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四章 椿蓮
百三十四話 失われた者達
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クルトはメグリを背負ったまま、滑るように地面を移動してゆく。点々と続く灯りは魔王軍だろう。見覚えのある人もいる。
皆、口には出さないが敬意を込め、礼をする。
「お身体はどうですか?」
「なんともありません。この剣もありますし」
「ただ───」
精神的には、とても大丈夫とは言えなかった。大切な人を2人、失ったのだ。
「…いえ、ただお腹が空きました」
「そうですか。用意してありますよ」
クルトが微笑む。木々を通り過ぎ、地下通路へ降りる扉を開けて進む。
その間、無言だった。言葉を出そうと思うと、ついぽろっと弱音が出てしまいそうで。それを察してかクルトとリンも何も言わなかった。
同じような景色が続く。弱い風は心地よく、眠気を誘う。クルトの肩に頭を預け、目をつぶった。
「…クルトさん、ちょっと」
「はい?」
「あの…御不浄を」
「ふじょ…ああ。わかりました」
「おしっこのこと? ふじょうって」
リンがクルトの背から顔を覗かせる。
「その…」
「?」
「リンさん、待ちましょう」
クルトは少し進んで、止まった。横に通路があり、トイレとも言い難いが水の流れる小部屋がある。
「1人で大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
小部屋に入り、後ろ手にドアを閉める。
ふーっ、と息を吐いて、壁にもたれかかった。
「…ぅ…っ」
口に手の平を当て、しゃがみ込んだ。嗚咽を堪えようと必死に唇を結び、歯を食いしばったがどうしようもなかった。
皆、口には出さないが敬意を込め、礼をする。
「お身体はどうですか?」
「なんともありません。この剣もありますし」
「ただ───」
精神的には、とても大丈夫とは言えなかった。大切な人を2人、失ったのだ。
「…いえ、ただお腹が空きました」
「そうですか。用意してありますよ」
クルトが微笑む。木々を通り過ぎ、地下通路へ降りる扉を開けて進む。
その間、無言だった。言葉を出そうと思うと、ついぽろっと弱音が出てしまいそうで。それを察してかクルトとリンも何も言わなかった。
同じような景色が続く。弱い風は心地よく、眠気を誘う。クルトの肩に頭を預け、目をつぶった。
「…クルトさん、ちょっと」
「はい?」
「あの…御不浄を」
「ふじょ…ああ。わかりました」
「おしっこのこと? ふじょうって」
リンがクルトの背から顔を覗かせる。
「その…」
「?」
「リンさん、待ちましょう」
クルトは少し進んで、止まった。横に通路があり、トイレとも言い難いが水の流れる小部屋がある。
「1人で大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
小部屋に入り、後ろ手にドアを閉める。
ふーっ、と息を吐いて、壁にもたれかかった。
「…ぅ…っ」
口に手の平を当て、しゃがみ込んだ。嗚咽を堪えようと必死に唇を結び、歯を食いしばったがどうしようもなかった。
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