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アニメ化記念SS
第二話 サバイバルクッキング
ここはジルグス王国北部にあるサングルド山脈、その奥にある名も無き山。
本来人が足を踏み入れることなどめったにない場所だが、今はテントが張ってあり、その側で一人の少女が難しい顔をしていた。
「う~ん……」
腕を組んで悩み唸っているのはリーゼで、眼の前には様々な食材が並んでいる。
持ち込んだ調味料や保存食のチーズやパン、この山に来てから採った山菜やキノコ、そして昨日仕留めた熊肉等だ。
「今夜は何にしようかな……少しは変化つけたいところだけど……」
リーゼが悩んでいるのは献立内容だった。
調味料は多めに持ってきたし、思ったより採れる食材が豊富な山なのだが、それでも種類は限られているため、どうしても似通ったものになりがちだ。
代り映えの無い食事ではやる気にも影響が出るし、肉体労働をしている三人には、やはり美味しいものを作ってあげたいとリーゼは思っていた。
「もう一回食材調達行くとして……量もまだ余裕はあるけど、思ったより皆食べるのよね……念のため、熊をもう一頭くらい狩ってこようかな?」
「何故そうなる?」
背後から声がかかり、振り向くとそこにはウルザが立っている。
その姿は泥にまみれているが、それでもどこか気品を感じさせるのは流石エルフと言ったところだ。
「あ、ウルザ。どうしたの?」
「地下水が出てな。今ウンディーネに命じて処理している……その間小休止だ」
ふうと息を吐いて腰を下ろしたウルザに、リーゼが水を用意して渡す。
「お疲れ様、もう少し時間がかかりそうなんだね」
「ああ……思ったより岩盤が脆い。掘りやすくはあるが落盤しないよう注意しないと……あまり急ぎすぎても安全性がな」
難しい顔で考え込むその姿に、リーゼは感謝すると同時に、少しばかり申し訳ない気分にもなる。
そもそも彼女にはここまで真面目に取り組むどころか、穴掘りに付き合う必要が無いのだ。
リーゼやセランは納得して付き合っているが、ウルザがついてきた理由は、カイルが何故自分の真名を知っているか調べる為と、他言させないための契約の応用を行うためだ。
それなのに泥だらけになりながら、こんなにも真剣に取り組んでいるのは彼女の性格によるものだろう。
要するに良い人なのだ。
寝食を共にし、一緒に風呂にも入る様になってリーゼは、ウルザのことがだんだんと解ってきていた。
「……ありがとうね、ウルザ」
「何のことだ? 礼を言うなら私の方だ。リーゼには毎日世話になっているし……こんな風に気を使ってもらっている」
手にした水の入ったコップを見ながら、ウルザは微笑を浮かべる。
実際リーゼには食事の他にも、洗濯をしてもらったり傷んだ衣類を繕ってもらうなど、その仕事ぶり、気の配り様はウルザの眼から見ても見事としか言いようがなかった。
「大したことないよ。これぐらいは役に立たないと」
「……私が言うのも何だが、リーゼは良いお嫁さんになりそうだな」
少しばかりからかうように言うウルザに、リーゼがはにかんだ笑顔になる。
出会ってまだ数日だが互いに好感を持つことによって、二人の仲はどんどん良くなっている。
「ねえ、ウルザは何か好きな物……食べたい物はある?」
「普段作ってもらっている食事で、充分美味しいが……」
「ありがと。でも何か好きな物があったら言って。今は無理でも作りたいの……ウルザの為に」
「そういうことなら……強いて言いうなら……あ……」
何かを言おうとして、僅かに言い淀むウルザ。
「あ?」
「……甘いものが好き……かな」
少しだけ照れたように言うウルザに、リーゼも笑みが零れる。
「とはいえ流石にこんな山の中ではな……」
「でも確かに甘いものも欲しいのよね。疲れには糖分が一番だし……」
持ってきた保存食の中には、甘味もあるが量はあまりない。
なので調達するしかなかった。
「となるとハチミツが理想だけど、蜂の巣はなかなか見つからないから……やっぱり熊ね」
「だから何故そうなる?」
真顔になったウルザが思わず突っ込んだ。
「熊はハチミツが好物だから、その縄張り内に蜂の巣があることが多いの。だから熊を探すのは蜂蜜を探すのと一緒よ」
「言いたいことは解るが……」
納得はしかねるとばかりにウルザが首を捻る。
「蜂は刺してくるからちょっと怖いけど……気をつけていくから! 行ってきます!」
「いや普通は熊の方に注意を……基準が解らん」
気合を入れて食材調達に向かうリーゼの背中を見送り、頼もしいのだか呆れるのだかよく解らなくなるウルザだった。
この後見事蜂の巣を見つけ、更に果実もいくつか採って意気揚々と戻ってきたリーゼ。
その晩リーゼがデザートとして作ったのはチーズとハチミツ、果実とパンを使った簡易的なパイだったが、絶賛するウルザだった。
そしてこのパイは新たに仲間になる人物にも非常に好評だったのだが、それはまた別の話。
※穴掘りの最中の一幕です。
リーゼとウルザ、この二人の仲の良さが伝わってほしいですね。
本来人が足を踏み入れることなどめったにない場所だが、今はテントが張ってあり、その側で一人の少女が難しい顔をしていた。
「う~ん……」
腕を組んで悩み唸っているのはリーゼで、眼の前には様々な食材が並んでいる。
持ち込んだ調味料や保存食のチーズやパン、この山に来てから採った山菜やキノコ、そして昨日仕留めた熊肉等だ。
「今夜は何にしようかな……少しは変化つけたいところだけど……」
リーゼが悩んでいるのは献立内容だった。
調味料は多めに持ってきたし、思ったより採れる食材が豊富な山なのだが、それでも種類は限られているため、どうしても似通ったものになりがちだ。
代り映えの無い食事ではやる気にも影響が出るし、肉体労働をしている三人には、やはり美味しいものを作ってあげたいとリーゼは思っていた。
「もう一回食材調達行くとして……量もまだ余裕はあるけど、思ったより皆食べるのよね……念のため、熊をもう一頭くらい狩ってこようかな?」
「何故そうなる?」
背後から声がかかり、振り向くとそこにはウルザが立っている。
その姿は泥にまみれているが、それでもどこか気品を感じさせるのは流石エルフと言ったところだ。
「あ、ウルザ。どうしたの?」
「地下水が出てな。今ウンディーネに命じて処理している……その間小休止だ」
ふうと息を吐いて腰を下ろしたウルザに、リーゼが水を用意して渡す。
「お疲れ様、もう少し時間がかかりそうなんだね」
「ああ……思ったより岩盤が脆い。掘りやすくはあるが落盤しないよう注意しないと……あまり急ぎすぎても安全性がな」
難しい顔で考え込むその姿に、リーゼは感謝すると同時に、少しばかり申し訳ない気分にもなる。
そもそも彼女にはここまで真面目に取り組むどころか、穴掘りに付き合う必要が無いのだ。
リーゼやセランは納得して付き合っているが、ウルザがついてきた理由は、カイルが何故自分の真名を知っているか調べる為と、他言させないための契約の応用を行うためだ。
それなのに泥だらけになりながら、こんなにも真剣に取り組んでいるのは彼女の性格によるものだろう。
要するに良い人なのだ。
寝食を共にし、一緒に風呂にも入る様になってリーゼは、ウルザのことがだんだんと解ってきていた。
「……ありがとうね、ウルザ」
「何のことだ? 礼を言うなら私の方だ。リーゼには毎日世話になっているし……こんな風に気を使ってもらっている」
手にした水の入ったコップを見ながら、ウルザは微笑を浮かべる。
実際リーゼには食事の他にも、洗濯をしてもらったり傷んだ衣類を繕ってもらうなど、その仕事ぶり、気の配り様はウルザの眼から見ても見事としか言いようがなかった。
「大したことないよ。これぐらいは役に立たないと」
「……私が言うのも何だが、リーゼは良いお嫁さんになりそうだな」
少しばかりからかうように言うウルザに、リーゼがはにかんだ笑顔になる。
出会ってまだ数日だが互いに好感を持つことによって、二人の仲はどんどん良くなっている。
「ねえ、ウルザは何か好きな物……食べたい物はある?」
「普段作ってもらっている食事で、充分美味しいが……」
「ありがと。でも何か好きな物があったら言って。今は無理でも作りたいの……ウルザの為に」
「そういうことなら……強いて言いうなら……あ……」
何かを言おうとして、僅かに言い淀むウルザ。
「あ?」
「……甘いものが好き……かな」
少しだけ照れたように言うウルザに、リーゼも笑みが零れる。
「とはいえ流石にこんな山の中ではな……」
「でも確かに甘いものも欲しいのよね。疲れには糖分が一番だし……」
持ってきた保存食の中には、甘味もあるが量はあまりない。
なので調達するしかなかった。
「となるとハチミツが理想だけど、蜂の巣はなかなか見つからないから……やっぱり熊ね」
「だから何故そうなる?」
真顔になったウルザが思わず突っ込んだ。
「熊はハチミツが好物だから、その縄張り内に蜂の巣があることが多いの。だから熊を探すのは蜂蜜を探すのと一緒よ」
「言いたいことは解るが……」
納得はしかねるとばかりにウルザが首を捻る。
「蜂は刺してくるからちょっと怖いけど……気をつけていくから! 行ってきます!」
「いや普通は熊の方に注意を……基準が解らん」
気合を入れて食材調達に向かうリーゼの背中を見送り、頼もしいのだか呆れるのだかよく解らなくなるウルザだった。
この後見事蜂の巣を見つけ、更に果実もいくつか採って意気揚々と戻ってきたリーゼ。
その晩リーゼがデザートとして作ったのはチーズとハチミツ、果実とパンを使った簡易的なパイだったが、絶賛するウルザだった。
そしてこのパイは新たに仲間になる人物にも非常に好評だったのだが、それはまた別の話。
※穴掘りの最中の一幕です。
リーゼとウルザ、この二人の仲の良さが伝わってほしいですね。
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