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四章 椿蓮
百二十一話 継承
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クロメは城壁から降り、物陰をつたって徐々にグロウリーへ近づいてゆく。下から見上げると改めてその大きさが分かる。
夜ではあるが、私は夜目が効く。月の下に、鎧のように分厚い殻を纏った巨大な生物が樹木のような触手をうねらせている。
こいつの中枢部を完全破壊すれば殺せるはずなのだが、この巨体にある中枢は一撃でどうにかなるほど貧弱なものではないはずだ。
足元にある、グロウリーの触手に剣を突き立てると、『キン』と音がした。まるで金属に叩きつけたみたいだ。
次は大きく振りかぶって剣を突き立てると、軋むような音と共にズブズブと剣が刺さってゆく。ある程度刺さったかと言うところで、急に抵抗が薄くなった感覚がした。
「なるほどね」
硬い甲羅は並大抵の武器じゃ傷さえつかないだろう。しかしその甲羅さえ突破すれば、内側は柔らかい肉質になっている。
目の端に動く物があるのを捉え、後ろへ飛び避けた。
「おっと」
思った以上に下がってしまい、足元の瓦礫につまづく。力のコントロールが上手くできていないのか。
目の前をグロウリーの尖った触手が過ぎ、それは一直線に進んで隣の家屋を破壊した。
(イシマ聞こえる?)
影に隠れて、テレパシーを送る。
(はい、クロメ様)
(今までの攻撃法を止めて新しい攻撃方法に移行するわ。それはーーーーー)
クロメは考えついた方法をイシマに伝えた。
(了解致しました。それでは改めて班を分けます)
(ありがと。じゃあ始めるわ)
近くの瓦礫を一掴みし、振りかぶる。
遠くの家屋に瓦礫が当たって砕けると、グロウリーの触手が伸び、それと同時にクロメも飛び出した。
なるべく死角に入るように建物の影をすり抜ける。
突如、真っ黒な壁が現れた。グロウリーだ。
真っ黒な半透明の甲羅の奥に赤い線が蠢く。
地面からユリウスを振り上げーーーーー
「重っ…!!」
刺さった肉は思ったよりも厚く、そして硬かった。さっき刺した時とは全く違う程の硬さだ。
部位によって硬さがあるのかしら…?
「いえ…筋ね」
グロウリーの肉にも筋があるのだろう。よく見れば、今切った場所には縦に筋が入っている。
すぐに触手が伸びてきたので横へ避けつつ建物の陰に隠れた。
「だとすると、甲羅を剥ぐのだけでも大変ね」
ユリウスの剣を持ってしてもこの硬度。並の武器では枯れ枝のように折れてしまうだろう。
「力かーーーーー」
方法は有る。
リスクは大きいが、油断したら腹を貫かれそうなこの状況で分析なんてしてる暇はない。
クロメは目をぎゅっとつぶり、剣を持ち替えた。
「でも、痛いのはやっぱり嫌だな」
そして自分の左脇腹へ、深々と剣を突き立てた。
夜ではあるが、私は夜目が効く。月の下に、鎧のように分厚い殻を纏った巨大な生物が樹木のような触手をうねらせている。
こいつの中枢部を完全破壊すれば殺せるはずなのだが、この巨体にある中枢は一撃でどうにかなるほど貧弱なものではないはずだ。
足元にある、グロウリーの触手に剣を突き立てると、『キン』と音がした。まるで金属に叩きつけたみたいだ。
次は大きく振りかぶって剣を突き立てると、軋むような音と共にズブズブと剣が刺さってゆく。ある程度刺さったかと言うところで、急に抵抗が薄くなった感覚がした。
「なるほどね」
硬い甲羅は並大抵の武器じゃ傷さえつかないだろう。しかしその甲羅さえ突破すれば、内側は柔らかい肉質になっている。
目の端に動く物があるのを捉え、後ろへ飛び避けた。
「おっと」
思った以上に下がってしまい、足元の瓦礫につまづく。力のコントロールが上手くできていないのか。
目の前をグロウリーの尖った触手が過ぎ、それは一直線に進んで隣の家屋を破壊した。
(イシマ聞こえる?)
影に隠れて、テレパシーを送る。
(はい、クロメ様)
(今までの攻撃法を止めて新しい攻撃方法に移行するわ。それはーーーーー)
クロメは考えついた方法をイシマに伝えた。
(了解致しました。それでは改めて班を分けます)
(ありがと。じゃあ始めるわ)
近くの瓦礫を一掴みし、振りかぶる。
遠くの家屋に瓦礫が当たって砕けると、グロウリーの触手が伸び、それと同時にクロメも飛び出した。
なるべく死角に入るように建物の影をすり抜ける。
突如、真っ黒な壁が現れた。グロウリーだ。
真っ黒な半透明の甲羅の奥に赤い線が蠢く。
地面からユリウスを振り上げーーーーー
「重っ…!!」
刺さった肉は思ったよりも厚く、そして硬かった。さっき刺した時とは全く違う程の硬さだ。
部位によって硬さがあるのかしら…?
「いえ…筋ね」
グロウリーの肉にも筋があるのだろう。よく見れば、今切った場所には縦に筋が入っている。
すぐに触手が伸びてきたので横へ避けつつ建物の陰に隠れた。
「だとすると、甲羅を剥ぐのだけでも大変ね」
ユリウスの剣を持ってしてもこの硬度。並の武器では枯れ枝のように折れてしまうだろう。
「力かーーーーー」
方法は有る。
リスクは大きいが、油断したら腹を貫かれそうなこの状況で分析なんてしてる暇はない。
クロメは目をぎゅっとつぶり、剣を持ち替えた。
「でも、痛いのはやっぱり嫌だな」
そして自分の左脇腹へ、深々と剣を突き立てた。
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