですね。
そう訊ねるリーゼの手にあるのは、ガラスで出来た小瓶で、中には色とりどりで半透明の結晶のようなものが入っている。
今はゴウの家の掃除を手伝っていて、その最中に見つけたものだ。
「台所で見つけたんだけど……これって食べ物なの?」
何らかの食べ物と思われるが、食材には詳しいリーゼでも見覚えが無い。
「ああ、それは鉱石飴です。鉱石の結晶みたいですけどカランの名物でして……姉が好きだったんですよ」
まだ残ってたんだ、とゴウが説明する。
「ほう、飴とな?」
「これが飴……? 食べたら何だか歯が欠けそうな形状だが」
当然と言うべきか、シルドニアが素早く反応するが、ウルザも口ではやや否定しつつも気になるようで興味深げに見ている。
「どうぞ、食べてください。父さんは甘い物苦手ですし、僕もあまり食べないので」
そう言われ、三人が手に取り口の中に入れる。
「ふむ、なかなかの甘露」
「……甘くて風味が良いな」
「うん、美味しい……糖飴に果汁やハーブエキスを混ぜて固めてるね」
三者三葉の感想を漏らすが、全員好意的だ。
「見た目も綺麗だから、お土産に買われていくって聞いたことありますね」
カランの名産品の一つですね、と語るゴウは少しだけ自慢気だ。
「ほう、では他にこの地でしか食べれないような、名物料理はあるか?」
わくわくした顔でシルドニアが訊ねると、ゴウは考え込む。
「そうですねチーズがよく食べられるんですけど……鍛冶炉スモークチーズってのがありますね。廃炉になった鍛冶炉を利用して木炭や山桜のチップでチーズを燻すんです。香りが強いんですが人気ですね」
父さんのとっておきです、と貯蔵庫から取り出したのは子供の頭くらいはありそうなチーズの塊で、表面は色が黄褐色になっており都市の紋章が焼印されているなど、上等な品だと解る。
「ふむ、確かに匂いは強いが……美味そうじゃ」
「そういやおふくろが言ってたな、ドワーフが作るチーズは酒のつまみに最適だって」
ここで明らかに暇を持て余してる様子のセランが口を挟む。
ガザスがいなかったことで当てが外れたが、リーゼが昼食を作ってくれるとのことなので、待っているのだ。
「これも良いのう……他には?」
期待した顔のシルドニアだが、ゴウはさすがに困った顔になる。
「あくまで鉱山都市ですから、食べ物に関してはあまり種類は無いものでして」
「何じゃつまらん……とは言えその土地にしかない食べ物と言うのはあるものだな」
感謝して食べねば、と何故か感慨深げに頷きながらシルドニア。
「そうだね……リマーゼにいたんじゃ解らなかったよ」
これだけでも旅に出た甲斐がある、とリーゼも感心した様に言う。
「まあ確かに旅の醍醐味でもあるな…」
旅慣れているウルザも同意するように頷くが、リーゼが何かに気付いたように聞く。
「そうだ、ウルザの故郷にも何か名物みたいなのある?」
「名物か……精々森の果実を地元の酒で煮詰めたジャムや、あとはハーブティーくらいだが……」
「へえ……いつかウルザの故郷にも行ってみたいね」
何気ないリーゼの言葉だが、ウルザは顔をしかめた。
「自分で言うのも何だが、エルフの森に行くのはお勧めできない。完全に閉じている訳ではないが、閉鎖的だ。歓迎されることはない……」
自分の故郷ながらそれが嫌で半ば強引に旅に出たウルザは、そこでため息をつく。
「……まあ機会があれば案内しよう」
ここで妙な空気になりかけたので、首を横に振りつつウルザが話は終わりとばかりにそう言った。
「えっと……じゃあお昼ご飯は、チーズを使ったのを作るね」
「あ、このスモークチーズも食べましょう」
「いいの? とっておきなんじゃ」
「構いませんよ……僕のじゃないし」
最後にぼそっと呟くように言うゴウ。
「おう、早く作ってくれ」
「なら掃除くらいは手伝いなさいよ……」
催促するセランにため息をつくリーゼ。
「では食事を楽しみに続けるぞ……お主はなかなかに呑み込みが良いからな」
「は、はい! ありがとうございます!」
ゴーレムに関してだけでなく、様々な古代魔法王国時代の技術や知識を指導してくれるシルドニアに、ゴウは興奮したように返事をする。
いくらでも資金を出すというパトロンが見つかり資金繰りに困らないで済むし、シルドニアという、自分よりはるかに膨大な知識を持った協力者が得られた。
この調子なら十年はかかるだろうと思っていたゴーレムの開発も、本当に一年で何とかなるかもしれない。
家の中だがスキップでもしたくなるぐらいに上機嫌になるが、この後家が半壊するような眼に会うとは、夢にも思わないゴウだった。
※その土地独自の味を楽しむのは旅の醍醐味ですよね。
ただゆっくりできる食事もこれで終わり、次話からはまた戦いですね。
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