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四章 椿蓮
百二十四話 継承者
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「ツバキ…? あんた」
そのコアはやっぱり、ツバキに似ていた。
背丈や肉付き、体の仕草や顔つきまで。酸化した血が剥がれ、灰色の肌の下に確かにツバキの顔が浮び上がってきた。
「かはっ…!」
下半身は肉に埋もれているが、片手で私の腕を掴み、もう片方で殴りかかってくる。
振りほどこうとしても、凄い力だ。
どうする…? 1回退いて回復してからまた攻撃するか…?
「いや…」
そんなんじゃだめだ。もう周りの肉は4割ほど回復し始めている。あと10秒もすればコアは埋まるだろう。
またここまで抉るのは困難だ。なら…。
今がチャンスなんだ。退くなんてそんなことはしない。勝つんだ。この戦いに、一刻も早く…!
私の命なんていい。今こいつを殺して全て終わらせるんだ。皆もうこれ以上犠牲を出さないように。
掴まれた手を切り落とす。剣を持ち替え、そのままコアの胸に剣を突き刺した。間髪入れず、拳を叩き込む。金属のような硬さの肌にヒビが入った。
「私は魔王なんだっ!」
私は、恵まれている。
最近、そう思うようになってきた。地位も金銭も容姿も。こんなことを言えば皆に軽蔑されるだろうと、口には出さないけど。
それはパパが死んで、魔王として正式に認められてから思い始めたんだったか。
その前は自信もなくて気の弱い私だったけど、皆がいたから、信頼してくれたから自信を持てるようになった。
きっと本当に私は、人に恵まれていたんだ。
コアの拳が私の腹を突き刺した。
「ぐっ…!」
その拳を掴み、引き抜いてまたコアに拳をぶつける。左手でユリウスをコアの喉元へ突き刺す。
コアはかすれ声を上げ、剣を両手で掴んだ。周りの肉はもうコアを包みそうになっている。
それを蹴って飛ばし、もう一撃コアへ撃ち込む。
赤い血がコアの皮膚から流れ出す。
「絶対に、殺してやる」
顔のヒビに指を突っ込み、そこへ歯でユリウスを咥えて突き刺した。顔のヒビから裂け初め、表面の肉が剥がれ始めた。
コアの動きが遅くなる。
かと思うと、急に足元から触手がクロメの脇腹に突き刺さった。そしてコアも両腕を伸ばし、クロメの両脚を掴む。
「しまった…!」
右手は切り落として使えない。両脚も動かせない。動かせるのは、左手だけ。
「くっそおおおおお!!」
左手にユリウスを出現させ、指先だけで更にヒビに差し込む。剣先は貫通し、触手は力を失った。
しかし、両脚を掴んだ手の力は収まらない。コアはクロメの体を宙へ放り投げた。
「まずい、だめだ…!」
下から突き上げてくる触手を剣でかわす。しかし全てを避けきれず、何本も体へ突き刺さった。
意識が薄れてゆくのが分かった。
痛みだけが意識を支配している。もう左腕は無いみたいだ。
周りから、微かに聞き覚えのある、皆の声が聞こえる。
軍の王として、何より優先するのが命だと信じている。前までの命を捨てて軍に尽くすという考えだった皆はその考えに最初は戸惑っていた。
だけど私と共に過ごすにつれ段々意思が伝わってきたみたいで、死者がゼロのまま凱旋する事も増えた。
どんな武器よりも命を優先して今の魔王軍はある。これは間違っているのかと何度も考えたけど、みんなの態度を見れば正解なんだと気が付く。
戦いさえ無ければ私の思う理想の場所がそこにあったんだろう。楽しかった。
だからその分、死者が出る度に喉の奥から岩が突き出てくるような罪悪感に襲われ、眠れない夜を過ごした数は計り知れない。
今だって、後悔でいっぱいだ。何がいけなかったのか、過去へ戻ってどうすればこの結果を免れたのか。そんな事ばかり頭をよぎってしまう。
「誰一人、死なない道はあったのかな」
空中の触手を蹴って、コアの元へ突っ込む。コアの顔面に、右手首の断面で殴りつける。
後ろへ仰け反ったコアの周りにある肉を、回し蹴りをして弾き飛ばす。
「全員!!」
左足は、関節から先が無くなっていた。声が掠れるのは肺の周りを刺されたからだろうか。
それでも声を上げる。私の最後の魔法だ。
壁上の上の皆は、私を凝視している。既に壁の下で応戦している者もこちらを見た。
「命を捧げなさいっ!!」
その掛け声と共に、防御魔法を全身にまとった壁上の兵士たちがコアへ飛び込んでゆく。
触手は兵士たちを吹き飛ばし、酸は鎧を溶かすが強力な防御魔法で身体は守られる。
徐々に削れる触手や肉はコアに迫り、見覚えのある1人が中枢部に切りかかった。
イシマは中枢部の肉を削いでゆく。それに更に兵士たちが切りかかり、内側からの鋭い触手に突き刺される者も何人もいた。
「クロメ様!」
イシマは上のコアの元へいるクロメに声をかける。しかしクロメは動かなかった。
赤い髪が揺れ、遂にそれは段々と後ろへ傾いていった───
そのコアはやっぱり、ツバキに似ていた。
背丈や肉付き、体の仕草や顔つきまで。酸化した血が剥がれ、灰色の肌の下に確かにツバキの顔が浮び上がってきた。
「かはっ…!」
下半身は肉に埋もれているが、片手で私の腕を掴み、もう片方で殴りかかってくる。
振りほどこうとしても、凄い力だ。
どうする…? 1回退いて回復してからまた攻撃するか…?
「いや…」
そんなんじゃだめだ。もう周りの肉は4割ほど回復し始めている。あと10秒もすればコアは埋まるだろう。
またここまで抉るのは困難だ。なら…。
今がチャンスなんだ。退くなんてそんなことはしない。勝つんだ。この戦いに、一刻も早く…!
私の命なんていい。今こいつを殺して全て終わらせるんだ。皆もうこれ以上犠牲を出さないように。
掴まれた手を切り落とす。剣を持ち替え、そのままコアの胸に剣を突き刺した。間髪入れず、拳を叩き込む。金属のような硬さの肌にヒビが入った。
「私は魔王なんだっ!」
私は、恵まれている。
最近、そう思うようになってきた。地位も金銭も容姿も。こんなことを言えば皆に軽蔑されるだろうと、口には出さないけど。
それはパパが死んで、魔王として正式に認められてから思い始めたんだったか。
その前は自信もなくて気の弱い私だったけど、皆がいたから、信頼してくれたから自信を持てるようになった。
きっと本当に私は、人に恵まれていたんだ。
コアの拳が私の腹を突き刺した。
「ぐっ…!」
その拳を掴み、引き抜いてまたコアに拳をぶつける。左手でユリウスをコアの喉元へ突き刺す。
コアはかすれ声を上げ、剣を両手で掴んだ。周りの肉はもうコアを包みそうになっている。
それを蹴って飛ばし、もう一撃コアへ撃ち込む。
赤い血がコアの皮膚から流れ出す。
「絶対に、殺してやる」
顔のヒビに指を突っ込み、そこへ歯でユリウスを咥えて突き刺した。顔のヒビから裂け初め、表面の肉が剥がれ始めた。
コアの動きが遅くなる。
かと思うと、急に足元から触手がクロメの脇腹に突き刺さった。そしてコアも両腕を伸ばし、クロメの両脚を掴む。
「しまった…!」
右手は切り落として使えない。両脚も動かせない。動かせるのは、左手だけ。
「くっそおおおおお!!」
左手にユリウスを出現させ、指先だけで更にヒビに差し込む。剣先は貫通し、触手は力を失った。
しかし、両脚を掴んだ手の力は収まらない。コアはクロメの体を宙へ放り投げた。
「まずい、だめだ…!」
下から突き上げてくる触手を剣でかわす。しかし全てを避けきれず、何本も体へ突き刺さった。
意識が薄れてゆくのが分かった。
痛みだけが意識を支配している。もう左腕は無いみたいだ。
周りから、微かに聞き覚えのある、皆の声が聞こえる。
軍の王として、何より優先するのが命だと信じている。前までの命を捨てて軍に尽くすという考えだった皆はその考えに最初は戸惑っていた。
だけど私と共に過ごすにつれ段々意思が伝わってきたみたいで、死者がゼロのまま凱旋する事も増えた。
どんな武器よりも命を優先して今の魔王軍はある。これは間違っているのかと何度も考えたけど、みんなの態度を見れば正解なんだと気が付く。
戦いさえ無ければ私の思う理想の場所がそこにあったんだろう。楽しかった。
だからその分、死者が出る度に喉の奥から岩が突き出てくるような罪悪感に襲われ、眠れない夜を過ごした数は計り知れない。
今だって、後悔でいっぱいだ。何がいけなかったのか、過去へ戻ってどうすればこの結果を免れたのか。そんな事ばかり頭をよぎってしまう。
「誰一人、死なない道はあったのかな」
空中の触手を蹴って、コアの元へ突っ込む。コアの顔面に、右手首の断面で殴りつける。
後ろへ仰け反ったコアの周りにある肉を、回し蹴りをして弾き飛ばす。
「全員!!」
左足は、関節から先が無くなっていた。声が掠れるのは肺の周りを刺されたからだろうか。
それでも声を上げる。私の最後の魔法だ。
壁上の上の皆は、私を凝視している。既に壁の下で応戦している者もこちらを見た。
「命を捧げなさいっ!!」
その掛け声と共に、防御魔法を全身にまとった壁上の兵士たちがコアへ飛び込んでゆく。
触手は兵士たちを吹き飛ばし、酸は鎧を溶かすが強力な防御魔法で身体は守られる。
徐々に削れる触手や肉はコアに迫り、見覚えのある1人が中枢部に切りかかった。
イシマは中枢部の肉を削いでゆく。それに更に兵士たちが切りかかり、内側からの鋭い触手に突き刺される者も何人もいた。
「クロメ様!」
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赤い髪が揺れ、遂にそれは段々と後ろへ傾いていった───
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