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アニメ化記念SS
第三話 ある商人の呟き
ジルグス国の王都マラッドは、大陸全土の中でも有数の大都市で、その商業地域の中で高級な店が並ぶ区画にその店はある。
武具を扱う店だがジルグスだけでなく人族全体から見ても最高級の店で、利用できるのは成功した極一部の冒険者や、貴族などに限られるほどだ。
店主の名はフェスバと言い、初老の人間だがここ数日あることで頭を悩ませていた。
「まさか、売れたのか!?」
店内で驚きの声をだすのは、とある貴族だ。武具の収集家で、掘り出し物を探しに訪れる常連だ。
「ええ、長い間当店の看板ではありましたが、おかげ様で……」
これで何度目になるか、そんなことを考えながらフェスバは、営業スマイルで眼の前の驚愕している客に答える。
だが客の驚きも当然と言えば当然で、そこにあったのは店の中央で飾られていた、青いドラゴンレザーの鎧だ。
強大な幻獣であるドラゴンの革を使った希少な鎧で、防護の魔法を何重にも施された上に同じく幻獣であるフェニックスの羽まで編み込まれた逸品中の逸品だ。
これ以上の鎧は大陸中探しても早々ないだろうと言う品で、高価な品が多いこの店でも別格になり、看板商品として客引きの意味で目立つ場所に置いてあったのだが、あまりにも高額すぎて長年売れないでいた代物だ。
この貴族も当然ながら手が出せず、精々来るたびに目の保養にする程度だったのだが、それが売れたと解り声が出てしまったのだ。
「誰が……誰が買ったんだ?」
「申し訳ございません、他のお客様のことに関してはお答えできかねますので……」
深々と頭を下げるフェスバ。
「う、うむ……」
思わず問いただしたが、当然の答えなので幾分冷静になる。そして店内を見渡すと他にも気になる点がある。
鎧ほどではないが、高額だった精霊石なども売れており、何より魔石や魔法薬のほとんどが品切れであることにも気付く。
消耗品であるが故に在庫を切らさないようにしているこの店では普通はあり得ないことだ。
何かがあったのは間違いないが、店主が話すはずもないので、疑問は深まるだけだった。
訝しげな表情で帰っていく客を見送りながら、フェスバはため息をつく。
思い出すのは数日前にやってきた、まだ若い成人したばかりと思われる人間が三人にエルフ、そして子供の五人連れだ。
根こそぎという言葉相応しい勢いで商品を買っていたが、問題はその金額。
総額で一千万ガドル、城どころかちょっとした街さえ買える金額だ。
「予想していたことですが、やはり噂になっているようです」
店員がやや困惑した顔で報告し、フェスバも仕方ないことだと苦笑いになる。
当然店の者には客のことを他言しないように厳命していたが、買っていった姿を目撃している者もいるし、今の客のように何かに気付ていく者もいる。
そんな所からでも噂と言うものは広がっていくのだ。
ただ当人達は翌日には王都を発ったようだ。
騒ぎにならないようにと賢明な判断なのか、それとも疚しいことでもあるのか……その為素性は不明のままで余計に噂になっているのだが。
「宝石ですが、調べられる限りでは、盗難にあったものと一致する物はありませんでした」
「そうか……」
念のため犯罪に関わっていないかを調べさせていたのだが、それは杞憂だったようだ。
「ただザーレスの時代の物に間違いはないのですが、その中でもさらに希少で魔法王に関わる物ではないかと……」
「それ以上は良い。何らかの犯罪が関わっていないのが解れば十分だ」
必要以上に客の詮索はしないというのがフェスバのポリシーだ。これを守ってきたからこそ、現在の身代があると。
フェスバは五人の中でリーダーと思しき、仲間からはカイルと呼ばれていた青年を思い出す。
「……儲けにつながるのならばな」
その信条が実を結んだのか、カイルはこの店の常連となり大儲けにつながるのだが、それはまた別の話だった。
※現在のカイル達を見た周囲の反応です。当然ながら不審人物ですね。
ただ良くも悪くも少しずつ目立ち始めています。
はたして英雄になれるのでしょうか?
武具を扱う店だがジルグスだけでなく人族全体から見ても最高級の店で、利用できるのは成功した極一部の冒険者や、貴族などに限られるほどだ。
店主の名はフェスバと言い、初老の人間だがここ数日あることで頭を悩ませていた。
「まさか、売れたのか!?」
店内で驚きの声をだすのは、とある貴族だ。武具の収集家で、掘り出し物を探しに訪れる常連だ。
「ええ、長い間当店の看板ではありましたが、おかげ様で……」
これで何度目になるか、そんなことを考えながらフェスバは、営業スマイルで眼の前の驚愕している客に答える。
だが客の驚きも当然と言えば当然で、そこにあったのは店の中央で飾られていた、青いドラゴンレザーの鎧だ。
強大な幻獣であるドラゴンの革を使った希少な鎧で、防護の魔法を何重にも施された上に同じく幻獣であるフェニックスの羽まで編み込まれた逸品中の逸品だ。
これ以上の鎧は大陸中探しても早々ないだろうと言う品で、高価な品が多いこの店でも別格になり、看板商品として客引きの意味で目立つ場所に置いてあったのだが、あまりにも高額すぎて長年売れないでいた代物だ。
この貴族も当然ながら手が出せず、精々来るたびに目の保養にする程度だったのだが、それが売れたと解り声が出てしまったのだ。
「誰が……誰が買ったんだ?」
「申し訳ございません、他のお客様のことに関してはお答えできかねますので……」
深々と頭を下げるフェスバ。
「う、うむ……」
思わず問いただしたが、当然の答えなので幾分冷静になる。そして店内を見渡すと他にも気になる点がある。
鎧ほどではないが、高額だった精霊石なども売れており、何より魔石や魔法薬のほとんどが品切れであることにも気付く。
消耗品であるが故に在庫を切らさないようにしているこの店では普通はあり得ないことだ。
何かがあったのは間違いないが、店主が話すはずもないので、疑問は深まるだけだった。
訝しげな表情で帰っていく客を見送りながら、フェスバはため息をつく。
思い出すのは数日前にやってきた、まだ若い成人したばかりと思われる人間が三人にエルフ、そして子供の五人連れだ。
根こそぎという言葉相応しい勢いで商品を買っていたが、問題はその金額。
総額で一千万ガドル、城どころかちょっとした街さえ買える金額だ。
「予想していたことですが、やはり噂になっているようです」
店員がやや困惑した顔で報告し、フェスバも仕方ないことだと苦笑いになる。
当然店の者には客のことを他言しないように厳命していたが、買っていった姿を目撃している者もいるし、今の客のように何かに気付ていく者もいる。
そんな所からでも噂と言うものは広がっていくのだ。
ただ当人達は翌日には王都を発ったようだ。
騒ぎにならないようにと賢明な判断なのか、それとも疚しいことでもあるのか……その為素性は不明のままで余計に噂になっているのだが。
「宝石ですが、調べられる限りでは、盗難にあったものと一致する物はありませんでした」
「そうか……」
念のため犯罪に関わっていないかを調べさせていたのだが、それは杞憂だったようだ。
「ただザーレスの時代の物に間違いはないのですが、その中でもさらに希少で魔法王に関わる物ではないかと……」
「それ以上は良い。何らかの犯罪が関わっていないのが解れば十分だ」
必要以上に客の詮索はしないというのがフェスバのポリシーだ。これを守ってきたからこそ、現在の身代があると。
フェスバは五人の中でリーダーと思しき、仲間からはカイルと呼ばれていた青年を思い出す。
「……儲けにつながるのならばな」
その信条が実を結んだのか、カイルはこの店の常連となり大儲けにつながるのだが、それはまた別の話だった。
※現在のカイル達を見た周囲の反応です。当然ながら不審人物ですね。
ただ良くも悪くも少しずつ目立ち始めています。
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