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三章 メグリ
六十一話 財政難と古城
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宙で踊っていた時間はそう長くは無かったが、地面の衝撃と同時に左手に激痛が走った。
「おいメグリ…」
向こうの闇に呼びかける。部屋は真っ暗で、上に小さく四角形の光が見えるが手元を照らすほどではない。
「ツバキさんですか…?けほっ」
「クルトか?大丈夫か怪我は」
「ええ、下に藁があったようです」
ガサガサという音の後、地面にコンと靴が当たる音がした。
どうやらクルトの落ちた先には藁が敷いてあったらしいが、俺は運悪くそこから外れたらしい。
「藁?よかった、っ痛…」
「どこか怪我されたのですか!?」
コツコツと慌ただしく足音が響くが、俺の位置を掴めないクルトはつまづき、「わっ」と声を上げた。
「多分…左手が」
「大変! 手当てしないと…でも明かりが」
「魔法でできないのか?」
「何も見えない状況じゃ使えなくて…すみません」
「いやいいんだ、確かマッチがあったはず…」
そう言って近くに落ちたカバンを手に取る。手もとが見えないので探すのに手間取ったが、火をつけ、藁に灯した後木片に移した。
そこは壁が石レンガで作られた、部屋の半分が藁の箱で占められた狭い部屋だった。
「メグリと魔王はどこだ?」
「確かに…一緒に落ちたのならここにいるはずなのですが」
「だよな……ん?」
「どうしました?」
「いや、あの穴…分岐されてないか?」
「え?」
クルトが松明を上の穴に向けると、四角形の穴のすぐ下に闇が続いている。丁度逆Y字形になっているようだ。
「じゃあ落ちる途中で分かれたって事ですか…」
「うん…あっちも無事だったらいいが」
「あっ!それより怪我は…!」
痛む左手をクルトの前に持っていき、灯りで照らすと赤く腫れていた。
「骨折…ですね」
「そうだろうな」
「落とし穴を仕掛けた側の最低限の配慮にも外されるなんてこれはまた運の悪い…」
「今日はあんま動かない方がいいかもな」
「…あの、更に残念な事を伝えないといけないのですが」
「…何?」
「外側から見えない場所の治癒は難しいです…」
「そんな…」
すぐ治せるからと落ち着いていられたのだが、それが出来ないと聞かされ焦り始めた。
一見して出口は見当たらない。としたら穴を登るしかないのだが、この手、そして身体能力の低いクルト。どうすればいいのか。
「ど、どうしましょうか」
「誰かが来るまで待つしかないな」
「そういえばさっき「何も見えないと魔法が使えない」って言ってたがそれは全員そうなのか?」
「いえ、これは私の場合でして」
「人によって違ったりします。誰かしら1つはそういう制限があるのです」
「そうなのか…、じゃあメグリもそのせいで魔法が使えないとか?」
「わかりませんが、そんな常時発動出来ないような制限は事例もありませんし…それに時を戻す魔法はいつでも使えるのも不思議です」
「こう考えるとあいつの体質って謎…」
「ええ。魔法を訓練しても使えないっていうのは普通ではありえないのです。考えられるとしたら、人為的なものとしか…」
「他人から?そんなのできるのか?」
「いえ例えなので…わかりません」
クルトは骨折した左手に慣れた手つきで応急処置を施し、終わるとその場に座り込み、ふうっと息を吐いて上の穴に薄らと見える赤茶色の天井を見つめた。
「おいメグリ…」
向こうの闇に呼びかける。部屋は真っ暗で、上に小さく四角形の光が見えるが手元を照らすほどではない。
「ツバキさんですか…?けほっ」
「クルトか?大丈夫か怪我は」
「ええ、下に藁があったようです」
ガサガサという音の後、地面にコンと靴が当たる音がした。
どうやらクルトの落ちた先には藁が敷いてあったらしいが、俺は運悪くそこから外れたらしい。
「藁?よかった、っ痛…」
「どこか怪我されたのですか!?」
コツコツと慌ただしく足音が響くが、俺の位置を掴めないクルトはつまづき、「わっ」と声を上げた。
「多分…左手が」
「大変! 手当てしないと…でも明かりが」
「魔法でできないのか?」
「何も見えない状況じゃ使えなくて…すみません」
「いやいいんだ、確かマッチがあったはず…」
そう言って近くに落ちたカバンを手に取る。手もとが見えないので探すのに手間取ったが、火をつけ、藁に灯した後木片に移した。
そこは壁が石レンガで作られた、部屋の半分が藁の箱で占められた狭い部屋だった。
「メグリと魔王はどこだ?」
「確かに…一緒に落ちたのならここにいるはずなのですが」
「だよな……ん?」
「どうしました?」
「いや、あの穴…分岐されてないか?」
「え?」
クルトが松明を上の穴に向けると、四角形の穴のすぐ下に闇が続いている。丁度逆Y字形になっているようだ。
「じゃあ落ちる途中で分かれたって事ですか…」
「うん…あっちも無事だったらいいが」
「あっ!それより怪我は…!」
痛む左手をクルトの前に持っていき、灯りで照らすと赤く腫れていた。
「骨折…ですね」
「そうだろうな」
「落とし穴を仕掛けた側の最低限の配慮にも外されるなんてこれはまた運の悪い…」
「今日はあんま動かない方がいいかもな」
「…あの、更に残念な事を伝えないといけないのですが」
「…何?」
「外側から見えない場所の治癒は難しいです…」
「そんな…」
すぐ治せるからと落ち着いていられたのだが、それが出来ないと聞かされ焦り始めた。
一見して出口は見当たらない。としたら穴を登るしかないのだが、この手、そして身体能力の低いクルト。どうすればいいのか。
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「そういえばさっき「何も見えないと魔法が使えない」って言ってたがそれは全員そうなのか?」
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「そうなのか…、じゃあメグリもそのせいで魔法が使えないとか?」
「わかりませんが、そんな常時発動出来ないような制限は事例もありませんし…それに時を戻す魔法はいつでも使えるのも不思議です」
「こう考えるとあいつの体質って謎…」
「ええ。魔法を訓練しても使えないっていうのは普通ではありえないのです。考えられるとしたら、人為的なものとしか…」
「他人から?そんなのできるのか?」
「いえ例えなので…わかりません」
クルトは骨折した左手に慣れた手つきで応急処置を施し、終わるとその場に座り込み、ふうっと息を吐いて上の穴に薄らと見える赤茶色の天井を見つめた。
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