異世界生活の送り方を間違えている気がする?

香奈恵

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四章 椿蓮

八十六話 城下町にて

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閉催式まであと45分程度。突然、門の扉が音を立てて開き、金属製の籠を中心にした兵士達がぞろぞろと出てきた。籠の周りは特に屈強そうな兵士が取り囲んでいる。

ツバキは慣れない表情筋を動かし、精一杯の笑みを作って道の脇で監視している軽装備の兵士に声を掛けた。

「すみません、この列は何ですか?」

「…」

兵士はこちらを向いたが、何も言わずにまた列を見つめた。
こっちが折角笑顔で接してやってるのにーーー。と、ツバキは兵士の態度に苛つく。軽く舌打ちし、もう一度笑顔で話しかけた。

「あれは王様の乗っている籠ですよね?」

「……ああ」

兵士はじっとこちらを見た後、うんざりした様にそう答えた。

「そうですか、お邪魔しました」

また笑みを作って礼をし、背を向けて歩き出した。少ししてすぐ横の路地に入り、籠の行く先であろう闘技場への道で待っていると、置くからゆっくりと団体が近付いてきた。

今は兵士が多い。ここで動くのはリスクが大きい上、逃げられやすい。隙がどこかにないだろうか。もしなければ発動直前にーーー。

闘技場の門を兵団はくぐり、籠は揺られながら闘技場に入ってすぐそばのレンガ造りの建物に入っていった。暫くして兵団がぞろぞろと出てきたが、数はさっきより少なく、そして籠がない。

「あの中に王がいるのか…?」

チャンスかもしれない。だが、個室となると失敗した時の逃げ道がない。残り30分近く、王はそれまで待機だろうか。

奥が騒がしくなった。
闘技場に人が集まってきた様子だ。席を確保しようと早い時間から集まってきている。

すぐに、建物の中から人が出てきた。1人の髭を蓄えた男の周りに、屈強そうな兵士が付いている。男は剣を左手で持ち、首の周りには大きな宝石の首飾りが付いている。

「…あいつが王か?」

左手に持っている剣の鞘は金色の装飾が施されている。あれが例の剣だろうか。

その集団は闘技場の小さな扉から内側に入っていった。席からは反対側の、ステージ裏にある扉だ。
ツバキは扉の横にある木箱の影に隠れ、通気口に取り付けられた鉄柵に耳を近づけた。

「…そろそろです。……様」

微かに声が聞こえる。この後ろに王がいるようだ。
開式までにどうにかして…あの男を殺し、剣を奪わなければ。
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