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四章 椿蓮
百二十三話 継承者
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グロウリーの表皮は早くも回復し始めていた。さっき喰らわせた炎の一撃は表面を抉ったが、深部には達していないようだった。
体は痛むが、休む暇はない。
「もう一撃っ!」
メグリは壁に背中を付けて、足を踏ん張った。そして手の先から今撃てる最大威力の火炎を──
『ダメだメグリさん!!』
「───え」
クロメさんの声が耳に響いた。が、その頃にはもう炎は手の先を離れ、目の前は真っ赤な炎が占領していた。
だから、気が付かなかった。いや気が付いていてもどうにも出来なかった。
「……っ!!!」
炎を割いてこちらに伸びた触手は、爛れた表皮をメグリの脇腹に突き刺し、そのまま空中へメグリを放り投げた。
「あっ!」
シアが下から叫ぶ。メグリは何が起こったのかも分からず、ただ下から突き上げてくる無数の触手とその先で見上げるクロメを見ていた。
「メグリさん!!」
何本もの触手に串刺しにされ、メグリさんの体は原型をとどめず遠くへ投げられた。
クロメは走ったが追いつかず、その光景を目を見開きながら見つめることしか出来なかった。
「嫌だ、メグリさん…メグリさん…! こんな、私のせいで…!」
地面に膝をつく。
メグリさんはどうなったんだ…?
私は、どうすれば…?
呆然と岩のように尖った触手を見上げる。その先は火傷のように焦げ、そこには血がこびり付いていた。
「クロメ様!」
クロメは横から伸びてくる触手に気づかず、そのまま吹っ飛ばされ壁に激突する。
間一髪受身をとり、立ち上がって触手を防いだ。
メグリさん…。
こんなことなら連れてこなければよかった。やっぱり返して置けばよかった。
『メグリさんなら大丈夫』なんて甘い考えがどこかにあったんだ。私が…!
「ごめん…なさい……っっ!!」
舌を思い切り噛みちぎり、地面に強く脚を踏み込んで触手を切り上げた。触手は宙を舞い、城壁の外へ飛んでゆく。
「あなたは戦うべきじゃなかった…」
瓦礫を足で舞い上がらせながら、視界を塞いで建物の影へ隠れた。そして首へ剣を突き刺し、脇腹へも突き刺した。
「もっと別の生き方を、私が導いてあげれば」
家屋を蹴り、崩壊した破片を更に砕いて大きな粉塵を舞い上がらせた。
クロメは剣を持ち替え、振りかぶると目の前、直線上にいるグロウリーへと投げつける。
剣は触手に穴を開け、勢いを保ったままグロウリーの口の中を貫通する。
「だからどうか、どうか…!」
グロウリーは触手をピンと張り、大きな叫び声のような音を上げた。
その隙にクロメはグロウリーに接近する。
そして目の前の肉塊へ剣を振る。剣は肉を深く裂き、甲羅を越して肉からは血が吹き出た。
クロメはその裂け目に手を伸ばし、甲羅と肉の境目に手を入れた。
そのまま甲羅を引き剥がす。1mほどの甲羅が剥がれ、肉が剥き出しになる。
クロメはまた腹に剣を突き刺し、抜いた剣をそのままグロウリーへ押し込む。
「生きていてメグリさん…!」
黒ずんだ赤い血が顔を濡らす。目を思わず閉じたとき、奥に硬い感触がした。
「コア…!?」
クロメは更にまわりの甲羅を剥がし、肉を割いては後ろへ放り投げ、まるで地面に穴を掘るように、グロウリーの肉を抉ってゆく。
そしてそれは徐々に形を表してゆく。
金属のように硬いそれは、肉の中に埋もれた彫刻のように段々と肉が削れるにつれ表面に出てきた。
「人…?」
真っ黒ではっきりとはしていないが、それは人の形をしていた。どこか見覚えのある───。
それはギシギシと音を立てながら、こちらに手を伸ばしてくる。
周りの肉はもう回復し始めていた。コアの周りは回復が早いと聞く。ならやっぱりこれが…!
そのコアは手を伸ばし、クロメの手首を掴んだ。強い力で握ってくる。
そこで気が付いた。この容姿、真っ黒だけどどこか───。
「ツバキ…?」
体は痛むが、休む暇はない。
「もう一撃っ!」
メグリは壁に背中を付けて、足を踏ん張った。そして手の先から今撃てる最大威力の火炎を──
『ダメだメグリさん!!』
「───え」
クロメさんの声が耳に響いた。が、その頃にはもう炎は手の先を離れ、目の前は真っ赤な炎が占領していた。
だから、気が付かなかった。いや気が付いていてもどうにも出来なかった。
「……っ!!!」
炎を割いてこちらに伸びた触手は、爛れた表皮をメグリの脇腹に突き刺し、そのまま空中へメグリを放り投げた。
「あっ!」
シアが下から叫ぶ。メグリは何が起こったのかも分からず、ただ下から突き上げてくる無数の触手とその先で見上げるクロメを見ていた。
「メグリさん!!」
何本もの触手に串刺しにされ、メグリさんの体は原型をとどめず遠くへ投げられた。
クロメは走ったが追いつかず、その光景を目を見開きながら見つめることしか出来なかった。
「嫌だ、メグリさん…メグリさん…! こんな、私のせいで…!」
地面に膝をつく。
メグリさんはどうなったんだ…?
私は、どうすれば…?
呆然と岩のように尖った触手を見上げる。その先は火傷のように焦げ、そこには血がこびり付いていた。
「クロメ様!」
クロメは横から伸びてくる触手に気づかず、そのまま吹っ飛ばされ壁に激突する。
間一髪受身をとり、立ち上がって触手を防いだ。
メグリさん…。
こんなことなら連れてこなければよかった。やっぱり返して置けばよかった。
『メグリさんなら大丈夫』なんて甘い考えがどこかにあったんだ。私が…!
「ごめん…なさい……っっ!!」
舌を思い切り噛みちぎり、地面に強く脚を踏み込んで触手を切り上げた。触手は宙を舞い、城壁の外へ飛んでゆく。
「あなたは戦うべきじゃなかった…」
瓦礫を足で舞い上がらせながら、視界を塞いで建物の影へ隠れた。そして首へ剣を突き刺し、脇腹へも突き刺した。
「もっと別の生き方を、私が導いてあげれば」
家屋を蹴り、崩壊した破片を更に砕いて大きな粉塵を舞い上がらせた。
クロメは剣を持ち替え、振りかぶると目の前、直線上にいるグロウリーへと投げつける。
剣は触手に穴を開け、勢いを保ったままグロウリーの口の中を貫通する。
「だからどうか、どうか…!」
グロウリーは触手をピンと張り、大きな叫び声のような音を上げた。
その隙にクロメはグロウリーに接近する。
そして目の前の肉塊へ剣を振る。剣は肉を深く裂き、甲羅を越して肉からは血が吹き出た。
クロメはその裂け目に手を伸ばし、甲羅と肉の境目に手を入れた。
そのまま甲羅を引き剥がす。1mほどの甲羅が剥がれ、肉が剥き出しになる。
クロメはまた腹に剣を突き刺し、抜いた剣をそのままグロウリーへ押し込む。
「生きていてメグリさん…!」
黒ずんだ赤い血が顔を濡らす。目を思わず閉じたとき、奥に硬い感触がした。
「コア…!?」
クロメは更にまわりの甲羅を剥がし、肉を割いては後ろへ放り投げ、まるで地面に穴を掘るように、グロウリーの肉を抉ってゆく。
そしてそれは徐々に形を表してゆく。
金属のように硬いそれは、肉の中に埋もれた彫刻のように段々と肉が削れるにつれ表面に出てきた。
「人…?」
真っ黒ではっきりとはしていないが、それは人の形をしていた。どこか見覚えのある───。
それはギシギシと音を立てながら、こちらに手を伸ばしてくる。
周りの肉はもう回復し始めていた。コアの周りは回復が早いと聞く。ならやっぱりこれが…!
そのコアは手を伸ばし、クロメの手首を掴んだ。強い力で握ってくる。
そこで気が付いた。この容姿、真っ黒だけどどこか───。
「ツバキ…?」
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