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四章 椿蓮
八十七話 王の剣
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10代目国王、ミストは汚れ布で覆った剣の取手を握りしめた。いよいよだーーー。
白の髭を蓄えた王の後ろで、兵士に紛れて俯いている。何しろ乱雑な作戦で村を襲わせた。気付く人がいてもおかしくない。
「そろそろです。9代様」
「ああ。ミスト、壇上に行くか」
「はい。お父さん」
18歳になる今日、僕に王の冠が継承される。それは国民に知らされてはいない。
まだ閉催式まで30分程あるが、その前に9代王のお父さんが国民を見ておきたいと言った為、ステージより更に上、演説台へ行くこととなった。
王がその景色を王として見るのは最後になる。我儘ではあるが、異議を唱えるものはいなかった。それに、愛していた国民だ。彼らの最期も見ていたい。
長いらせん階段を上がり、小さな部屋に入る。そしてその先に、城下町を見渡せる演説台がある。王とミストはゆっくりと風の通る部屋を抜け、演説台へと上がった。
お父さんは目を細めて下を見下ろし、歓声に耳を傾けていた。王が暫くそうしていたので、観客はざわめく。
「お父さんーーー」
「ああ。わかっている。先人の意思を継ぎ…お前が、楽園へーーー」
刹那、僕の目の前は真っ暗になった。それが目に何か、液体の様なものがかかったからだと分かるのには時間が必要だった。
「何が…」
突如下から破裂するような悲鳴が巻き起こり、歓声で溢れていた闘技場は一変した。
頭の上の方で金属の弾かれる音がし、それと同時に鈍い、何かが倒れる音がした。
目を拭って、見えたものには我が目を疑った。演説台は赤く染まり、その上に頭部が血にまみれたお父さんが倒れている。僕の手には血がついていた。
「お父さんっ!!」
お父さんのそばには剣が2本落ちていた。1つはお父さんの、そしてもう1つは…?
その剣をじっと見ようとした途端、剣が消えた。
「まさか…!」
慌てて下を見渡す。闘技場の門のそば、人のいない場所に一人の男が立ち、こちらを睨みーーー、そして、手には剣を持っていた。
まずい…! と思った時にはもう遅く、その男から放たれた剣はこちら側に一直線に飛び、僕の肩を深く裂いた。
急いで伏せ、部屋の中に逃げ込む。
動悸が早くなり、血で染まったお父さんを見る事が出来ない。
ただの反逆か…、それともこちらの狙いに気付いた誰かか…、とにかく、僕は…
「意思を…全うしないと…!」
今更引けない。奴が何者なのかは分からないが、阻止される前に術を発動させる。
白の髭を蓄えた王の後ろで、兵士に紛れて俯いている。何しろ乱雑な作戦で村を襲わせた。気付く人がいてもおかしくない。
「そろそろです。9代様」
「ああ。ミスト、壇上に行くか」
「はい。お父さん」
18歳になる今日、僕に王の冠が継承される。それは国民に知らされてはいない。
まだ閉催式まで30分程あるが、その前に9代王のお父さんが国民を見ておきたいと言った為、ステージより更に上、演説台へ行くこととなった。
王がその景色を王として見るのは最後になる。我儘ではあるが、異議を唱えるものはいなかった。それに、愛していた国民だ。彼らの最期も見ていたい。
長いらせん階段を上がり、小さな部屋に入る。そしてその先に、城下町を見渡せる演説台がある。王とミストはゆっくりと風の通る部屋を抜け、演説台へと上がった。
お父さんは目を細めて下を見下ろし、歓声に耳を傾けていた。王が暫くそうしていたので、観客はざわめく。
「お父さんーーー」
「ああ。わかっている。先人の意思を継ぎ…お前が、楽園へーーー」
刹那、僕の目の前は真っ暗になった。それが目に何か、液体の様なものがかかったからだと分かるのには時間が必要だった。
「何が…」
突如下から破裂するような悲鳴が巻き起こり、歓声で溢れていた闘技場は一変した。
頭の上の方で金属の弾かれる音がし、それと同時に鈍い、何かが倒れる音がした。
目を拭って、見えたものには我が目を疑った。演説台は赤く染まり、その上に頭部が血にまみれたお父さんが倒れている。僕の手には血がついていた。
「お父さんっ!!」
お父さんのそばには剣が2本落ちていた。1つはお父さんの、そしてもう1つは…?
その剣をじっと見ようとした途端、剣が消えた。
「まさか…!」
慌てて下を見渡す。闘技場の門のそば、人のいない場所に一人の男が立ち、こちらを睨みーーー、そして、手には剣を持っていた。
まずい…! と思った時にはもう遅く、その男から放たれた剣はこちら側に一直線に飛び、僕の肩を深く裂いた。
急いで伏せ、部屋の中に逃げ込む。
動悸が早くなり、血で染まったお父さんを見る事が出来ない。
ただの反逆か…、それともこちらの狙いに気付いた誰かか…、とにかく、僕は…
「意思を…全うしないと…!」
今更引けない。奴が何者なのかは分からないが、阻止される前に術を発動させる。
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