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三章 メグリ
七十五話 別世界と古城の男
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「同じ世界…あいつも転生してきたってことか」
こっちに来てから、他にも転生してきた人はいるのだろうとは思っていたがこういう形で見つかるとは思っていなかった。
「とりあえず、冒頭だけ読んでみて」
そう言って指された部分を見る。
『今から書くことは全て現実である。私の経験した事をあくまでも客観的に、記述する事にする。信じてもらえるとは思えないが…、同じ境遇の者への救いになれば何よりである。この世には別の世界があり、俺みたいな者がいるというのを知っていてほしい。別の世界と言うのは、君達の言う楽園、パラダイスの事だ。』
その前置きから始まる文は手書きで、所々に追記されている所があり、『楽園、パラダイスの事だ』の文も乱雑に矢印を引っ張られ書いてある。
「パラダイス…」
どこか聞き覚えのある単語だった。何かと思い出そうとしたが、かなり前の事なのか思い出せない。
「ええ。私達の伝説には『楽園』って言うのがあってね。そこは争いの無く、正に楽園の様な場所だと言われてるの。誰も見たことはないんだけど、信じてる人は多いわ」
「その楽園が俺らの世界だって言うのか?」
「その手記によれば、そうなるわね」
「そんなもんじゃないんだがな…」
その先の文には、日本の事やあっち世界の事についてが細々と記載されていた。ほぼ元の世界と一致しており、やはり楽園が俺らの世界であるのは間違いない様だ。
その後は、転生後の体験が綴られていた。
『12月の真っ只中、29歳だったか。妻と子、どちらも亡くした。出産中の事で俺は死に際にも立ち会えず、医師から妻が死んだと告げられた時はどこか他人事の様に聞こえていた。妻の最期の言葉はなんだったか、もう思い出せない。
その帰り、事実を受け止めきれない俺はふらふらと歩いていた。ふと気がつくと周りは木に囲まれ、ついさっきまで眩しくて鬱陶しかった街灯等はどこにも見当たらない。
どこかに入り込んでしまったかと思ったが、地元にこんな場所はない筈。元来た道を戻ると、少し開けた道に出た。日も落ちそうで薄暗くなり、急ぎ足でそれに沿って歩いていくと向こう側にぽつぽつとオレンジ色の灯りが見えた。
その側に煉瓦と木で出来た家があり、安心したがあまりに不自然で恐怖を覚えた。こんな場所は見たことがない。歩いていた時間も数十分程度のはずである。
かと言ってこのままでもいられず、扉を叩くと内側から老婆と10歳くらいの娘、その後にその子より年上に見える男子が出てきた。
「どうしました?」と老婆が聞いてきたので、ここはどこかと聞くとコドンだと言う。
コドンなんて聞いたことがない地名で、俺の街の地名を告げるとあちら側も首をひねった。地図を見せてもらうと全く見たこともないもので、俺は頭がおかしくなったのかと思った。
その様子を見た老婆が家に招いてくれ、ひとまずの休息を取ることができた。その最中色々と調べたが、どうも場所が分からない。
そして翌日、空の太陽を見上げて私は別世界へと来てしまったのだと知った』
こっちに来てから、他にも転生してきた人はいるのだろうとは思っていたがこういう形で見つかるとは思っていなかった。
「とりあえず、冒頭だけ読んでみて」
そう言って指された部分を見る。
『今から書くことは全て現実である。私の経験した事をあくまでも客観的に、記述する事にする。信じてもらえるとは思えないが…、同じ境遇の者への救いになれば何よりである。この世には別の世界があり、俺みたいな者がいるというのを知っていてほしい。別の世界と言うのは、君達の言う楽園、パラダイスの事だ。』
その前置きから始まる文は手書きで、所々に追記されている所があり、『楽園、パラダイスの事だ』の文も乱雑に矢印を引っ張られ書いてある。
「パラダイス…」
どこか聞き覚えのある単語だった。何かと思い出そうとしたが、かなり前の事なのか思い出せない。
「ええ。私達の伝説には『楽園』って言うのがあってね。そこは争いの無く、正に楽園の様な場所だと言われてるの。誰も見たことはないんだけど、信じてる人は多いわ」
「その楽園が俺らの世界だって言うのか?」
「その手記によれば、そうなるわね」
「そんなもんじゃないんだがな…」
その先の文には、日本の事やあっち世界の事についてが細々と記載されていた。ほぼ元の世界と一致しており、やはり楽園が俺らの世界であるのは間違いない様だ。
その後は、転生後の体験が綴られていた。
『12月の真っ只中、29歳だったか。妻と子、どちらも亡くした。出産中の事で俺は死に際にも立ち会えず、医師から妻が死んだと告げられた時はどこか他人事の様に聞こえていた。妻の最期の言葉はなんだったか、もう思い出せない。
その帰り、事実を受け止めきれない俺はふらふらと歩いていた。ふと気がつくと周りは木に囲まれ、ついさっきまで眩しくて鬱陶しかった街灯等はどこにも見当たらない。
どこかに入り込んでしまったかと思ったが、地元にこんな場所はない筈。元来た道を戻ると、少し開けた道に出た。日も落ちそうで薄暗くなり、急ぎ足でそれに沿って歩いていくと向こう側にぽつぽつとオレンジ色の灯りが見えた。
その側に煉瓦と木で出来た家があり、安心したがあまりに不自然で恐怖を覚えた。こんな場所は見たことがない。歩いていた時間も数十分程度のはずである。
かと言ってこのままでもいられず、扉を叩くと内側から老婆と10歳くらいの娘、その後にその子より年上に見える男子が出てきた。
「どうしました?」と老婆が聞いてきたので、ここはどこかと聞くとコドンだと言う。
コドンなんて聞いたことがない地名で、俺の街の地名を告げるとあちら側も首をひねった。地図を見せてもらうと全く見たこともないもので、俺は頭がおかしくなったのかと思った。
その様子を見た老婆が家に招いてくれ、ひとまずの休息を取ることができた。その最中色々と調べたが、どうも場所が分からない。
そして翌日、空の太陽を見上げて私は別世界へと来てしまったのだと知った』
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