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四章 椿蓮
百十四話 特異型グロウリー
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「こういうのは慣れてないよ…」
ランプに照らされた範囲だけでも6人ほどの死体が見えた。どれも水路の脇にある通路にもたれかかっており、家族らしき3人は座っている男性のすぐ側に重なるように倒れていた。
デスクワークばかりなので死体に耐性がない。傷はなくとも、死んでいるという事実がユメを恐怖させる。
「どうしてこんな…」
家族らしき死体のうち、母親であろう死体に近づいてゆく。死因と、それが王国によるものか、グロウリーか、または自然現象によるものか調べるためだ。
ごめんなさい、と言いながら身体を動かし、外傷を細かく探す。軽い擦り傷は逃げる途中で着いたものだろうし、致命的なものではない。
最後に顔を確認する。ぐったりとした表情で、半開きの目からは光が失われていた。
そして口元に目を移した時、暗くてはっきりとはしないが、唇周辺が黒くなっているのが見えた。
「血が固まってるのかな…」
懐から布を取り出し、死体の口元に当てて開き、ランプで照らしつつ中を覗いてみる。
「うわぁっ…」
これはひどいな、と小さく呟く。
口の中はボロボロに荒れ、固まった血がこびり付き真っ黒になっていた。舌は見当たらず、よく見ると口内全体が削れているようだった。
見るに耐えられず、口を閉じさせた。
私には専門外みたいだ。軍を呼んで調査させよう。
と、立ち上がった所で父親らしき死体の手に瓶が握られているのが見えた。
よく見ると、そのそばにも6個瓶が並べられている。そのうち数個は蓋が被せてある。
「水でも汲んでたのかな…」
瓶に近づき、屈む。
手を伸ばし掴もうとした。そこで目の前の水路に流れている水が目に止まる。
「…ん? なんか」
ただ暗くてそう見えるだけだと思っていたのだが、ランプを近付けると水の異変に気がつく。
「黒い…。水が黒くなってる」
墨汁のように真っ黒な水に手を伸ばす。
「ッ!?」
触れた途端、指先が急激に冷えた感覚がし、そしてすぐに猛烈に火傷のような痛みが指先から脳天へ突き抜けた。
「──痛い痛い!! いっ…つ…ぐっっ…!」
収まることのない強い痛みに身体を仰け反らせ、声にならない悲鳴を上げる。噛み締めた奥から微かに呻き声がこだまする。
「…そうか、これ……っ痛っ…」
この水を飲んだから、この人達は亡くなったのか。
指先に触れただけなのにこの苦痛だ、更に触れた指先は溶け、血が流れるがすぐに固まる。飲めば一瞬で口内は溶け、喉も胃も、肺もグズグズに溶けるだろう。
「大変な事になったね…、いたっ…これが、グロウリーの仕業だとしたら」
右手首にきつく紐を巻き、毒が回るのを防いだ。そして歯を食いしばりながらハシゴへ向かう。
強力な酸と毒を持ったグロウリー。
少し前の地下水路のグロウリーと同様の性質。更に今回は最悪な事にここで発生した。周辺街の水路へと続く浄水施設のある、城下町で。
「早めに処理しないと水不足は確定じゃん…!」
ランプに照らされた範囲だけでも6人ほどの死体が見えた。どれも水路の脇にある通路にもたれかかっており、家族らしき3人は座っている男性のすぐ側に重なるように倒れていた。
デスクワークばかりなので死体に耐性がない。傷はなくとも、死んでいるという事実がユメを恐怖させる。
「どうしてこんな…」
家族らしき死体のうち、母親であろう死体に近づいてゆく。死因と、それが王国によるものか、グロウリーか、または自然現象によるものか調べるためだ。
ごめんなさい、と言いながら身体を動かし、外傷を細かく探す。軽い擦り傷は逃げる途中で着いたものだろうし、致命的なものではない。
最後に顔を確認する。ぐったりとした表情で、半開きの目からは光が失われていた。
そして口元に目を移した時、暗くてはっきりとはしないが、唇周辺が黒くなっているのが見えた。
「血が固まってるのかな…」
懐から布を取り出し、死体の口元に当てて開き、ランプで照らしつつ中を覗いてみる。
「うわぁっ…」
これはひどいな、と小さく呟く。
口の中はボロボロに荒れ、固まった血がこびり付き真っ黒になっていた。舌は見当たらず、よく見ると口内全体が削れているようだった。
見るに耐えられず、口を閉じさせた。
私には専門外みたいだ。軍を呼んで調査させよう。
と、立ち上がった所で父親らしき死体の手に瓶が握られているのが見えた。
よく見ると、そのそばにも6個瓶が並べられている。そのうち数個は蓋が被せてある。
「水でも汲んでたのかな…」
瓶に近づき、屈む。
手を伸ばし掴もうとした。そこで目の前の水路に流れている水が目に止まる。
「…ん? なんか」
ただ暗くてそう見えるだけだと思っていたのだが、ランプを近付けると水の異変に気がつく。
「黒い…。水が黒くなってる」
墨汁のように真っ黒な水に手を伸ばす。
「ッ!?」
触れた途端、指先が急激に冷えた感覚がし、そしてすぐに猛烈に火傷のような痛みが指先から脳天へ突き抜けた。
「──痛い痛い!! いっ…つ…ぐっっ…!」
収まることのない強い痛みに身体を仰け反らせ、声にならない悲鳴を上げる。噛み締めた奥から微かに呻き声がこだまする。
「…そうか、これ……っ痛っ…」
この水を飲んだから、この人達は亡くなったのか。
指先に触れただけなのにこの苦痛だ、更に触れた指先は溶け、血が流れるがすぐに固まる。飲めば一瞬で口内は溶け、喉も胃も、肺もグズグズに溶けるだろう。
「大変な事になったね…、いたっ…これが、グロウリーの仕業だとしたら」
右手首にきつく紐を巻き、毒が回るのを防いだ。そして歯を食いしばりながらハシゴへ向かう。
強力な酸と毒を持ったグロウリー。
少し前の地下水路のグロウリーと同様の性質。更に今回は最悪な事にここで発生した。周辺街の水路へと続く浄水施設のある、城下町で。
「早めに処理しないと水不足は確定じゃん…!」
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